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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(3)久しぶりの出現

 サキュバスの里で、スライム農地の実験を行うという話は、ピーチを通してすぐに決まった。
 新拠点で農地を広げる場合、周囲にいるモンスターのことを考えなければならないため、結界を広げなければならない。
 別に今の考助にとっては大した手間ではないが、そのための道具を作るのにいくつかの素材を使わなければならないのも確かだ。
 それよりは、ほかで済ませられるのであれば済ましてしまいたいというのが本音である。
 一方で、サキュバスにとっても考助の提案は渡りに船で、両者の思惑がピタリと一致したというわけだ。

 実験のためにサキュバスが用意した土地は、当然だが結界で守られた里のすぐ傍になる。
 とはいえ、結界の外になるため、モンスターによる被害はきちんと考慮しなければならない。
「昼間は良いとして、夜の間はスライムをどうするつもり?」
 用意された土地を見ていた考助が、ふと疑問に思ってピーチに聞いた。
「それは~、あちらに入っていてもらおうかと」
 ピーチはそう言いながら、里の方向を指さした。
 そこには一軒の小さな家が建っている。
 勿論、きちんと里の結界内に作られている建物だ。

 スライムが住むためには立派すぎる家を見て、考助は少しだけ驚いた顔になった。
「あれに? 随分と立派じゃない?」
「元は人が住めるように作った物ですからね~。もっと言えば、この辺りに畑を拡張して、その管理人として住まわせようかと考えていたそうです」
「ああ、なるほど」
 サキュバスは、もともと畑の拡張を考えていたので、家の用意もその一環なのだ。
 それがたまたま今回役に立ったというわけだ。

 スライムが住むには立派すぎる気もするが、だからといってわざわざグレードを下げる為に建て直す必要はない。
 用意したサキュバス側がいいと言うのであれば、考助が拒否するつもりはない。
「じゃあ、とりあえずこの家に呼び込んでしまおうか」
「はい~」
 ピーチが頷くのを見てから、考助は早速スライムたちを召喚で呼んだ。
 今回呼ぶスライムは、いきなり新規で呼ぶのではなく、新拠点の畑で働いていていたスライムの一部だ。
 いきなり新しいスライムを呼ぶと、また考助がスーラを通して一から教え込まなければならない。
 それに、新しい土地を用意したときに、スライムが考助の指示なしに、また同じ働きをしてくれるのかも見てみたい。

 考助が今回の実験のために新拠点から呼んだスライムは全部で二体。
 畑自体が大した広さではないので、それで十分だと考えてのことだ。
 召喚した場所が新しい住処であることを説明して、次に今度から管理する畑へと連れて行く。
 用意された家と新しい畑は大した距離はないので、スライムの足(?)でも移動時間はさほどかからない。

 一応スライムが自分の足(?)で移動してくるのを確認しながら、考助たちは畑へと向かった。
 畑に着いてから、範囲を教えると早速とばかりにスライムは、もぞもぞと動き出した。
 土の掘り起こしは、すでにサキュバスが行っているので、今回は考助が行うことはない。
 あと、種もスライムが蒔くところは見ていないので、とりあえずはサキュバスが行うように言ってある。
 そこまでスライムに任せるかは、今後の要課題といったところだ。

 スライムが土の中でもぞもぞしているのを考助が見ていると、ひとりのサキュバスが近寄ってきた。
「ほうほう。なかなか賢いもんだな」
 このサキュバスが、今後この畑を見ていくことになる。
 といっても、実際には手を出さないように話をしているので、どちらかといえば結界外にある畑を外敵(モンスター含む)から守ることを重点にしている。
「そうですね。夜になる前に戻るようには言ってあるので、このくらいの広さなら今日中には出来ていると思いますよ?」
「ほっ? そりゃまた、予想以上に早いな。種の用意をしておいた方がいいか?」
 目を丸くしながら聞いてきたサキュバスに、考助は頷いた。
「はい。そのほうが良いでしょうね」
「そうか。それじゃあ、早速行ってくる。すまないが、周囲を見ててくれ」
 そのサキュバスは、考助に気楽に頼みごとをした上で、返事も聞かずにその場を離れて行った。
 この気安さが、考助がこの里にいるのが心地いいと思う原因の一つとなっている。

 サキュバスを見送って笑っていた考助に対して、ピーチが渋い顔になっていた。
「あれ? ピーチ、どうしたの?」
「・・・・・・コウスケさんだと知っているのに、あの態度。・・・・・・掣肘が必要ですね」
「えっ!? あれ、ちょっと待って?」
 珍しく黒い笑みを浮かべているピーチに、考助が慌てた。
 今までも似たような態度をしてくるサキュバスはいたが、ピーチがこんな顔をしたことは無い。
 なにがピーチの逆鱗(?)に触れたのかがわからなかった。

 相変わらずの笑みを浮かべているピーチに、考助が恐る恐る聞いた。
「えーと、ほかのサキュバスと大した違いはないように思えるけれど?」
「そうなんですか。コウスケさんにはそう思えたのですね~。でも、私たちにとっては違うのですよ」
「あ、そうなんだ」
 サキュバスから見れば違うと言われれば、考助としてはこれ以上口出しはできない。
 なによりも、いまのピーチには、考助としてもできるだけ触れたくはなかった。

 
 久しぶりに目にした黒いピーチに恐れを抱きつつも、考助はスライムの様子を見ていた。
 そして、笑顔で種を手にしたサキュバスが戻ってきた際に、その笑顔が凍り付いたところをはっきりと見てしまった。
 何を見て、そのサキュバスがそうなったかは言うまでもない。
 そして、そのサキュバスは、肩と頭を落としながらピーチに連行されるように里の中心に向かって歩いて行った。
 その一連の流れを見ていた考助は、一緒に来ていたミツキと顔を見合わせたうえで、すぐに見なかったことにしてスライムの観察に戻るのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 サキュバスの里から管理層に戻った考助を見て、シルヴィアが一言。
「あら。コウスケさん、なにかあったのですか? 少し疲れたような顔をしているようですが?」
「ああ、うん。・・・・・・久しぶりに黒いピーチを見たから」
 ミクができてからほとんど見たことが無かった黒いピーチに、今の考助は少しだけ当てられていた。

 そして、考助の言葉を聞いたシルヴィアも、驚いた顔になっていた。
「それは珍しいですね。コウスケさん、なにをやったのですか?」
「いや、ちょっと待って。いきなり僕のせいにする!?」
「あら。違うのですか?」
 逆に驚いたように目を見開いてそう聞いてきたシルヴィアに、考助はガクリと肩を落とした。
「何となく、シルヴィアが僕のことをどう見ていたのか、わかった気がする」
 今更ながら今更過ぎる考助の自己評価に、シルヴィアが誤魔化すようについと横を見た。

 勿論、そんなことで誤魔化せるはずもなく、シルヴィアは考助からの視線に耐え切れずにわざとらしく話題を変えた。
「それで、ピーチはなぜそんな状態になったのでしょう?」
 あ、誤魔化したと考助は思ったが、ここでこれ以上つつくのも意地が悪いと考えて、先ほど起こったことをシルヴィアに話した。
 するとシルヴィアは、納得の表情で頷いた。
「そういうことでしたか。それでしたら、ここに戻って来る頃には、機嫌も直っているでしょうね」
「うん。そう思うよ」
 だからこそ考助は、さっさとサキュバスの里から退散してきたのだ。

 結局さほどの時間もかからずにピーチが戻ってきたが、考助とシルヴィアの予想通り、黒い部分は完全に消えているのであった。
黒いピーチでした。
でもその矛先は考助ではありません。

シルヴィアはあんなことを言っていましたが、そもそも黒いピーチが出現するのは、考助自身に対してではなく、今回のように考助のことをどうこうしたときに多い気がします。
コウヒ&ミツキと似たような感じでしょうか?w
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