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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(13)身内の結果

 南大陸が大氾濫を静めて、政治的にも落ち着いたころ。
 アマミヤの塔の管理層には、とあるメンバーが密かに集まっていた。
「もうそろそろ南大陸も落ち着いたかな?」
「はい。クラウンの助けがなかったところはやはり被害も大きかったようで、これまでクラウンに見向きもしていなかった国も検討を始めているようです」
 考助の問いに答えたのは、クラウン統括のワーヒドだった。
 そのワーヒド以外にも、管理層の会議室には他の統括たちが集まっている。
 部門長以下のメンバーが集まっていないこの打ち合わせは、今後のクラウンの先を決める重要なものとしてワーヒドが提案したものであり、考助もそれを受け入れた。
 というよりも、この会合が持たれることは、南大陸で大氾濫が発生したとわかったときから予定されていたものだった。

 大氾濫は自然に発生していたものだったが、考助たちはこの大氾濫を利用して、いくつかの計画を立てていたのだ。
 考助たちが言っていたリーダー種の素材集めは、あくまでも表向きの理由でしかなかったのである。
 計画のうちのひとつは、『烈火の狼』の立場の向上であり、他から反対する意見が上がることなくSランクに上がっている。
 ふたつ目は、モンスター討伐におけるクラウンの重要性を知らしめるということで、これもはっきりとした数字に出たことで、各国が支部の開設に積極的になってきている。
 最後に、これが一番重要で、クラウンという組織もしっかりと世代交代を果たそうということだった。
 具体的には、いまでも統括を続けているワーヒドたち六人が、完全に表舞台からは身を引くということだ。

 南大陸の大氾濫で結果が出たことにより、これから世界中にクラウンの支部が増えることが見込まれている。
 そうなると、クラウンは完全に世界的な組織になり、それを少数の者たちだけで運営していくことは、問題が出てくる。
 今後、アマミヤの塔にある本部では、セントラル大陸内を管理する大支部としての機能と、それぞれの大陸の大支部をまとめる役目の機能を完全にわけて運営していくというのが、ワーヒドたちの立てている計画だった。
 各大陸にはそれぞれの支部をまとめる大支部がひとつずつできる。
 そして、第五層にある本部でその大支部をまとめる役目をそれぞれの統括が担うということになる。
 その大きな組織の改編に伴って、これまで統括として動いていたワーヒドたちは完全に引いて、これまで部門長だった者たちを統括として立場を引き上げるのだ。
 ワーヒドたちが身を引くことにより世代交代を促して、組織の刷新を上手く行うというのが計画の大まかな内容である。

 ワーヒドの報告に考助は大きく頷いた。
「そうか。まあ、予想した通り、どう考えてもひとつの支部だけで世界全体をまとめるのは無理だよね」
「はい。私たちはともかく、後任の者たちは首が回らなくなるかと」
 どちらかといえば、種族的にはコウヒやミツキに近いワーヒドが、特に自慢するでもなくあっさりと頷いた。
 疲れることを知らず、ほとんど睡眠もとらなくていい種族と比べるのが間違いなのだ。
 それに、たとえワーヒドであっても、全世界の全支部にくまなく目を配るのは難しいのだ。

「まあ、そうだよね。本部は情報の吸い上げと人材の教育に力を注ぐ感じかな?」
「私たちはそれがいいと考えていますが・・・・・・。新統括たちがどう考えるかによっても変わるのではないでしょうか」
「ああ、なるほど。そこも任せてしまうのか」
 せっかくの世代交代なので、新しい仕事はその者たちに任せてしまう方がいいというのがワーヒドの考えだった。
 ワーヒドの説明を聞いて考助も納得して頷いた。

 当然ある程度はワーヒドたちも計画を立てているが、口を出すかどうかは新統括たちの案を見てからになる。
 そこで奇抜すぎるものが出てこない限りは、ワーヒドたちも反対するつもりはない。
 それに、ワーヒドたちは表舞台から姿を消すといっても、新統括たちとのつながりを完全に断つつもりはないのだ。
 それによってワーヒドたちにどの程度の影響力が残るかはわからないが、確実にいまよりは弱くなる。
 というよりも、弱くならないと世代交代する意味がないのだ。
 あるいは、後の世でワーヒドたちがクラウンのフィクサーと呼ばれるようになっているかもしれないが、そういうことを考えていては、いまの改革を進めることはできなくなってしまう。

 より具体的な計画については、あくまでも新統括が決まってからということになり、その場での考助たちの話し合いは終わった。
 そして、その日のうちにワーヒドたちが、部門長たちに組織再編の話をすることにより、ようやくその計画が表に出ることとなった。
 突然の統括たちからの引退(?)宣言により、現場は混乱することになるのだが、それはどの組織でも同じようなことは起こり得る。
 それに、今回の大氾濫で組織が膨張することは目に見えていたので、ワーヒドたちの引退云々はともかくとして、組織を刷新すること自体に反対する者はひとりもいなかったのである。

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「今回は、完全に父上の手のひらの上か」
 すでにリクは、自分を英雄に仕立てあげられたことが考助の計画の一部だと気付いていた。
 リクから恨みがましい視線を向けられた考助は、苦笑しながら首を左右に振った。
「さすがにそれは言い過ぎだよ。いくらなんでも最初から最後まで全部僕らが計画したことじゃないから」
「そうか? 終わってみれば、クラウンのひとり勝ちじゃないか。おまけに、なぜか俺に統括なんて面倒な役目を押し付けられているし」

 そう。
 クラウンは新しい組織体系を発表すると同時に、当然新しい統括も公表していた。
 その統括として、リクの名が挙がっていたのはある意味では当然の結果だった。
 なにしろ、いまのリクたちはドラゴンを倒した英雄なのだ。
 その英雄に対して、クラウンという組織を纏める地位に上げることに、少なくとも表立った不満をいうものは誰もいなかった。
 ついでに、リクが考助の実子であるということも、統括として選ばれた理由のひとつとなっていたりもする。

 統括としての打診があったリクは、最後の最後まで抵抗していたのだが、今まで通り冒険者としての活動を続けていいという条件を付けて、渋々と引き受けることになっていた。
 ワーヒドたちも今すぐに身を引くわけではないので、それでも構わないといのだ。
 今後ワーヒドは、リクの代理人としてクラウンの運営に携わっていくことになっている。
 それも徐々にリクに引き継いでいくつもりではいるが、リクがどこまで抵抗できるかがいまの見どころだと、考助は他人事ながらそんなことを考えている。

 不満たらたらな態度をしているリクに、フローリアが笑いながら言った。
「まあ、そう言うな。今回の件で、お仲間たちにも遊んで暮らせるほどの金が手に入ったのだろう?」
 その言葉に、お金のためだけに冒険者をやっているわけではないと反発しようとしたリクだったが、真面目な表情になったフローリアに止められた。
「それに、いつまでふたりを待たせるつもりだ? そろそろ我が儘を言い続けられる年ではないことはわかっているのだろう?」
「ぐっ!?」
 予想外の方向からの攻撃に、リクは言葉を詰まらせた。

 フローリアが言っているふたりというのは、パーティメンバーのカーリとダーリヤのことだ。
 リクとふたりが深い関係にあることはとっくにフローリアも気付いていた。
 ただ、いつまで経っても身を固める様子のないリクに、フローリアが釘を差した形になる。
 というのも、この世界での高齢出産は本当の意味で命がけになるので、フローリアの言葉は紛れもない事実なのだ。
 実の親のそれも母親からの忠告に、リクは完全に反論する言葉を失った。

 リクは、冒険者として完全に引退するつもりはないが、身を固めるべきかと心を決めるのは、この日から数日後のことなのであった。
爆ぜろ!(結論)

というわけで(どういうわけだ?)、この話で南大陸の大氾濫の話は終わりになります。
なんとか、予定した通りに話は進んだ……はずです。
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