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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(1)重大な報告?

 南大陸での騒動が終わってからひと月ほどが経ったある日。
 管理層には、考助の家族全員が揃っていた。
 こんなことはいままでになかったことなので、集められた者たちは何事かと少し落ち着かない様子を見せていた。
 生まれたばかりのシュレインの子であるシュウや、滅多に管理層で姿を見ることのないハクやルカまでいるのだから、呼ばれた者たちが不思議に思うのは当然だろう。
 トワの子供たち三人も揃っているので、全員で十七(+二)人にもなる。
 揃っている者たち見ながら、考助はこの世界に来てから随分と時間が経ったもんだなと感慨深げに、感傷に浸っていた。
 そんな考助を見て、シルヴィアがクスリと笑った。
「コウスケさん、なにか話があったのではありませんか?」
 これだけのメンバーをわざわざ揃えておいてなにもないはずがないのだが、シルヴィアは敢えてそう切り出した。
「そう言えばそうだった」
 出会ったばかりのときとまったく変わっていないその笑顔に、考助は少しばかり照れたような顔になって頭を掻く仕草をした。

 考助とシルヴィアのやり取りに、なごんだり砂糖を飲み込んだような顔をしたり、一同は様々な表情を見せている。
 それらを見回した考助は、ごく簡単に言った。
「僕らがこのアマミヤの塔に拠点を持ってから三十年近くなるわけだけれど、そろそろ別の場所に拠点を移そうと思うんだ」
 考助が一気にそう言うと、その場が一瞬静まり返った。

 そんな中で、最初に言葉を発したのはフローリアだった。
「……それは、塔の管理を止めるということか?」
 そのフローリアの問いかけで、皆が誤解していると考えた考助は、慌てて右手を左右に振った。
「いやいや、違う違う。管理の解除もしないし、権限の完全移譲も考えていないよ。あくまでも生活の場を移すだけ」
「生活の場を移すとは? 具体的にはどこに?」
 さらに突っ込んで聞いてきたフローリアに、考助は少し考えるように首を傾けてから答えた。
「場所はセントラル大陸のどこか、だね。住む場所は、例の方が用意してくれるって」
 考助がそう答えると、考助の嫁たち五人は、すぐに納得の表情になった。

 逆に考助が言った「例の方」が誰だかがわからない子供たちは、不思議そうな顔になっている。
 アスラの存在は、アースガルドの世界でも慎重な扱いが求められるので、あまり詳しくは説明していないのだ。
 考助が隠すことなく話をしているのは、嫁五人とコウヒ、ミツキだけなのだ。
 考助は、そのアスラから、一週間前にとある提案を受けていた。
 それを検討した結果、こうして皆を集めて説明をすることになったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 時は遡って、考助が定期訪問で神域を訪れたときのこと。
 いつもの食事会を終えた考助は、アスラに呼ばれた。
 アスラに呼ばれること自体は珍しいことではないので、考助はいつもの雑談だろうと気楽な気持ちで話しかけた。
「それで、何かあったの?」
「ええ。少しお願いというか、提案があってね」
 そう切り出したアスラの顔を見て、思ったよりも真面目な話だとわかった考助は、首を傾げてアスラを見た。
「提案?」
「そう。考助の眷属を大陸のどこかに住まわせてみない?」
 その唐突すぎる提案に、考助は一瞬目を丸くしてから、すぐに真剣な表情になった。

 アスラが言っていることはつまり、アマミヤの塔で召喚した眷属のモンスターを、アースガルドの世界にある五つの大陸のどこかに縄張りを持たせるということだ。
 いままで散々塔の管理で色々な実験をやってきた考助は、その提案が同じようなことだとすぐに理解できた。
「・・・・・・もっと詳しく話を聞いても?」
 何やら考え込むように言ってきた考助に、アスラは軽く頷いた。
「勿論よ。といっても、大した理由があるわけではないけれどね」
 そう前置きをしたアスラは、自分が考えていることを考助に話し始めた。

 アースガルドの世界は、考助が管理しているアマミヤの塔のように、自分が任意で出せる眷属というものは存在していない。
 というよりも、そんなものが存在していれば、ここまで徹底してアスラの痕跡を隠すことは不可能だろう。
 眷属という存在がいないわけではないが、それらはあくまでもヴァンパイアにとっての眷属だったり、他の女神たちの眷属だったりするのだ。
 それらを前提として、アースガルドではあくまでも自然発生のモンスターが跋扈している世界になるのだが、その世界に塔の各階層のように考助の眷属を放ったらどうなるのかを知りたいというのが、アスラの考えだった。

 アスラからその話を聞いた考助は、再び考え込むように黙り込んだ。
 アスラの提案は、考助にも興味がある内容だった。
 問題があるとすれば、召還した眷属たちをどこにつれていくのかとか、餌はどうするのかなど、様々な問題が出てくる。
 さらに大きな問題は、眷属たちをどこかに放つとして、きちんとした管理がしづらくなるということだ。
 大陸の大自然の中に眷属たちを放ってしまえば、塔の階層のように様子を見ることができない。
 折角調査のために眷属たちを送り出しても、少なくとも考助では結果をきちんと確認することができないのだ。

 そんなことを話した考助は、期待する視線をアスラに向けた。
「アスラには、確認する方法がある?」
「あるにはあるけれど、そっちでいうところの遠見とかになるから、考助が期待しているものはないわね」
 考助は塔の管理をしているときも、出来るだけ眷属たちと触れ合うようにしていた。
 そのためには、どうしても拠点を作って考助が確認しやすいようにする必要がある。

 悩める考助に、アスラが気楽な調子で続けた。
「別にそんなに難しく考える必要はないでしょう? 考助がやっているように、拠点を作ればいいだけなんだし」
「あれ? そんなことってできるの?」
 首を傾げた考助に、アスラが少し呆れ気味に答えた。
「できるわよ。というか、考助だって建物の移築位は召喚陣でできるでしょう?」
「・・・・・・ああ。そういえば」
 すっかりそのことを忘れていた考助は、言われて初めて思い出したという顔になった。

 考助の様子に呆れたようにため息をついたアスラは、
「まあ、いいわ。考助が良いっていうんだったら、拠点くらいはこっちで用意するから」
「そうなの? それって、僕が住む家とかも用意してもらえる?」
「えっ!? 考助も住むの?」
 アスラは、てっきり塔のときと同じように転移門を設置して行き来するだろうと考えていたので、考助の言葉に驚きを示した。

 そのアスラに考助は、一度頷いた。
「うん。折角だから、行方をくらませようと思ってね」
「ああ、なるほど。そういうことね。それなら、そういう目的の建物を用意するわよ」
 考助の目的を察したアスラは、すぐにそう請け負った。
 いま考助が、自分が関わってきたものの代替わりを目指して動いていることは、アスラも知っているのだ。
「そう? お願いしていいかな?」
「わかったわ。その辺は任せて。場所はどうするの?」
「うーん。できればセントラル大陸が良いかな? 神域でもあるし。あとはそっちの都合に任せるよ」
「そう。だったら、連れて行く眷属を決めておいてね。それによって場所も変わるだろうから」
「わかったよ。今日中に考えておくから、明日には伝えるよ」
「あら。そんなに急がなくてもいいのだけれど・・・・・・まあ、考助の都合もあるわね」
 折角の機会だからと話を一気に進める考助に、アスラは納得した表情で頷いていた。

 こうして、アスラの提案をもとに、考助の隠居(?)計画が進められることとなったのである。
のっけから隠居宣言ですw
着々と世代交代を進めていって、現人神としての直接の繋がりを消していく予定です。
(世界とのかかわりを断つとは言っていませんw)
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