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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(8)考助の許可

 その日、珍しくハクのいるところではなく、管理層に直接足を延ばしたルカが、シルヴィアを見つけて問いかけた。
「母様。父様は?」
「あら、ルカ。珍しいですね。コウスケさんでしたら新拠点にいますよ?」
「あら。やっぱりか」
 そう言って小さく肩を落としたルカに、シルヴィアはわずかに目を瞠った。
「本当にコウスケさんに用事だったのですか? ハクに会いに来たのではなく?」
 そのシルヴィアの質問で、普段のルカの行動がまるわかりだった。
 ルカは、実の母親のその言葉に、抗議するような視線を向けた。

 そんなルカに、シルヴィアではなく、ふたりの会話を傍で聞いていたフローリアが入ってきた。
「そんな顔をするな、ルカ。文句を言う前に、普段の自分の言動を顧みてみるといい」
 フローリアからきっぱりとそう言われたルカは、記憶をたどるように空を仰ぎ見て・・・・・・・・・・・・、
 そのまま視線を逸らすように、体ごと半身をずらした。
「まあ、母様が言いたいことは理解できたよ」
「そうか。それはよかった。それで? コウスケに用事があるのであれば、呼んでくるぞ?」
 現状、ルカは新拠点には行けない。
 そのため、今ルカが考助と話をするためには、シルヴィアかフローリアのどちらかが呼びにいかなければ行けないのだ。

 フローリアに聞かれたルカは、少し悩む様子を見せたあとに頷いた。
「うん。それじゃあ、お願いするよ」
「わかった。それじゃあ、私が・・・・・・」
 フローリアが自分が行くと言おうとした矢先、シルヴィアが首を左右に振った。
「いえ。私が行きます。畑の様子も見てみたいですし」
 シルヴィアは、新拠点の自分が管理している畑は頻繁に見ているが、考助が管理しているところはそこまで見ているわけではない。
 折角の機会なので、様子を見たいという気持ちがあった。

 考助とシルヴィアほど畑に興味が無いフローリアは、小さく首を傾げた。
「そうか? それならお願いしていいか?」
「勿論です。というか、お願いするのはルカですよ?」
 母親シルヴィアからそう釘を刺されたルカは、一瞬渋い顔になった。
「はい。そうでした。よろしくお願いします、母様」
 男というのは、いくつになっても母親には弱いのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 新拠点へ考助を呼びに行ったシルヴィアは、一時間もせずに戻ってきた。
 畑を見るといっても特別なことをやっているわけではないので(スライム以外)、見るべきところは少ないのだ。
「・・・・・・父様、その格好はなに?」
 いわゆるつなぎを着ている考助に、初めてその姿を見るルカが首を傾げながら聞いてきた。
「なにって、農作業服だけれど? ルカは見るのが初めてだっけ?」
「そうだけど・・・・・・そんな服があるんだ」
 なにか奇抜な物を見るような顔になっているルカに、考助が頷いた。
「ああ。慣れていないと奇妙に見えるかもしれないけれどね。慣れるといろいろと便利なんだよ」
 考助がそう言うと、横でシルヴィアが頷いていた。
 繋ぎを着て行う農作業の便利さは、自身も使っているため、シルヴィアもよくわかっているのだ。

 そんな両親に気のない視線を向けてきたルカに、考助が続けて言った。
「つなぎのことはともかく、用事って何? わざわざ呼び出してまで、話すことがあるんだろう?」
「ああ、うん。そのことなんだけれどね。昔、父様が作った荷物運びの板、僕が改良していい?」
 ルカにいきなりそんなことを言われた考助は、頭上にクエスチョンマークを複数浮かべた。
「荷物運びの板? ・・・・・・ああ、そんなものも作ったっけか」
 だいぶ前に、冒険者たちが行っている街中でも荷運びの仕事が楽になるように作った板があった。

 その板のことを思い出した考助は、ポンと両手を打ってから頷いた。
「それは別に構わないけれど、あれ、未だに正式名称決まってないんだ」
「いや、父様が気になるのは、そっち?」
 ルカとしては、製作者としての権利を主張されるのではと、身構えていたのだ。
 それが、それに関してはあっさりとスルーして、どうでもいいことを言ってきた考助に、ルカは脱力をした。

 そのルカを見て、考助は肩をすくめた。
「いや、だって。魔法陣を見たルカであれば分かると思うけれど、あれって誰でも改良ができるように作ってあるからね」
「あ、やっぱり」
 現物を見たルカは、考助が言った通りのことを感じていたので、納得の顔で頷いた。
 そもそも改良が駄目だと考えているのであれば、考助のことだから、もっと厳重に保護しているはずだ。
 それが、あっさりと魔法陣を見ることができたのだから、堂々と改良しろと言っているのに等しいのである。

 そうだろうなという顔で頷くルカに、考助が首を傾げた。
「ルカだったらわかっているだろうに、どうしてわざわざここまで確認しに来たの?」
「そ、それが・・・・・・」
 考助の疑問に、ルカが途端に歯切れが悪くなった。
「ん? なに?」
「・・・・・・・・・・・・いつもまでも子供だからって甘えてないで、きちんと筋は通して来いと言われて・・・・・・」
 何とかその場にいる全員に聞こえるくらいの声でそう言ったルカに、考助たちは一瞬間を置いて、声を上げて笑い始めた。

 誰がルカにそんなことを言ったのかは、すぐに見当がつく。
 恐らく、シュミットとダレスが、渋い顔になっているルカに口をそろえて言ったのだろう。
 そのときの光景が目に浮かぶようで、考助たちは笑ったのだ。
 確かに、考助が作った物を好きなように改良しているルカは、周囲にはそうみられてもおかしくないところがある。
 それを考えれば、ルカに言ったであろう忠告は、正しいものなのだ。
 そして、ルカもそれがわかっているからこそ、わざわざこうしてこの場に来たのだ。

 ひとしきり笑った考助は、頷きながらルカを見た。
「そういうことなら、まあ、許可はするよ」
「あ、ありがとう!」
 別に許可が下りないとは思っていなかったが、それでもルカは嬉しそうな顔になった。
「それから、どうせこれからもなにかを改良しようとするたびに言われるだろうから、管理層にいる誰かに伝えるだけでいいから」
 そのルカの顔を見た考助は、更にそう続けた。

 自分が作った物をルカが改良しようとするたびにわざわざ呼び出されるのは、お互いに時間が勿体ない。
 だからといって、対外的にもルカに来なくていいとは言えないので、一応建前として管理層には来るようにしたのだ。
 あとは、その場にいる誰かに伝えて、事後承諾という形にすればいいだけだ。
 ちなみに考助は、自分が作った物は、全て改良できるのであればすればいいと考えている。
 中には厳重に保護をしているのもあるが、それはきっちりと解除できるだけの腕があれば、改良も容易だろう。
 要は、作った魔道具の魔法陣を正確に読み取る力があれば、改良も好きにすればいいというスタンスなのだ。

 考助の言葉に、ルカはあからさまにホッとした顔になった。
 考助が作った魔道具は多岐にわたるため、それを改良しようとするたびに考助を呼び出してもらうのは、気が引けていたのだ。
 なんだかんだ言いながら、ルカも考助が忙しくしていることは、良く知っているのだ。
 もっとも、考助が忙しくしていることの原因の大部分は、自身の趣味に関わることなのだが。
 結局、このあともルカは、改良の許可を得るために何度も管理層に来ることになるのだが、その場で考助が捕まえられたのは、数えるほどしかないのであった。
何気にルカが通しで出てくるのは、久しぶりのような。。。(もしかして、初めて?)

それはともかく、今回改めて思ったのが、やっぱり考助の血を一番色濃く引いているのは、ルカのような気がしました。
(ちゃっかり彼女を作っているところも)
皆様はどう思いますか?
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