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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(5)新拠点の眷属

 狼と狐の数は、いきなり考助が決めるのではなく、まずはナナとワンリに周辺を見てもらってから決めてもらうことにした。
 さらに、いきなり進化種だけを連れて来るのではなく、最初の基本種も混ぜることを言ってある。
 理由は簡単で、大陸内で灰色狼や妖狐を育てた場合に、同じように進化をするのか調べるためだ。
 そのため、むしろ二種の基本種が多くなるようにナナとワンリには言ってある。
 ちなみに、スーラを始めとしたスライムも連れてきているが、彼(彼女?)らは考助が適当に選んでいる。
 そもそもスライムたちには屋敷の結界内で過ごしてもらうつもりでいる。
 ごく普通のスライムは、新拠点の傍の環境ではとても生きていけるはずがないためである。
 勿論、スーラのように進化した種であればある程度は生き残れるだろうが、それを調べるためにむやみに犠牲を出すつもりはないのだ。

 考助が屋敷の周辺で結界の効果を調べていると、周辺の調査に行っていたナナとワンリが帰ってきた。
 外をウロウロしていることに気付いていたのか、最初から考助のいる場所をめがけて駆け寄ってきた。
 ワンリはその途中で姿を狐から人に変えていた。
「ワンリ、お疲れ様」
 考助がナナの首筋を撫でながらそう言うと、ワンリが笑顔になりながら答えて来た。
「お兄様、ただいま」
「うん。お帰り。それで、どうだった?」
 なにがどうだったのかまでは敢えて言わない。
 ナナとワンリがなにをしに行ったのかは、お互いによくわかっているからだ。

 考助の問いに、ナナはひょいと首を上げて、ワンリが一度頷いてから話し出した。
「狼も狐も、それぞれ五十くらいは賄えそうです。できれば、どちらも基本種は半分ずつくらいにしてくれると・・・・・・」
「半分ということは・・・・・・二十五? 大丈夫なの?」
 新拠点がある場所は、セントラル大陸でも沿岸部ではなく、それなりに内陸部になる。
 それだけ出てくるモンスターのレベルが高いので、考助の感覚ではもう少し少なくなると考えていたのだ。

 考助の不安な顔を見て取ったのか、ワンリが安心させるように笑いながら頷いた。
「はい。大丈夫です。わたしもナナちゃんも、残りの半分は強い仲間を連れて来るつもりなので」
 狼や狐のどの種を連れて来るかは、完全にナナやワンリに任せてある。
 考助は数だけ把握しておきたいのと、基本種だけは新たに召喚した眷属で賄うつもりだったので、そう伝えていた。
「そう? それならそれで安心だけれど、塔の方は大丈夫なの?」
 いきなり強い種族を数多く連れて来ると、各階層の戦力バランスが崩れるのではと考助は懸念していた。

 だが、そんな考助にワンリは頷きながら答えた。
「はい。むしろ、どっちもそれぞれの階層で、少しずつ余剰気味になっているので」
「あれ? そうなの?」
 逆に疑問に思った考助は、詳しくワンリに状況を聞くことになった。

 ワンリの話によると、いまのアマミヤの塔の眷属たちの状況は、進化種がそれぞれの階層で少しずつ余り気味になっているようなのだ。
 そのお陰で、ランクが低い種族がより強い相手と戦う機会が減っているらしい。
 自分よりも強い相手と戦えば、それだけ進化する機会も増えるというのは、考助の中でもある程度認識はあったので、ワンリから話を聞いても驚くことはなかった。
 それよりも、進化種が余り気味になっているということのほうが、考助の中では問題だった。
「うわー。失敗したな。きちんと話を聞いておけば良かった。なにも言ってこないから、てっきりちょうどバランスが取れているのかと思ってた」
 考助にしてみれば、それぞれの眷属を管理しているナナとワンリが特になにも言ってこなかったので、問題は起こっていないと考えていた。
 何よりも、それぞれの階層を見回っているときには、平穏無事という雰囲気になっているので、気付きもしなかった。
 結果として、考助は特にナナやワンリに話を聞くこともしていなかったのだが、それが問題を見逃す原因になっていたのだ。

 深く考え込んでしまった考助を見て、ワンリが勘違いをして、少し落ち込んだような顔になった。
「あの・・・・・・ごめんなさい。別に群れに問題が起きているわけではないから、それでもいいのかと・・・・・・」
 そのワンリの声で、ようやく考助は彼女の顔を見て勘違いさせてしまっていることに気が付いた。
「ああ、いや、ごめんごめん。ワンリやナナを責めているわけじゃないよ。ただ、もっとちゃんと話を聞いておけば良かったと思っただけ」
 考助にしてみれば、それぞれの眷属の里が安定してさえいれば問題ないのだ。
 塔のそれぞれの階層では、すでに十分すぎるほどの神力が得られている。
 無理に眷属の数を増やすよりは、各拠点を安定させている方が重要なのである。
 どこかの誰かに安定志向といわれそうだが、実際、そんな状態が十年以上も続けば、そういう方向に意識が向いても仕方ないだろう。

 考助の言葉を聞いて、ワンリが安堵の表情を浮かべた。
「まあ、そういうわけだから、ナナもワンリも気にしないで。それよりも、こっちの新しい拠点の話のほうが重要だから」
 塔の拠点は、安定して運営できているのであれば、進化のことなど大した問題ではない。
 それよりも、いまの考助にとっては、新しい拠点のほうが重要なのだ。
「それで、やっぱり厩舎みたいなのは必要だよね?」
 いくら狼や狐だからと言っても、雨露をしのげる施設はあったほうがいいだろう。
 そう考えての考助の問いかけに、ワンリは小さく頷き、その隣でナナがブンブンと首を上下に振っていた。

 塔の中にいる眷属たちは、厩舎があることが当たり前という生活をしているので、いきなりない場所に放り込まれても困ったことになるだろう。
 勿論、種族的には野生で過ごすのが当たり前なのでなくても問題はないだろうが、健康面ではあったほうが良いに決まっている。
「やっぱりそうだよね。・・・・・・うーん。さて、どうするか」
 一番簡単なのは、塔のどこかの階層に新しい厩舎を用意して、考助がそれを召喚してしまえばいい。
 ただし、それだと建物だけが召喚されるので、結界などは付いてこない。
 アスラの用意した屋敷には結界があるが、さすがに五十頭の狼か狐が快適に過ごせる厩舎ふたつ分を入れるほどの余裕はない。
 この辺りは、ブラックベアーを始めとして、モンスターが多く出てくる場所なので、できれば結界はあったほうが良い。

 さてどうするかと悩んだ考助は、とりあえずひとつだけ厩舎を召喚してから簡易的な結界を用意することにした。
 そして、しばらくは狼と狐に同居してもらって、別の場所にそれぞれの眷属たちが住むための厩舎を新たに作るのだ。
 ここで一度経験した建物作りが役に立つこととなった。
 こんなことをする予定はまったくなかったのだが、人生なにが役に立つのかはわからないものである。

 それはともかくとして、狼と狐の基本的な管理方法が決まった。
 早速考助は、一度管理層に戻って適当な階層に厩舎を建築して、それを新拠点の適当な場所に召喚した。
 全部で百体になる狼と狐がすべて入るには狭すぎるが、必ずしも全部が厩舎に入っているわけではないのでそれでも構わないとワンリが言っていた。
 それに、考助が作る予定になっている厩舎も、中身の造りが普通の家と違って簡素なので、作るのにさほど時間がかかるわけではない。

 とりあえずの仮拠点もどきができたので、考助はそれぞれ二十五体ずつ狼と狐を新たに召喚して、厩舎へと連れて来た。
 さすがに一度での移動は無理なので、何度かに分けての移動だった。
 新しい厩舎には、既にナナとワンリが連れて来た進化種の狼と狐が住み着いている。
 狼と狐の基本種を考助が連れてきたことで、新しい拠点の体裁は整うことができた。
 あとは、考助が頑張って、きちんとした厩舎を用意すれば、本格的な新拠点の運用開始となる。
裏ではきちんとスライムたちも連れてきています。
ただし、こちらは進化種はおらず、基本種だけを召喚して結界内に放っています。
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