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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(4)ココロの春?

 管理層のくつろぎスペースにあるソファに寝転がっていた考助は、絨毯の上に座り込んでスーラをつついているココロを見ながら言った。
「ココロはそろそろイイ人は見つけたのかな?」
「ふあっ!?」
 唐突すぎるその言葉に、ココロは思いっきりスーラを突き刺しそうになった。
 危うくココロの指で串刺しになりそうになったスーラは、慌てて防御を固めていたりするが、それに気づいた者はいなかった。

 なんとかスーラを串刺しせずに済んだココロは、僅かに頬を赤くして考助を睨む。
「な、何なのですか、突然?」
「いや、特に意味はないけれどね。せっかくの機会だから聞いてみようかと」
 百合之神宮の運営で忙しくしているココロは、中々管理層でのんびりしていることが少ない。
 折角の機会なので、思いついたままのことを聞いてみようと思っただけだ。
 なにか深い意味があったわけではない。

 考助の表情から、ココロは本当に大した意味がある質問ではなかったのかと判断して、
「そうですか。でしたら特に答える必要はなさそうですね」
「あら。そう答えるのか。うーん・・・・・・。だって。どう思う、シルヴィア?」
「えっ!?」
 考助が、寝そべっていたソファから身を起こしてなぜか裏側を覗くと、ひょいとシルヴィアがその陰から立ち上がってきた。

 そんなところにシルヴィアがいるとは考えてもいなかったココロが、驚いた表情になった。
「お、お母様!? なぜそんなところに、隠れて?!」
「最初はココロを驚かせようとしていたのですが、まったく気付く様子が無かったので、コウスケさんに協力してもらって、少しだけ注意を引いてもらったのです」
 口に出すと怒られるが、考助とシルヴィアはいい加減いい年になっている。
 それにもかかわらずまったくそんな風に見えないのは、このようないたずら心が無くなっていないからではないかと、ココロは一瞬どうでもいいことを考えた。
 それに、そもそもこれだけ近くにいる人にまったく気付かせずに移動するなど、無駄な努力をしないでほしいと思っている。

 シルヴィアは、ガクリと肩を落としたココロをジッと見たあとで、忠告するように言った。
「それにしても、ココロ。いくら恥ずかしいからといって、お父様に隠し事はよくないと思いますよ」
「へー。やっぱり隠し事はあったんだ」
「そ、そんなことはありませんよ! いきなりなんですか!」
 シルヴィアの言葉に、ココロはそう返したが、誰がどう見ても嘘をついているのがまるわかりだった。
 その証拠に、親子の会話だからと離れた場所で様子を見ていたフローリアが、ウンウンと大きく頷いている。

 それぞれの様子を見て、逃げられないとすぐに悟ったココロだったが、フイと横を見てシルヴィアから視線を逸らした。
 考助はともかく、シルヴィアには嘘をつけないとわかっているのだ。
 だが、そんなことをしても母親シルヴィアから逃れられるはずもなく。
「早めに白状してしまったほうが、楽になると思いますよ?」
「・・・・・・ウグゥ」
 その駄目押しに、ココロは何とも言えないうめき声を上げた。

 それを見ていた考助は、何ということはないという感じで、パタパタと右手を振った。
「ああ、いいのいいの。別に無理して聞こうと思ったわけじゃないし。変につついて、上手くいかなくなったら困るからね」
「だ、だからそんなんじゃありません! ・・・・・・あっ」
 思わず反応してしまったココロは、しまったという感じで、両手で口を押えた。
 こういうときは、何もしないで嵐(?)を過ぎ去るのを待った方がいいとわかっているのだが、ついつい答えてしまう。

 案の定、シルヴィアがココロの今の反応を見て、更に付け加えて来た。
「そうですか。どうやら思い人の一歩手前くらいの人は現れたようですね」
 無駄なところで無駄に能力を発揮しなくてもいいのにとココロは思ったが、そんなことでシルヴィアを止められるはずもない。
「おー。そうなんだ。それはよかった」
 まったく疑う様子もない考助を見て、ココロは再びガクリと肩を落とすのであった。

 
 こうなってしまっては、下手に隠した方が先ほど考助が言った通り、変につつかれてしまうと考えたココロは、開き直ることにした。
「ですから、そんなんではありません。ただ単に、修行の旅に出て帰ってきた方がいて、以前と違っていたので驚いているだけです」
「あら。そんな方がいたのですか?」
「そうですよ。というか、お母様もご存じの方です」
「私が・・・・・・? ということは、もしかしなくてもリンですか」
 僅かに驚いた表情を浮かべたシルヴィアに、ココロがそうですと頷いた。

 リリカとの恋に破れた失意のリンは、シルヴィアに促されて、世界中を回ってみるようにとだいぶ前から修行の旅に出ていた。
 リン自体は師匠であるジンも認めるほど、神官として才能があった。
 それであればとシルヴィアは、リンに旅に出るように勧めたのだ。
 まさか、シルヴィアは、そのリンが帰ってきているとは思ってもいなかった。

 ココロからリンの名前を聞いたシルヴィアは、不思議そうな顔になった。
「ですが、なぜ戻ってきたのでしょう? 自分が満足いくまでは戻らないと言っていたと思うのですが」
「はい。ですので、一度自分の姿を見てもらおうと考えたのと、百合之神宮の話を聞いて戻ってきたそうです」
「そうでしたか。リリカから手紙で無事であることは聞いていましたが、ココロを見る限りでは元気そうで何よりです」
「で、ですから、どうしてそこで私の名前を出すのですかっ!」
 相変わらずからかってくるシルヴィアに、ココロは慌てて考助の顔を見た。

 だが、そんなココロの態度に気付いた様子もなく、考助は心ここにあらずといった顔になっていた。
「――――コウスケさん?」
 いつぞやも見たことがある、ただし、滅多に見ることのないその考助の顔を見て、シルヴィアは不思議そうな顔になった。
「ああ、いや。リンって、あのリンだよね?」
 考助はリンと直接対面したのは、随分前になる。
 そのときは、まだまだ幼さが残る顔だったのだが、今となってはかなり成長しているはずだ。
「ええ。そのリンですが?」
「うん。やっぱりそうだよね。ココロ、出来ればリンと直接会いたいんだけれど、大丈夫かな?」
 シルヴィアの返答に考助は頷き、ココロに向かってそう言った。

 予想外のことを言われたココロは、驚きで目を見開いた。
「ええ!? それは可能ですが、良いのですか?」
 考助から直接人に会いたいと言われることなど、稀なことだ。
 だからこそココロは驚いたのだが、考助が答える代わりに、シルヴィアが頷いて言った。
「良いのですよ。それに、リンにとっても得難い経験になるから、構わないでしょう」
「そうなのですか? それでしたら、まあ・・・・・・」
 なぜか渋々といった様子で頷いたココロに、シルヴィアは苦笑を返すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助がリンに会いたがったのは、単にココロのことがあっただけではない。
 というよりもむしろ、別の用件のほうが重要だったのだ。
 それが何かといえば、
「リン。君に加護を与えられるようになっているけれど、いるかな?」
「えっ!?」
 考助の言葉に、緊張しっぱなしだったリンが驚きの顔になっていた。

 結局リンはその申し出を受けて、考助の加護を得ることとなった。
 そのことに密かに誰よりも喜んでいたのがココロだったのは、当人も含めてこのときは誰も気づいていなかったのである。
久しぶりの登場なのに、数行で終わってしまった可哀そうなリンでしたw

ちなみに、タイトルはああなっていますが、今のところは友達(同僚)感覚から脱出しそうなところ、といった感じでしょうか。
リンは、赤ちゃんだったココロのことを覚えているので、まだまだそんな気にはなっていませんw
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