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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(7)火を使う実験

 考助は、拠点を移ってから農業(もどき)を始めたのだが、更にもう一つ始めたことがある。
 それが何かといえば、ナナやワンリと一緒に行うモンスター狩りだ。
 最初はちょっとした運動、というかナナとワンリの散歩(?)のつもりで始めたのだが、これがなかなか面白いとわかって少しばかりはまってしまっている。
「行け! サラ!」
 その指示に従って、考助の指先から赤い光が伸びた。
 そしてその先には、体長二メートルを優に超えるブラックベアーがいた。
 赤い光は、そのままブラックベアーの胸に突き刺さり、そのすぐ後にちょっとした音を響かせて倒れる。
 それを見ていたナナとワンリが、ブラックベアーの元に駆け寄り、きちんと倒せたと言わんばかりにその場で尻尾を振っていた。

 それらの一連の流れを見ていた考助は、その場で腰に手を当てて宣言した。
「フハハハ! どうだ! 我が妖精の攻撃力は!」
 何ともノリノリの状態だが、残念ながらその光景を見ていたシルヴィアは、眉をひそめて隣に立っていたフローリアにこそこそと話し始めた。
「あ、あの・・・・・・コウスケ様がおかしい気がするのですが、大丈夫なのでしょうか?」
 シルヴィアが、新拠点での考助の狩りに付いてくるのは初めてのことなので、今の考助の状態に戸惑いまくっている。
 そして、シルヴィアに問われたフローリアは、苦笑しながら頷いた。
「あー、うむ。大丈夫だ。どうせ、今回も獲物の傍に近寄れば・・・・・・」
 元に戻る、とフローリアが言おうとした矢先に、それは起こった。

 ノリノリの状態のままで獲物の傍に近寄った考助が、その場でガクリと膝を着いたのだ。
「そ、素材が・・・・・・」
 いま考助が放った攻撃は、火の妖精を使ったものだ。
 お陰で一番高く売れる毛皮が、見事に焦げ付いていた。
 これでは、半値とは言わないまでも、もし売るとすればかなり減額されることだろう。

 獲物の状態を見て落ち込む考助を見て、シルヴィアが納得したように頷いた。
「なるほど。確かにいつものコウスケさんですね」
 先ほどの状態はシルヴィアも見たことがない考助だったので少しばかり引いていたが、落ち込む状態の姿は、まぎれもなくシルヴィアが良く知る考助だった。
 そんな状態で判断されることがどうかとは思わなくもないが、先ほどのノリノリの姿よりは、少なくともシルヴィアの目には、はるかにましに見える。
 これもまた、考助の普段の行いのお陰(せい?)なのだ。

 
 何とも微妙なシルヴィアの評価はともかく、フローリアは考助と同じように倒れているブラックベアーに近付いて行った。
「ふむ。確かにこれは、素材としては価値が落ちるな。もう少し火の威力を落とすしかないか?」
「いや、どうだろう? そもそもサラに火の威力を落とすようにというのが、通用しないからね」
 考助がこうして狩りに出るようになったのは、妖精としては不遇な位置にいるサラのためだった。
 というのも、サラは火の妖精であるがゆえに、下手に使えば周囲を巻き込んでしまうような被害を及ぼしかねないのである。
 そのため、普段の狩りではほとんど使われることが無かったのだが、せっかくなのでなにかいい方法が無いかと色々と実験を兼ねて、こうして試しているのだ。
 ただし、サラが火の妖精であるという事実は変えようがないため、なかなかうまくいかないというのが現状だった。

 倒れているブラックベアーの状態を見ながら、考助は首を傾げている。
「うーん。火の威力を出来るだけ上げれば、特定部位だけの被害で済むと思ったんだけれどなあ」
 考助の予想では、それこそ弾丸を打ち込んだように穴が開いた周辺だけが焦げ付くイメージだった。
 ところが、火の威力はそれだけではなく、体全体に及んでいた。
 その状態は、どう考えても考助のイメージと、実際の攻撃が合っていないことを意味している。
「火を纏わせているのだから、ほかに広がるのは当然だと思うのだがな?」
 フローリアとしては火が燃え広がるのは当然のことなので、考助が何をしようとしているのか、正確には理解できていない。
 だからこそ、目の前のブラックベアーの状態も、ある意味では当然の結果なのだ。
 ついでに、いつの間にか近寄ってきたシルヴィアも、フローリアの言葉に頷いていた。

 考えてみれば、考助自身も水の威力を上げて物を切断する道具は見たことがあっても、火を使って物を切ったりするところは見たことがない。
 もしかしたら以前の世界にはそう言う道具もあったのかもしれないが、残念ながら考助自身は見たことが無いのだ。
 それ以外に火を使うものとして思いつくのは、レーザー兵器くらいだが、そんなものを実物で見たことはない。
 あくまでも漫画などの想像の産物でしかないのだ。
 結果として、どうにも考助のイメージがはっきりと固まらないために、いまのような結果になってしまうのである。
 もっと正確にいえば、外面のイメージは出来ても、具体的に理屈が思い浮かばないので、上手くいかないのである。
 この辺りは、以前の世界の常識が邪魔をしている結果といえる。

 フローリアの言葉に曖昧に頷きながら、考助は腕を組んで悩んでいた。
 その考助の視界に、困ったような表情を浮かべたサラが映った。
「ああ、いや。別にサラが悪いわけじゃないから。きちんとしたイメージを伝えられない僕が悪いんだよね」
 ため息をつきながらサラにそう言った考助を見ながら、フローリアとシルヴィアが顔を見合わせて苦笑している。
「たった一撃でこれだけの攻撃をしておきながらこの台詞だからな」
「ええ。コウスケさんがやろうとしていることがきちんとできれば、どのような攻撃になるのでしょうか?」
 そう言った二人は、微妙に顔が引き攣っていたが、首をひねりながら悩んでいた考助は、それには気付いていなかった。

 しばらくその場に悩んでいた考助だったが、やがて諦めたように首を左右に振った。
「よし! 考えても分からないや! あとは実践あるのみ!」
 そう宣言をした考助を、フローリアが慌てて止めた。
「いや、待て。考助が本気でこの辺りのモンスターを狩り始めたら、間違いなく狼や狐が困ったことになるぞ?」
 ただの魔法の練習のために、当たりのモンスターを狩りつくされてしまえば、自然破壊どころではない。
 実際に困ったことになるのは目に見えているので、フローリアが慌てたのだ。

 その言葉を聞いて、考助がガクリと肩を落とした。
「いや、いくらなんでもそこまではしないよ。・・・・・・タブン」
 最後に付け加えられた言葉が不安を誘うが、一応フローリアはそれを信じて頷いた。
「そうか。それならいいが、あまり無茶はするなよ?」
「だから大丈夫だって」
 あくまでも念を押してくるフローリアに、考助は苦笑を返した。

 だが、そんな考助にシルヴィアは首を左右に振った。
「いえ、今のフローリアの言葉は、コウスケさんのことを心配して言ったのだと思いますよ?」
 そう指摘された考助は、一瞬キョトンとした表情になり、すぐに申し訳なさそうな顔になった。
「あ、いや、ゴメン。それからありがとう」
「いや、そこまでしてもらうようなことでもないのだがな?」
 自分に向かって頭を下げてきた考助に、フローリアは苦笑をしながらそう返すのであった。
今回は、ちょっとしたお遊びといったところでしょうか。
それにしても、レーザー兵器とか、実際にはどうなっているのでしょうね?
物理的にきちんとイメージしろといわれても、無理な気がします。
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