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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(6)新しい趣味?

 新拠点での一番の不安事は、やはり眷属たちに定期的に与えられる餌がないということだ。
 塔の階層であれば、メイドゴーレムが配置している召喚陣があるために、眷属が飢えで死ぬということはない。
 だが、セントラル大陸では、定期的に召喚陣を置くということができない。
 そのため、眷属たちは自力で餌を狩りにいかねばならず、その労力がどのくらいになるのかは、考助にはまったくわからないのだ。
 屋敷のリビングにあるソファーで転がりながら悶々とそんなことを考えていた考助に、フローリアが呆れたような顔になって言った。
「ナナやワンリが大丈夫だと言っているのだから、少しは信用したらどうだ?」
「いや、別に信用していないとかじゃないんだけれどね」
 考助は、フローリアの言葉に渋い顔になる。

 考助にしてみれば、初めて塔外で眷属を飼う(?)ことであり、何があるかわからないという不安がある。
 その上で、エサ不足になるのではという明確な負の要素が見えているので、つい心配してしまうのだ。
 さらに、考助がこんなことを考えてしまうのには、もうひとつ理由がある。
「こちらに来てから時間を持て余しているようですから、余計なことを考えてしまうのでは?」
 シルヴィアのその指摘に、考助はふと動きを止めて、納得の表情になった。
「・・・・・・・・・・・・言われてみれば、そうかも?」
 管理層にいるときの考助は、いろいろと動いていた。
 勿論、くつろぎスペースでまったりとしている時間もあったが、それはあくまでも作業の合間合間の時間つぶしでしかない。
 だが、新拠点に来た考助は、いろいろな繋がりが切れたせいなのか、ほとんど何もしていない。

 シルヴィアの言葉で、自分がニートというよりもむしろ引きこもりと表現したほうが正しい状態になっていることに気付いた考助は、今度は別の意味で渋い顔になった。
「そうか。なにか時間をつぶせるようなことを見つければいいのか」
「なんだ。結局、管理層に居たときと同じようなことになるのか? ・・・・・・まあ、別にそれが悪いとは言わないが」
 たった数日で作業モードになった考助に、フローリアが呆れたような視線を向けた。
 何気に考助は、仕事人間のところがある。
 暇を持て余しているときに、どう時間をつぶしていいのかわかっていないのだ。
 シルヴィアもそのことを指摘したのだが、考助は見事に仕事をする選択をしていた。
 もっとも考助にしてみれば、仕事というよりも趣味の一環でしかないのだが、周囲にはそうは見えていない。

 そんなシルヴィアとフローリアの視線には気づかずに、考助はさっそくなにをするべきか考え始めた。
「うーん。といってもな。ゲームとかがあるわけじゃないし、ここで魔法陣の研究を始めても意味がない・・・・・・」
 ブツブツと呟いている考助の思考は、遊びと仕事(?)が混ざったものだった。
 ただし、考助の思考は完全に遊びの一種となっているのだから、黙って様子を見ているシルヴィアやフローリアにも止めることができない。
 下手にここで止めてしまった場合は、また先ほどと同じような状態になってしまうことをよくわかっているのだ。

 
 そんなシルヴィアとフローリアに見守られながら、考助はしばらくこの新しい拠点で何をしようかと考えていた。
 そして、突然ふと何かを思いついたような顔になった。
「・・・・・・家庭菜園でもやってみるかな?」
 ここでいきなり農業をやってみようかというほど無謀なことを言わないのは流石といえるだろう。
 いくら神といえども、一般的な知識しかない考助が、農業なんていう専門的な知識が必要な分野にいきなり手を出せるはずもない。
 だからこその家庭菜園であり、あくまでも実験的な規模でのお遊びでしかない。
 それに、そもそもが暇つぶしの作業でしかないので、考助にとってもそれで十分なのだ。

 何気なく思いついたことを呟いただけだった考助だったが、その思い付きが段々とつぼ(・・)にはまって、その気になってきた。
 その考助の顔を見たフローリアが、首を傾げながら聞いてきた。
「カテイサイエン? 意味から考えて、小規模な農業でもやるのか?」
 そのものズバリを言い当てたフローリアに、考助は小さく頷いた。
「そういうことだね。あくまでも趣味の範囲内だし。これで本格的にとか言ったら、本業の人に怒られるよ」
「規模が小さめということですが、どこでやるのですか?」
「それは勿論、この屋敷の周辺でだけれど?」
 シルヴィアの質問に、考助は当然のようにそう答えた。

 ただし、屋敷の周辺で農業改め家庭菜園をやるには大きな問題がある。
「結界の範囲内で収まるのですか?」
「いや、そんなに大きな畑なんか作らないから。作っても管理できないだろうし」
 屋敷を囲っている結界はそれなりの広さがある。
 ただ、大きな畑が作れるほどの広さはないのだ。
 付け加えれば、考助には他にもしたいことがあるので、農業だけに時間を使うわけにはいかない。
 そんなに大きな畑など管理できるはずがないのである。

 考助の回答に、シルヴィアとフローリアがどこか安心したような顔になって頷いていた。
 それを見た考助は、どこか傷ついたような顔になる。
「いくら思いつきだからといって、そんな無計画なことはやらないよ」
「いえ。そういうことではなく・・・・・・」
「考助のことだから、新しい分野に手を出してもなにか大きな変化を起こすのではないかと思ってな」
 言葉を濁して言いかけたシルヴィアに代わって、フローリアがはっきりと言ってきた。

 今まで考助がやってきたことを考えれば、確かにフローリアの言っていることは間違いではない。
 ただし、考助にとっては、成功(?)する裏側ではいろいろな失敗を重ねてきているので、素直に頷くことはできなかった。
「い、いや。いくらなんでも農業は専門外だから。そうそう簡単に神の力なんて発揮するはずないよ」
 考助の本領はあくまでも魔道具作りであり、その本質である魔法陣にある。
 そう考えている考助は、顔を引きつらせながら答えた。

 だが、そんな考助に、シルヴィアとフローリアはわざとらしくため息をついて見せた。
「・・・・・・コウスケさんがそう思っているのでしたら、それでいいのですが・・・・・・」
「できれば、今までの結果を見てほしいな」
「うぐっ!?」
 シルヴィアとフローリアの言い様に、考助は思わず言葉に詰まった。

 多くの失敗をしているのは確かだが、その中で大きな成果を出していることも確かなのだ。
 しかも、それをもって現人神という存在になっているのだから、否定しようもない。
 というよりも、今まで何度も何度も繰り返されているのにもかかわらず、敢えて自重も自覚もしようとしていないのは、考助の方なのだ。
 もっとも、それが考助らしいということで見逃している女性陣も、同類というか、お仲間といえるのかもしれない。

 何となくふたりから責められていると感じた考助は、窺うようにシルヴィアとフローリアを見た。
「や、やめた方がいいかな?」
 珍しく(?)気弱な表情になった考助に、シルヴィアとフローリアは同時に顔を見合わせた。
「止める止めないはお任せしますが、少しは自覚したほうが良いと思います」
「そうだな。止めたところで考助の性格であれば、一度決めたら進めるだろう?」
 ふたりとも自分たちの言葉で考助が止まると思って忠告したわけではない。
 むしろ、自分たちの言葉で止まるようであれば、その程度のものでしかなかったということだ。
 だからこそ、聞きようによっては遠慮がない言葉を揃って投げかけていたのである。

 シルヴィアとフローリアの言葉に妙に納得できた考助は、多少の不安が芽生えてくるのであった。
・・・・・・なにやらフラグが乱立しているような気がしますが、恐らく気のせいです。
ただの家庭菜園ですから。
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