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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(9)狼と狐の違い

 予定の範囲内を耕した翌日。
 考助はシルヴィアと一緒に畑に向かい、同時に唖然とした表情を浮かべていた。
「えーと・・・・・・。一応確認だけれど、目の錯覚じゃないよね?」
「安心してください。恐らく同じ光景が私にも見えていると思います」
 ここしばらくは、考助のやることにも慣れきっていて、ほとんど驚くことのなかったシルヴィアが、驚きを露わにしていた。

 考助とシルヴィアの目の前には、ただ土を掘り起こしただけの畑予定地ではなく、今すぐにでも畑として使えるほどに作り替えられた土地があった。
 誰がこんな真似をしたのかは、言うまでもないだろう。
「あ~、うん。なんというか、予想外にもほどがあるね」
「まさかとは思っていましたが、一晩で結果を出すとは思っていませんでした」
 考助とシルヴィアは、スライムが土を作り替えていることは知っていたが、それでも次の作業がやりやすくなる程度だと考えていた。
 それが、ふたを開けてみれば、いつでも畑として使えるようになっているとは、思っても見なかったのだ。

 いつまで突っ立っていても仕方ないので、考助は予定を早めて作業をすることにした。
「・・・・・・ずっと現実逃避していても仕方ないから、畝でも作って行こうか」
「・・・・・・そうですね」
 ある意味、畑作りで一番大変な土作りがスライムによって終わってしまったように見えたので、考助がそう提案して、シルヴィアも頷いた。
 少なくとも考助とシルヴィアの目には、これ以上の土の改良のしようがないように見えた。
 下手に自分たちがいじれば、駄目な方向に向かうだろうという予感、というか実感もあったのだ。

 
 折角スライムたちが最高の土(と思われる)を用意してくれたので、考助とシルヴィアはその土を使って畝を用意していった。
 その日に行った作業は、畝を作っただけだ。
 本来であればすぐにでも種をまきたかったのだが、こんなに速く種まきができるとは考えていなかったので、なにを育てるかも決めていない。
 そのため、とりあえず畝だけを作って、種まきは翌日以降にしようと話し合って決めたのだ。
 考助もシルヴィアもそれぞれに育てたい物はあるが、広げようと思えばいくらでも農地は広げられるので、特に場所を巡って喧嘩はしていない。
 少なくとも考助にとっては初めてのことなので、ちょっとした広さでいくつかの作物を育てられればいいと考えていた。

 畝を作ったあとは、一応スーラにお願いをして畝は壊さないように、スライムたちに伝えてもらっておいた。
 話がきちんと通じているかどうかはわからないが、考助に指示されたスーラが張り切って、他のスライムのところに向かっていたので、考助とシルヴィアは大丈夫だと信じることにした

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 午前中で畝作りを終えてしまった考助は、せっかくだからということで、ナナやワンリと屋敷の周辺調査をすることにした。
 ただ、お昼のときにそう宣言すると、フローリアも着いて行くと宣言してきた。
 理由としては「折角だから体を動かしたい」というものだったが、態度を見れば考助と一緒にいたいというものが多分に含まれていることは、十分に理解できた。
 一応そのことがわかった考助は、シルヴィアを気にして確認するように見たが、まったく気にした様子はなかった。
 いつの間にかシルヴィアとフローリアの間で、何らかの協定が結ばれているらしいと、考助はそのときに初めて気がついていた。

 そんな過程を経て、考助はフローリア、ナナ、ワンリとともに、屋敷を出た。
 勿論、当然のように護衛役のコウヒとミツキは着いて来ている。
 屋敷周辺に張られている結界を抜けた考助は、ふと思い出したようにナナとワンリを見た。
「そういえば、狼と狐は、どのあたりを狩場にしているの? 被っているわけじゃないよね?」
 同じ眷属とはいえ、さすがに狩場が被ってしまえば、縄張り争いが発生してしまうだろう。
 もともと塔の管理層でも、眷属が増えすぎた場合、餌が無ければ一定数を超えることはないということがわかっている。
 屋敷周辺では、召喚陣による定期的な餌の供給が無い以上、餌取りはより厳しくなっているはずだ。

 そう考えての考助は問いかけたのだが、なぜかナナとワンリは顔を見合わせるような仕草をした。
 そして、狐型になっていたワンリが、わざわざ人型になって、
「全部が同じではないけれど、結構被っていると思いますよ」
「あれ? そうなの?」
 考助としては、トラブルを避けるためにも違う縄張りを持っていると考えていたのだが、どうも違ったらしい。

 不思議そうな顔になった考助に、ワンリは頷いて説明を続けた。
「狙う獲物が被ることが少ないから、敢えて分ける必要もないから」
「ああ、そういうことか」
 そもそも狼と狐では、獲物にしている獣やモンスターが違っているのだ。
 だからこそ、敢えて縄張りを分けて考える必要が無いのである。
 勿論、中には被っている獲物もいるが、同時に同じ対象を狙うことはないので、問題になることはほとんどない。

 
 新しい場所での狼と狐の縄張り事情をワンリから聞いた考助は、今度こそ彼らが狩りをしている場所へと向かった。
 考助たちが最初に行ったのは、狼の一グループが狩りをしている所だった。
「へえ。ブラックベアーを狙っているのか」
 考助にとっては非常に懐かしいモンスターを相手に、狼たちが狩りを行っていた。

 考助たちは、狩りの邪魔にならないように、ある程度離れた場所にいるのだが、それでも戦いの様子はよく見えた。
 集団戦に優れた狼たちは、自分たちよりもはるかに大きな相手を、きっちりと追い詰めて行っていた。
 そして、最後には色々なところに狼たちがかみついて、ブラックベアーが倒れ込むこととなった。
「うーん。安定して狩れているみたいだね」
 考助が感心したようにそう言うと、なぜかナナが褒めてと言わんばかりに、思いっきり尻尾を振りながら頭を擦り付けて来た。

 考助がナナの頭をよしよしと撫でていると、隣で同じように様子を見ていたフローリアが、ふと別の場所に視線を向けた。
「おや? あれは、眷属の狐たちではないか?」
「・・・・・・うん? ああ、そうだね」
 眷属であれば、ある程度離れていてもわかる考助が、フローリアの言葉に頷いた。
 そこでは三体の狐が、何かを追っかけている。
「なんだろ? 兎でも追いかけているのかな?」
 考助は軽く兎と言ったが、この世界での兎はただの小動物ではなく、れっきとしたモンスターだ。
 軽く見れば、手痛い反撃を喰らう相手である。

 三体の狐は、先ほどの狼とは違って、きっちりとした連携を取っているようには見えなかった。
 それでもきっちりと兎を追いつめて、最後には獲物を手に入れることができていた。
 それよりも考助が気になったのは、狼とは違って、三体の狐はその場で食べるのではなく、ひょいと獲物を持ち上げて歩き始めたことだ。
「あれ? 拠点にでも持っていくのかな?」
「恐らくそうだろうな。安全な場所で食べるのだろう」
 多くの群れで移動する狼と違って、狐は少ない数で狩りをしている。
 そのため、別のモンスターに襲われることを考えて、狩った獲物はその場で食べるのではなく、安全な拠点に持って帰ってから食べているのである。

 狼と狐の意外な違いを発見した考助だったが、そのあとは自分たちの運動もかねて、近くにいたブラックベアーの討伐を行った。
 今更考助たちにはブラックベアーの素材は必要ではないので、拠点に戻ってから狼と狐の餌としていた。
 そんなこんなで、なんだかんだありつつも、考助はこの日も一日を無難に(?)過ごすのであった。
今さらですが、狼と狐の違いでしたw
ちなみに、全部が全部そうだというわけではなく、環境によっても狩り方は違ってきます。
今回の場合は、新拠点周辺に適した狩り方を選んでいるということです。
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