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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(3)トワの癒し?

 パチリ。
「フーム。ミア様が楽しむための娯楽ですか。・・・・・・今すぐにと言われても思い当たりませんね」
 ――パチリ。
「そうでしょうね。私もまったく思い当たりません」
 ――――パチリ。
「えっ。王が思い付かないのであれば、私に考えろというのは無理があると思いますよ?」
「あ、やっぱり、そう思う?」
 シュミットとトワの会話に、考助が間に入って相槌を打った。

 考助の言葉に、ふたりが同時に首を縦に振った。
 ちなみに、先ほどからトワとシュミットがパチリパチリと音を立てているのは、兵陸棋の駒を動かしている音だ。
 考助は兵陸棋には明るくないが、ふたりの様子を見ていれば、勝負が拮抗していることはわかる。
 お互いに考え込む時間が長くなっているのも、そう考える根拠のひとつだ。

 娯楽に関しては、先日のことがあったので聞いてみたのだが、やはりというべきか、芳しい答えは返ってこなかった。
 シュミットはともかく、トワであれば何か思いつくかと思っていたのだが、そう甘いものではなかったようだ。
「ミアの場合、学生時代からなんでも無難にこなしていましたからね。逆にそれが仇となって、趣味になるまでに興味を引けなかった感じがあります」
「うわー。もしかしなくても、才能があるからこその弊害か」
 何とも贅沢なミアの悩み(?)に、考助は呆れたような顔になった。

 この世界に来てからはともかく、以前の世界ではそんなことは一度も経験したことのない考助にとっては、思いつきもしないことだった。
 逆にいえば、ミアの気持ちが類推できるトワもまた、どこかでそういう経験をしていると言える。
 そのふたりが自分の子供だと考えると非常に不思議な感じだが、才能に関しては父親には似なかったのだろうと思うことにした。
 ただし、それをいまの考助が口すれば、白い目で見られる事は間違いない。
 幸いにして、このときの考助はそれを口にすることが無かったので、誰からも非難されることもなく済んだ。

 考助の言葉に、シュミットが笑っていいのか苦笑をしていいのか、非常にあいまいな表情になる。
「私からすれば、贅沢な悩みといえますね」
「いや、どうでしょう? 少なくとも本人にその自覚があるわけではないので、そもそも悩みだとは思っていないと思いますよ?」
 身も蓋もないトワの言葉に、シュミットは今度こそはっきりと苦笑を返した。

 ここで、それぞれがなにかを考え込むように沈黙が下りた。
 少しの間だけ、兵陸棋の駒を動かす音だけが部屋に響いていた。

 
 会話が途切れたので、もとよりきちんとした回答が返ってくることを期待していなかった考助が、話題を変えた。
「ところで、シュミットはこんなところでのんびりしていていいの? 商人部門統括の仕事、忙しいんじゃないの?」
「忙しいことは忙しいですが、実務のほとんどはそれぞれの部門長に移りましたから。以前と比べて仕事が増えたというわけではありません」
 クラウンの大改革が行われた結果、シュミットは役職が上がって商人部門統括になっている。
 これは、それぞれの部門の統括は、各大陸に存在している部門長をまとめる役で、実務に関しては確実に減っているのだ。
 その分、セントラル大陸以外での大陸での支部立ち上げなどに関わることになるので、仕事が減っているわけではない。

 あまり詳細には関わらなかった考助が、シュミットの説明に納得の表情になった。
「へー。そうなんだ」
「父上は、関わっていなかったのですか?」
 てっきり考助の指示でクラウンの大改革が行われていたと考えていたトワが、不思議そうな顔で聞いていた。
「いや、今回の件はほとんど関わっていないよ。むしろワーヒドたちが言ってきたことに乗っかっただけ」
 具体的に言えば違っているところもあるのだが、そこまで詳細に説明する気はない。
 トワもそのことがわかっているのか、それ以上具体的には聞いてこなかった。
 考助の言葉に、そうですかと頷いただけだった。

 それよりもトワには別に言っておきたいことがあった。
「それはいいのですが、祭り上げられたリクは災難ですよね」
「いやいや。別に祭り上げたわけじゃないよ。たまたまタイミングがあっただけで」
「へー。そうですか。タイミングがあっただけですか」
 大いに含みを持たせたトワのその言葉に、考助は顔を背けた。

 そのまま勢いで言葉を続けようとしたトワだったが、予想外の方向から攻撃が飛んできた。
「こら。自分の力が足りなくて対処できなかったことを、父親に責任を転嫁するな」
「……痛いです、母上」
 今まで話に加わっていなかったフローリアに、ぱちりと頭をはたかれたトワは、わざとらしく頭を押さえた。
 一国の王であるトワの頭をこれだけ気楽に叩けるのは、ごくごく限られた人数しかいないだろう。
 フローリアは、まぎれもなくそのうちのひとりだ。

「まったく。久しぶりに顔を見せたと思えば、父親に愚痴を言いに来たのか?」
「嫌ですねえ。久しぶりだからこそ、言うべきことを言うしかないじゃないですか」
 珍しく絡んできたトワに、フローリアが面白そうな顔になった。
「ほう? なるほど、それはいいことを聞いた。それでは私も久しぶりだから、トワに愚痴でも言おうか」
「えっ? あれ!? そうなりますか」
 予想外の反撃に、トワが慌てたような表情になった。
 フローリアの言う愚痴がどんなものか、これまでほとんど言われたことが無いだけに、まったく想像がつかなかったのだ。

 トワにニンマリとした笑みを浮かべたフローリアは、わざとらしく顎をさすって、
「そうだなあ。例えば、私が抱っこをしていたときに、おもらしをした時のことなんかどうだ?」
「ちょっ!?」
「いつまで経ってもおねしょが卒業できずに、悩んでいたこともあったよな」
「うえっ!?」
「コウスケといつまでも一緒にいたいと駄々をこねたことも・・・・・・」
「うわっ、わ、わかりました! 私の負けです。これ以上愚痴は言いませんから!」
 これ以上幼い頃の恥部をさらされてなるものかと、トワは慌ててフローリアを止めにかかった。
「そうか? 他にもいろいろとあるのだが?」
 勝者の笑みを浮かべるフローリアに、トワはガクリと肩を落とした。

 そんなトワを見て、考助は同情が混ざったような笑みを浮かべて、
「まあ、男はいつまで経っても母親には敵わないからね。早めに勝負を降りたのは、間違いじゃないと思うよ?」
 と、慰めになっているのかいないのか分からない言葉をトワに投げかけた。
 そんな考助に、トワは憮然とした顔を向けた。
「・・・・・・父上もそうなんですか?」
「あ~。どうだろうな。そういうこともあったんじゃないか?」
 考助がそう言うと、何となく周囲の空気が微妙になった。

 それを敏感に感じた考助は、特に気にしていないという顔になって、さらに続けた。
「まあ、別に愚痴を言いに来ることくらいはかまわないから、もう少しこっちにも顔を出すんだね。そうすれば、フローリアも寂しがることはないと思うよ」
「・・・・・・寂しがった結果が、先ほどの幼少期の暴露ですか」
「それは、親としての特権だからね。甘んじて受けるしかないね」
 考助がそう言うと、なぜか傍で話を聞いていたシュミットが大きく頷いた。
 どうやら彼も、似たような場面を数々見てきているようだった。

 自分よりも年長者にそう言われてしまっては、トワとしては反論のしようがない。
 結局、このあとも続けられたシュミットとの兵陸棋にも負けたトワは、この日は散々な結果で城へと戻ることになった。
 ただ、その顔がどこか晴れやかになっているように見えたのは、決してフローリアの気のせいではないのだろう。
こんな話を書きましたが、実際には、作者は親からこんな話をされた記憶はほとんどありませんw
(まったくないわけではないです。似たような話はされた覚えが・・・・・・ある、かな?)
皆様はどうでしょうか?

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