挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

1117/1174

(8)精霊の楽園?

 セイヤとシアの入学準備が整って落ち着いたということで、コレットが新拠点に来ていた。
 目的は、相変わらず順調に成長している、スライム管理の畑だ。
 余りにもすごいという話は聞いていたのだが、これまでは忙しくて来れなかったのだ。
 ようやく出来た時間なので、思う存分考助といちゃつくためにも、コレットは張り切っていた。
 ちなみに、コレットの思いは周囲にダダ漏れだったが、シルヴィアもフローリアも黙認している。
 ここ最近は、自分たちが考助を独占しているという気持ちがあったので、時間がある時くらいは存分にいちゃつけばいいという精神だ。
 自分たちが子育てをしているときも、同じような経験をしているので、ここぞとばかりに恩(?)を返しているのである。

 というわけで、考助の隣に並んで、一緒に屋敷から外へと出たコレットは、思わず玄関先で立ち止まった。
「・・・・・・コレット?」
 いきなり止まったコレットを見て、考助が首を傾げた。
「凄いわね。ここ」
「ああ、畑? やっぱりコレットもそう思う?」
 スライムが管理している畑は、玄関先からも見えるようになっている。

 自分の言葉がそれを指して言っているのだと勘違いした考助に、コレットは首を左右に振って否定した。
「違うわよ。畑じゃなくて・・・・・・ああ、いや、畑もそうなんだけれど、私はこの辺り一帯のことを言っているのよ」
 そう言ったコレットの言葉の意味が分からずに、考助の頭上には「?」が飛び交っていた。
 その顔を見て自分の言葉が伝わっていないと感じたのか、少しだけ苛立たし気な顔になったコレットは、あとから着いて来ていたシルヴィアを見た。
「シルヴィア、貴方もよ。こんなことになっているのに、気付かなかったの?」
「ええと・・・・・・どういうことでしょう?」
 いきなり自分を見てそう言ってきたコレットに、シルヴィアも考助と同じような顔になった。

 考助とシルヴィアが揃って首を傾げているのを見て、コレットはこの辺り全体を指すように両手を広げながら言った。
「だから! この辺り全体が、精霊の力で満ちているわよ! こんなに精霊がいるのは、世界樹の傍でもなければ見たことが無いわ! これだけ精霊がいれば、貴方の得意分野の神威だって相当なものじゃないの?」
 考助とシルヴィアは、コレットの台詞を聞いて、同時に顔を見合わせた。
「・・・・・・気付かなかったね」
「・・・・・・ええ、そうですね。というよりも、最初のときの神威が残っていると思い込んでいました」
 考助とシルヴィアの二人は、そう言いながら納得の表情になっていた。

 考助たちが住んでいる新拠点は、言うまでもなくアスラが準備して、エリスたちが場を整えた所である。
 そのため、当然のように、来たばかりの頃はエリスたちの神威が残っていた。
 考助とシルヴィアはそのことに気付いていたが、逆にそれが仇になっていた。
 何かといえば、今この辺りに残っている神威は、エリスたちのものではなく、考助自身の神威だったのである。
 きちんと感じ取れれば区別はつくのだが、最初の頃のことが頭にあって、コレットに言われるまで気付かなかったというわけだ。

 改めて周囲を見てみれば、確かにこの辺り周辺が考助の神威に満ちていることがよくわかる。
 なぜ言われるまで気付かなかったのかというほどだ。
「あ~、一応聞くけれど、世界樹周辺くらいの精霊の多さって、ほかで見たことはある?」
「あるわけないでしょ」
 即答してきたコレットに、考助は「そうですよね~」と答えた。
 考助とシルヴィアには、精霊を見ることができなかったことも、神威に気付けなかった要因の一つだ。
 いまコレットが目の当たりにしている光景を見ていれば、すぐに気付けただろう。

 精霊の姿が見えない考助は、辺りを見回しながらコレットに聞いた。
「じゃあ、この辺りの畑で収穫が多いのは、やっぱり精霊のお陰かな?」
「どうかしら? 勿論ないわけではないでしょうけれど・・・・・・それに、精霊の力だけでは、スライムのほうが量が多い説明にはならないわよ?」
「あ、それもそうか」
 この辺りに精霊が多くいて、そのお陰で収穫が増えているのであれば、考助が管理している畑とスライムが管理している畑の両方で、同じだけの収穫が出来るはずだ。
 だが、実際にはスライム管理の畑の方が多いので、精霊のお陰とは言い難い。

 精霊の多さが全体の収穫量の底上げをしている可能性はあるが、それだけではスライムの活躍は説明できない。
 その理由を探るべく、考助たちはスライムが管理している畑へと近付いて行った。
 スライムが管理している畑はいくつかあるが、その中でも一番近い畑が最初の目標だ。
 そして、その畑を目にするなり、コレットが呆れたような声を出した。
「あら、まあ。凄いなんてものではないわね、これ」
「えーと、それは、植物の成長ぶりが? それとも精霊?」
「両方よ」
 考助の問いに、コレットはすぐにそう断言してきた。

 コレットの目には、先ほどと変わらずに精霊たちが周囲で乱舞して(遊んで)いる光景が映っている。
 先ほどまでは空中にいる精霊たちの姿が見えていたが、畑に近付いた今では、土のあたりにも精霊が多くいるのが見えた。
 しかも、無理やりにその場に縛られているのではなく、心底楽しんでいるのがよくわかる。
 これこそエルフが目指している自然と共に歩む姿だと言われているような状態だった。

 ただ、この状態がエルフが目指しているものだと言われても、考助やシルヴィアには伝わらないだろう。
 そう考えたコレットは、簡潔にふたりに分かり易いように続けた。
「土は勿論、周辺の環境を含めて、何もかもが作物が育つのに最高の条件が整っているのよ。収穫量が上がらないはずがないわ」
 そう断言したコレットに、考助は感心したように頷いた。
「は~。コレットがそこまで言うのか。だったら、これをお手本にすれば、ほかでも同じように収穫できるということだね。・・・・・・お手本にできれば、だけれど」
「まあ、そういうことね」
 わざとらしくおどけた様子で最後の言葉を付け加えた考助に、コレットは苦笑を返した。

 確かに、理屈では今見ている畑とまったく同じ状態にすればいいと言うのは分かるのだが、問題はどうすればその状態に持っていけるか、ということだ。
 こればかりは、スライムに直接聞いても答えが返ってこないので、どうしようもない。
 せめて、一方通行のやり取りではなく、意思疎通ができればと思うのだが、相手がスライムだけにそれは難しい。
 スーラを相手にしていても、きっちりとした応答は難しいのだから、他のスライムではなおさらだ。
 結局のところ、詳しく話を聞ける相手はおらず、なんとか手探りで同じ状態に持って行かなくてはならないのである。

 
 それはともかくとして、コレットが目的にしていたスライム管理の畑を見るという目的は果たすことが出来た。
 結果としては、なかなか参考にするのが難しいという何とも言えないものだったが、それはそれで一つの答えだ。
 ついでに、この辺りで精霊があふれているのがなぜかという話題にもなったが、これはコレットが簡単に答えてきた。
 というのも、すでに考助たちは、同じような状態になるところを見ているのだ。
 それが何かといえば、考助がセントラル大陸を神域にするときに見たあの光景だ。
 あの時はセイヤとシアが気付いただけだったが、今回はコレットも気付けるほどだった。
 こうして、諸々の条件が整った結果、新拠点周辺では、いまの奇跡のような(?)状態になっているのである。
精霊大乱舞! ・・・・・・といったところでしょうかw
新拠点周辺の環境を他に用意するのは、非常に困難なため、同じような収穫量を望むのは中々難しいと思います。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ