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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(9)リーダー種との戦闘(烈火の狼)

 山脈にいるモンスターが氾濫を起こすほんの数日前。
 ついに、一般の者たちにも国から正式な情報が出された。
 それは細かい事は一切なく、ごく単純に数千規模の大氾濫が発生するというお知らせだった。
 もっとも、すでにそのときには国軍も大掛かりに動いて、更には冒険者たちも最低限の戦力を残して山脈側に移動させられていたので、普通に生活している者たちにも何となく普通じゃないことが起こっていることは噂されていた。
 そもそも冒険者に依頼をかける時点である程度の話は表に出ることを見越していたので、それは予想の範囲内だ。
 国が正式に発表したのは、噂が広まりすでに事実として認定されつつあったことと、誇張された話まで出回り始めていたためだ。
 ちなみに、情報が発表されたのが、氾濫が起こる数日前だったのはただの偶然だ。
 なにしろ、人にはモンスターの行動原理など分からないので、氾濫が起こる日を正確に計ることなど不可能なのだから。

 モンスターが大量に森から出て来るのを見た麓の町の住人たちは、生まれて初めてみるその光景に恐れおののいていた。
 そこには、人の世にこのようなことがあっていいのかという思いがあった。
 そして同時に、もっと頻繁にこのようなモンスターの氾濫を経験している大陸があることを思い出していた。
 それはあくまでも南大陸に住む住人たちにとっては他人事だった。
 だが、この世界に生まれた者たちは、いつどこでこのようなモンスターの氾濫に襲われてもおかしくはないのだということも実感させられていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 大量のモンスターが森からあふれ出て町を目指していたその頃。
 リクたち『烈火の狼』のメンバーは、森の中にいた。
 この周辺のモンスターを指揮しているであろうリーダー種を狩るためである。
 モンスターの氾濫は、リーダー種さえ狩ってしまえば、あとは烏合の衆となる。
 勿論、数は脅威になるのだが、統制が取れていないモンスターの群れは、取れているものよりは楽に狩れることをわかっているのだ。
 これは、セントラル大陸での長年の経験であり、クラウンがこれまでに蓄積してきた知識の一端でもある。

 森の中で襲い掛かるモンスターを振り払いながら、リクたちはある結果を待ち望んでいた。
 そして、ついにその瞬間がやってきた。
「見つけたぜ! 予想通りの方向だ!」
 索敵担当のアンヘルからの報告に、リクは思わず心の中でガッツポーズを取っていた。
 なぜなら、リーダー種を先に叩く場合は、まず見つけることが一番大変な仕事になるためだ。
 リーダー種がいる場所を見つけてしまえば、あとはそれに目指していくだけなのだ。

 ある意味で一番の山場を越した『烈火の狼』は、アンヘルの指示した方向へただただ愚直に進み始めた。
 勿論、氾濫が起こっている以上、リーダー種も同じ場所にいるわけではない。
 相手が移動していることを予想したうえで、アンヘルも指示を出している。
「いた! あそこだ!」
 アンヘルのその声に、メンバーたちの気合の入った声があたりに響いた。
 ここまで来れば、敵が近付いてきていることをリーダー種もわかっているので、今更隠す必要はない。

 
 リーダー種に近付くまでの戦闘は、これまでの『烈火の狼』の経験をもってしても熾烈を極めた。
 向こうも近付かれたら終わりだと思っているのか、単に戦闘本能なのか、簡単には近づけさせようとはしない。
 それでもリクたちは、着実に向かってくるモンスターを葬って行き続けた。
 すると、減っていく手下たちに、ついにリーダー種が限界を迎えたのか、辺りにリーダー種の咆哮が響いた。
 その咆哮に、リクたちを襲っていたモンスターが、一気に襲ってくるのを止めて、少し離れた場所に引いて行った。
 そして、それを確認するかのように、リーダー種が悠然とした様子で、リクたちに近付いてきた。

「いいねえ。自分で決着をつけようってのかい? そういうのは嫌いじゃないね」
 近付いてくるリーダー種を見ながら、アンヘルが半ば楽し気な調子で言っていた。
 他のメンバーたちも同じような気持ちなのか、それとも単に続いていた戦闘で気分が高揚しているのか、楽し気な表情を浮かべている。
 それらを確認して大丈夫だと判断したリクは、リーダーらしくメンバーに声をかけた。
「行くぞ!!!!」
 その声が合図になったかのように、ついにリーダー種との戦闘が始まった。

 今回『烈火の狼』が相手にすることになったリーダー種は、所謂オークが変化した種だった。
 さすがにリーダー種だけあって、通常のオークとは比べ物にならない強さがある。
「ったく! あれだけの図体で、どうしてこんなに素早い動きができるんだよ!」
 アンヘルが思わずそうこぼしてしまうほど、そのリーダー種はオークとは思えないほどの素早さで木の丸太を振り回している。
 持っているのがただ丸太だと言っても侮ることはできない。
 というよりも、わずかでもその丸太に触れてしまえば、重大な怪我を負ってしまうだろう。
 何とか耐えられるのは、普段からタンクの役目をしているゲレオンくらいだ。
 それでも数度の攻撃を喰らってしまえば、戦闘に加わることは不可能だろう。
 勿論、一流の冒険者は回復の手段もそろえているので、すぐに戦線離脱とはならないのだが。

 お互いに実力が拮抗して、戦闘が長引くかと思われたが、意外に決着は速く訪れた。
 というのは、オークのリーダー種が、決着がつかない戦闘にじれたのか、リクたちにとっては大きな隙を見せたのだ。
 その隙を見逃さず、リクが魔法で一気に身体能力を高めて、急所に一撃を放った。
 そして、その攻撃がオークにとってはクリティカルな一撃となった。
 リクの攻撃が当たった部分から、大量の血が噴き出している。
 だが、それでもメンバーたちは油断することなく身構えている。
 高ランクのモンスターほど、決死の攻撃とばかりに追い込まれてから強力な一撃を繰り出してくるものが多いためである。
 ただ、さすがにオークにとってはリクの一撃は、どうしようもないものだったらしく、すぐにその場に倒れ込んだ。

 
 これで、リクたちは見事にリーダー種の一体・・を片付けたということになる。
 だが、今回の氾濫は、大氾濫といわれているだけあって、リーダー種が一体だけとは考えられていなかった。
 とりあえずリクたちは、リーダー種を倒したことを報告しようと町の方角に向かって、周辺のモンスターを蹴散らしながら進み始めた。
 もちろん、ただやみくもに進んでいるわけではなく、出来るだけモンスターが薄い場所を狙って移動をしている。
 ただし、氾濫の最中に完全にモンスターを避けて移動することなど不可能なので、たびたびモンスターとの戦闘が起こっているのだ。

 ところが、このリクたちの移動は、予想外の相手によって阻まれることになった。
「父上、突然どうしたんだ?」
 リクが突然鳴った通信具に出て、「父上」と言うと周囲にいた仲間たちが身を固くした。
 リクの父親が誰であるか、よくわかっているからの反応だった。
『いやー、ごめんね。今から麓の町に急いで戻ってもらってもいいかな?』
「……いま、戻っている最中だが、緊急の要件か?」
『そうなんだよね。ちょっと、大物のリーダー種の一体を逃しちゃってさ』
 まるでゴブリンの一体を逃したかのような気楽さにめまいがしたリクだったが、なんとかその場では倒れないように踏ん張った。
「それは大事じゃないのか?」
『大事だね。でも、ちょっとこっちも手を離せない用事があってね。ミツキをそっちにやるから、ちょっと転移で飛んで急いで駆けつけてね』
 考助はそれだけを言うと、一方的に通信を切ってしまった。
 通信の背後から聞こえてくる音から察するに、忙しいというのは間違いではないようだった。

 そして、一山超えたリクたちには、さらなる試練がまさしく神から与えられることになったのである。
リクたちの戦闘シーンでした。
何気に「塔の管理をしてみよう」では、貴重な(?)戦闘シーンですw
でも、長引かせません!

最後は考助から何やら押し付けられたので、リクたちの戦闘はまだまだ終わりません。
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