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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(4)研究欲

前半説明回。
 新しい建物を見たフローリアは、考助と同じようにしばらく立ち直れないようだった。
 それに反して、シルヴィアはなぜだか生き生きとした表情になって、建物の周囲を見回っていた。
 あとで考助が理由を聞いてみれば、神威物の調査は聖職者にとっては、重要な仕事のひとつらしい。
 しかも、神がその手で用意したとわかっている建築物など、そうそうお目にかかることなどない。
 今回の建物に関しては、出所がはっきりしていて疑う余地などないので、研究対象としては十分すぎるほどの価値がある。
 そんなことを言って、建物の外や中をうろうろとしているシルヴィアを見て、考助も研究欲に取りつかれてしまった。
 何しろアスラが用意した建物なのだ。
 建物の周囲を覆っている結界なども含めて、考助が見るべきところもたくさんある。
 そんな感じで考助とシルヴィアが建物の研究を始めると、なぜかフローリアまでそれに関わってきた。
 フローリア曰く「なんだかひとりで悩んでいるのが馬鹿らしくなってきたから、装飾の研究でもする」ということだった。
 元女王として目が肥えているフローリアには、ぴったりの題材だろう。
 考助たちに中てられて、いささか無理やりに研究テーマを見つけたような感じもしたが、考助からは意外と楽しそうに見えていた。

 一週間ほどは建物の研究に勤しんでいた考助たちだが、別にそれだけを行っていたわけではない。
 並行して、新拠点とするべく引っ越し作業も行ったのだが、それはさほど時間はかからなかった。
 新拠点とはいっても、完全に生活の場を移すわけではないので、管理層から急いで移さなければならない物もさほど多くはない。
 考助は最初に、研究室も移動しようと考えていたのだが、管理層の研究室にある細々と積み上げられている物を見て、すぐに諦めた。
 新拠点にも研究室を作るつもりではいるので、少しずつ物を移動していき、最終的には新拠点だけで研究ができるようになればいいと考えたのだ。
 シルヴィアやフローリアも同じようなことを考えたようで、新拠点への物の移動は、最小限に抑えているようだった。
 生活に必要なものは、いつでも転移陣を使って管理層に取りに戻れるので、それでも問題はないのである。

 代わりにと言ってはなんだが、コウヒとミツキが建物の研究に夢中になっている考助の護衛を交互にしながら、食材の運び込みやら建物を管理するためのメイドゴーレムの運び込みなどを頻繁に行っていた。
 特にメイドゴーレムは、新しい場所を管理することになるので、新しく作り替える部分もいくつかあったようだ。
 もっとも、ゴーレム作りはふたりにとっては趣味の一環になっているので、楽しそうに行っていた。
 それを見ていたフローリアが、似たような主従だと呟いていたのだが、彼女も同じようなものじゃないかと考助が考えていたのは秘密である。

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 新しい拠点ができてから半月ほどもすれば、考助たちの研究意欲も多少は落ち着いてきた。
 その頃には、コウヒとミツキの作業もすっかり終わっていたので、考助は当初の予定であった眷属たちを連れて来ることにした。
 さすがに、いくらアスラが時間的には気の長いとはいっても、ひと月以上待たせるのは忍びない。

「それで、どの眷属を連れて来るのかは決めたのか?」
 眷属を連れて来ることを宣言した考助に、フローリアがそう聞いてきた。
「うん。というか、あまり迷う必要もなかったかなと」
「ほう?」
 僅かに片眉を上げたフローリアに、考助が肩をすくめながらシルヴィアを見た。
「シルヴィアには見当ついているのでは?」
「はい。・・・・・・というよりも、いまの聞かれ方でわかりました」
 この場で敢えて自分を見て来た考助に、シルヴィアは頷きながらそう答えた。

 シルヴィアの言葉を聞いてまだわからなかったフローリアが、訝し気な表情でシルヴィアを見た。
 その視線を受けて、シルヴィアがフローリアに説明をした。
「難しく考える必要はありません。恐らく神獣の三種類を連れて来るのですよね?」
「そういうことだね。スライムはともかくとして、やっぱり狼と狐は、僕にとっては基本中の基本だからね」
 恐らくと断りつつ確信しているようなシルヴィアの言い方に、考助はコクリと頷いてそう答えた。

 考助が塔を攻略したあと、すぐに眷属として養い(?)始めたのが狼と狐だ。
 とにかくその二種族は、考助にとっては非常に相性がいい眷属ということになる。
 スライムに関しては、外敵のことさえ考えなければ、どんな環境でも生きていける種族だ。
 護衛代わりに狼と狐を置いておけば勝手に繁殖してくれると考えている。

 問題は、狼と狐のための餌だが、これは塔と違って餌代わりの魔法陣を用意することができないので、こればかりは狩りで得て行くしかないだろう。
 眷属を養っていくには、どれくらいの広さが必要になるのか、手探りで考えて行くしかない。
 そのためにも、意思疎通が比較的しやすいナナやワンリが必要不可欠となる。
 そうした点からも最初に連れて来る眷属としては、狼と狐が最適だと考えたのだ。

 考助の説明に、フローリアが納得の表情で頷いた。
「確かに聞いてみれば、なるほどという感じか」
「意表をついても良かったんだけれどね。まあ、最初のうちは無難なところで行こうかと」
 こういうところがマンネリ化を引き起こして、新しい発想に繋がらないということもあるのだが、考助はとにかく安定していることを選んだ。
 それに、新しい眷属を連れてきて育成しても、それが環境のせいで起こったのか塔でも起こるのか区別をつけるのに時間がかかる。
 それならば、最初から色々なことがわかっている狼と狐で検証したほうがいいのだ。

 考助の説明に、シルヴィアがさらに付け加えて来た。
「それに、もしこの辺りまで冒険者が来たときに、狼や狐は討伐されにくいでしょう」
 すでにセントラル大陸の冒険者たちの間には、狼や狐が考助の神獣として広く伝わっている。
 流石に襲撃されれば討伐もするが、冒険者がむやみやたらと手を出すような存在ではなくなっている。
 特に、セントラル大陸の奥地まで来れるような高ランクの冒険者に、そうした傾向が強い。

「ああ、そういう問題もあったね」
 シルヴィアの言葉に、考助もようやく思い出したように答えた。
 新しい拠点は、塔のように絶対に冒険者が来ないという場所ではないので、いずれは冒険者対策も必要になるだろう。
 もっとも、新拠点は考助たちが飛龍で数日かけて移動した場所でもあるので、そこまで来れる冒険者が限られていることも確かなのだが。
「ここがどの辺りになるのかはわからんが、対策は必要だろうな」
 考助は、敢えて新拠点が大陸のどのあたりにあるのかは、ふたりに知らせていない。
 別に教えたところでふたりが漏らすとは考えていないのだが、変に知っているよりも知らないままのほうがいいだろうとフローリアが言ってきたのだ。
 それを聞いたシルヴィアも同意していたので、教えるのは控えたのだ。

 ほとんど考助の独断で連れてくる眷属が決まったのだが、それに対してシルヴィアとフローリアがなにかを言うことはなかった。
 そもそも今回の件は、世界にとって非常に重要な相手からの依頼なので、自分たちが口を挟めるとは思っていないということもある。
 シルヴィアやフローリアとしては、今回の引っ越しは、あくまでも考助に付き合って生活の場所を移しているだけという認識なのであった。
最初の説明は数行で終わらせようとしてたらたら書いていたら、思ったよりも長くなってしまいました。
会話形式にしたらさらに長くなってくどくなりそうだったので、そのまま勢いで書き切ってしまいましたw

というわけで、次回はナナとワンリが登場!
ついでに、塔のアイドル、スーラも。
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