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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(4)あり得ない仮説?

 考助が新拠点のリビングのソファでうつらうつらしていると、フローリアがふと思い出したように、傍にいたワンリにとある質問を問いかけた。
「ワンリ。そういえば、この辺りのモンスターの支配権はどうなっているんだ? やはり狼と狐が増えて、なにかが変わったのか?」
「え? どういうこと?」
 フローリアのその問いに、人型になって休んでいたワンリが首を傾げた。
「いや、そのままの意味なのだが、モンスター同士で縄張りのようなものを争ったりはしないのか?」
「縄張り・・・・・・えーっと。どうなんだろう?」
 ワンリはそう言いながら、しばらく考え込むような表情になった。

 やがて顔を上げたワンリは、ゆっくりと話し出した。
「たぶん、ですが、余り変わっていないと思います。勿論、私たちが入った分、大型種とかとのいざこざは増えたとは思うけれど」
「そうなのか?」
 てっきり縄張り争いが盛大に繰り広げられていると考えていたフローリアは、目を丸くしてワンリを見た。
 そして、そのフローリアにワンリは小さく頷いた。

 普通、人が考えているモンスターというのは、常に餌場を求めて争いを起こしていると思われている。
 そして、その中で頂点に立つモンスターがいて、それを頭にピラミッドのようなものが形成されているというイメージだ。
 故に、それぞれの場所には主のような存在がいて、一定の範囲の均衡を保っているわけだ。
 ところが、ワンリの言葉はその考え方を否定する・・・・・・とまでは行かないまでも、肯定できるものではないことを示していた。
 勿論、モンスター同士の争いがまったくないわけではない。
 思った以上にモンスター同士の関係は、緩いものになっているというということだ。

 ワンリが頷くのを見たフローリアは、首を傾げながら腕を組んだ。
「てっきり頂点に立つような存在がいると思ったのだがな?」
「少なくとも私は、そんな存在は知りません。ナナも同じではないでしょうか? というか、そんな存在がいれば、ここに屋敷があることを許さないと思います」
「・・・・・・ああ。そういえばそうか」
 ごく当たり前に建てられていたことと、神が用意した結界に守られているためにすっかり忘れていたが、確かにワンリの言う通りだ。
 狼や狐がこの屋敷を中心に活動していることはすぐに分かることなので、それほどの存在がいれば、すぐに向かってくるだろう。
 ところが、そこまでの強者は、少なくとも屋敷周辺に現れたところを見たことが無い。
 屋敷ができてからすでに数カ月が経っているので、いつまでも放置しているという可能性は少ないだろう。
 そう考えれば、もともと周辺の主的なモンスターは、いないと考えるのが自然だ。

 
 ワンリの話で主的な存在がいないということはわかった。
 ただ、だとすれば、氾濫が起こったときのリーダー種は、普通のモンスターの在り様からすれば、かなりいびつな存在だと言える。
「だとしたら、なぜリーダー種なんて生まれてくるのだろうな?」
 リーダー種は、それこそ種族を関係なしにモンスターを束ねる存在となる。
 フローリアとしては、一帯を束ねている主が、時にリーダー種へと変貌するのではと考えていたのだ。

 そのフローリアの問いに、ワンリが困ったような顔になった。
 流石にそこまではワンリにも分からないのだ。
 そのワンリを助けるように、これまで黙っていた考助が口をはさんできた。
「リーダー種がなぜ生まれるかはともかく、生まれてくる過程はひとつ想像はできるけれどね」
 そんなことを言い出した考助に、フローリアは驚きの視線を向けた。
「なんだ。考助は知っていたのか? だったら教えてくれればいいのに」
 フローリアは、氾濫が起こる過程を調べたりしていた。
 それは、過去の女王としての役目でもあったので、その延長で今もライフワークのひとつとして続けているのだ。

 そのフローリアに、考助は首を振りながら答えた。
「いや、知っているわけじゃなくて・・・・・・それどころか、仮説にもなっていない、ただの想像でしかないよ?」
「なるほどな。いや、それでも構わないから言ってくれないか?」
 考助がこういった推測や類推に関して慎重な態度を取ることは、フローリアもよくわかっている。
 今言ったような言い方をするということは、考助が本当にただの想像だとしか考えていないということだ。
 それでもフローリアにとっては、聞く価値はある。
 なぜなら、それこそわざわざ考助がこう言い出すということは、いまワンリから聞いた話と矛盾していないといえるからだ。

 フローリアに視線を向けられた考助は、一度頷いてから話し始めた。
「そもそも、一帯の主がリーダー種になるのであれば、複数のリーダー種が出てくるのが説明できないんだよね」
「それは・・・・・・確かにそうかもな」
 ある範囲内に主がいて、その主が進化なりをしてリーダー種に変容すると、そのままそのリーダー種が一帯のモンスターを束ねることになる。
 すると、大氾濫で見られる複数のリーダー種が出てくる余地がなくなってしまうのだ。
 別の場所で発生したリーダー種同士が手を汲む可能性もなくはないが、それでも大氾濫時には必ずモンスターを束ねる存在が出ているので、可能性としては非常に低い。
 無いわけではないだろうが、それよりはもっとスッキリ説明できることを、考助は考えていた。

 それが何かといえば、
「まずは同じ種同士で、リーダーになるような存在が出てくる。それこそ、ナナとかワンリみたいな存在だよね。そうしたリーダー的な存在が、リーダー種として進化か変化するんじゃないかな」
 考助がそう言うと、フローリアは意味が分からないという表情で首を傾げた。
「いや、すまないが、それだと今まで話していたことと違いが無いように思えるのだが?」
 ナナやワンリのような存在は、それこそ一帯を束ねる主のような存在と言っていいだろう。

 ・・・・・・と、フローリアは考えたのだ。
 だが、それに対して考助は首を左右に振った。
「多分、フローリアはナナとワンリの強さに注目しているからそう思うのだと思うよ?」
 そう前置いてから、考助はさらに続けた。

 勿論ナナやワンリは、他のモンスターと比べて一線を画した強さを持っている。
 だが、問題になるのはそれだけではなく、自らの種族以外の種とも交流を持とうとしていることがある。
 一番典型的なのは、新拠点でもそうだが、狼と狐が同時に暮らしているというところだ。
 それは、彼らが考助の眷属だからという点もあるのだが、それ以外にも彼らを束ねているナナやワンリの存在が大きい。
 もし、ナナとワンリがいなければ、考助も一緒に暮らさせるということはしなかった。
 それを可能にしているのが、ナナやワンリで、リーダー種になるのは、そうした資質を持っていないと駄目だというわけだ。
 なぜなら、氾濫が起こったときは、まったく別の種族のモンスターが混ざっていることがほとんどだからである。

 考助の説明を聞いて、フローリアは難しい顔になって腕を組んだ。
「要するに、リーダー種となるモンスターは、最初から他種族と友好的になれる気質を持っているということか?」
 おおよそモンスターらしくない性質に、そんなことがあるのだろうかとフローリアは疑問に思った。
「まあ、友好的というのは少し大げさな気もするけれどね。それに、最初に言ったじゃない。あくまでも想像でしかないって」
「・・・・・・確かに、これを正式に表に出せば、正気を失ったとしか思われないな」
 他種族と決して交わらないからこそ、人とも争いを起こしてモンスターと呼ばれているのだ。
 いまの考助の話は、それを根底から覆すことになりかねない。

 なるほどコウスケが暇つぶしの話題として出すわけだ、とフローリアは胸中で大きくため息をつくのであった。
どちらかといえば、都市伝説に近いような考助の推測でしたw
実際にリーダー種が発生することが目で確認できない以上、裏付けをすることは不可能です。
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