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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(6)意味のない会議?

 南大陸で大氾濫の可能性ありという情報は、クラウン内ではまず高ランク冒険者に共有されることとなった。
 彼らには山脈全体の調査をしてもらわなければならないし、氾濫がおこったとなれば実際に先頭を切って動くことになるのはわかっているためだ。
 この場合の高ランクとはBランクとAランクを指している。
 セントラル大陸内で活動している高ランク冒険者は、誰よりも氾濫の危険性をよくわかっているので、不用意に情報を漏らすようなことはしない。
 また、そういうメンバーだけが高ランクになれるということもある。
 高ランク冒険者が機密性の高い依頼を受けるのはさほど珍しくないので、依頼を受けたことを他には言わずにいなくなったことは、ごく自然に受け止められていた。

 ただし、今回の調査にお呼ばれしなかった冒険者たちにも、勘の鋭い者や分析力に優れている者もいる。
 そうした者たちのなかは、高ランク冒険者が一斉に依頼を受けて、しかもセントラル大陸以外の大陸に出向いているというところまで掴んでいる者もいた。
 だからといって、そのことに対して騒ぎ立てる者は一人もいなかった。
 流石にそれだけの規模で高ランク冒険者が動いていれば、なにが起こっているのか察することは容易なためだ。
 しかも、この段階でクラウンが情報を伏せている理由も理解できる。
 だからこそ彼らは口を閉ざして、日常通りの行動を取りながら、いざというときのために準備だけは怠らないようにしているのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 アマミヤの塔にいる一部の冒険者たちが牙を磨いている最中。
 実際に南大陸へと派遣された冒険者たちは、続々と報告を上げていた。
 まず最初の頃に情報が上がってきたのは、山脈の麓――氾濫が起きていると思われるモンスターの集団の表層を調べていた冒険者たちのものだ。
 これで分かったのは、幸いにも氾濫は山脈全体に及んでいるわけではなく、北側だけで起こっているということだった。
 ついでに、山脈の北側の三分の二程度の規模だということもわかった。
 それでも山脈自体が大きいので、氾濫の規模は普通に(?)大氾濫と呼んでいい物だと断定し、さらに最低でも数千のモンスターが出てくると予測された。
 とはいえ、正確な数は、さらに詳しい報告がこなければ判断ができないのだが。

 その情報は、ガゼランの口からクリストフ国王によって集められたそれぞれの国の代表に語られた。
「――というわけで、厳重に警戒する範囲は、この辺りまでになります」
 この時点で、氾濫に直接関係する国の数は八になると予想されている。
 ただし、だからといってその周辺の国がまったく関係ないと言えるかといえば、そうではない。
 なにしろ、それぞれの国でモンスターの氾濫が防げなければ、そのまま別の国になだれ込む可能性が高いためだ。

 自分の報告に安堵の表情を見せた代表者に、ガゼランがそう釘を刺すとあからさまに顔色を変えた。
「なぜだ!? 吾らには関係ない! それぞれの国で押さえればいいだけではないか!」
 中にはそんな馬鹿な主張する代表者もいた。
 流石に、その台詞を言った代表者は、周囲からいつくかの白い目を向けられて肩身の狭い思いをすることになるのだが。
 当然、白い目を向けているのは、今回当事者となることがわかっている国々の代表者たちだ。

 それはともかくとして、他の面々の顔を見れば、実際に言葉にはしなくとも、似たようなことを考えている者たちがいることはわかる。
 なぜなら、具体的な援軍などの話になると、消極的だったり及び腰になっていたりするためだ。
 そんな会議の様子をガゼランは白けた様子で見ていた。
 いくら氾濫の数が少なくて、その脅威が肌で感じることができないにしても、あまりにもひどすぎると考えているのだ。

(やれやれ。こんな面倒な会議に出るくらいなら、実際に現場に出て指揮を取りたいくらいだがな)
 というのがガゼランの本音だ。
 ただし、クラウンの冒険者部門長という立場になってからすでに二十年以上が経っている。
 腹立たしい思いとは裏腹に、表情に出さないようにすることはごく当たり前にできる。
 それに、ガゼランにはこの会議でまだやるべきことが残っていた。
 だからこそ、このばかばかしい茶番にも付き合っているのである。

 そして、ついにその目的が果たせる出番がやってきた。
 それは、各国の代表が各冒険者ギルドにどれくらいの人員が出せるのかを話し出したときのことだ。
 他のギルドの代表が黙り込んだのを見て、率先してガゼランが言葉を発した。
「まず言っておきますが、うちは支部を置いている国にしか冒険者を出せませんので、覚えておいてください」
「な、なぜだ!?」
 ガゼランの言葉に反応したのは、支部が置かれていない四つの国の代表だった。
 実際に驚きの言葉を発したのはひとりだったが、他の者たちも隠すことなく驚きの表情になっていた。

 そんな彼らに、ガゼランは肩をすくめた。
「いや、なぜもなにも。同盟も何も組んでいない相手と一緒に戦争をすることはできないのでは? やったとしてもとても連携しているとは言えないでしょう?」
 なぜそんなことも分からないんだという当たり前の言葉に、軍関係者だと思われる者たちは黙り込んだ。
 それで収まらなかったのは、普段机上でしか物を見ていない事務方の者たちである。
「たかがモンスターを相手に、なにが連携だ! 戦力を出し渋って我らを困らせるつもりか!?」
 そんなことを言ってきた相手に、今度こそガゼランは盛大にため息をついて見せた。
 なぜそんな思考になるのか、まったく分からなかったのだ。

 相手がなにを考えているのかわからなくても、会議に出ている以上は相手にしなければならない。
「そもそも転移門がない状態で、どうやって貴方の言う妄想の戦力を送り込むのですかねえ?」
 口調が崩れてきているが、勿論これはわざとだ。
 相手にとある台詞を言わせるためのものだが、果たして見事に何人かを釣ることができた。
「其方は、私たちを馬鹿にしているのか! たかが冒険者風情が!」
 ひとりがそう言うと、それに同調するように、次々と他の面々も似たようなことを口にし始めた。

 それを聞いていた一部の者たち――南大陸の冒険者ギルドの面々は、はっきりと顔色を変えて、クリストフを始めとした何人かの国の代表者は、額を抑えたり顔には出さないまでも、内心で毒づいていた。
 そして、それらの言葉を直接言われたガゼランといえば――、
「そうですよね。やはり大陸全体に及ぶような危機には、その冒険者風情は手を出さない方がいいと思われます。ですので、やはりご自分たちだけでどうにかしてください」
 まんまと自分の幼稚な作戦に引っかかった者たちに呆れながら、ガゼランはそう言って、これ以上は発言することはないと言わんばかりの態度で一同を見回すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ガゼランが現れるのを待っていたかのように、補佐のひとりが近寄ってきた。
「いかがでしたか?」
「おうよ。問題ないぜ。ばっちり言質を取ってきた」
 ガゼランはそう言いながら懐からとある(・・・)魔道具を取り出して、ぽいと投げた。
 その魔道具には、先ほどまで行われていた会議がはっきりと記録されている。

 ガゼランが、あんなどうでもいい会議にわざわざ出席したのは、支部がない国には援助はしませんよという言質を取るためだったのだ。
 そしてその作戦は、見事に上手くいったと言える。
 氾濫が発生してそれらの国は見捨てる行為になるが、いくらクラウンといえど人にも物にも限りがある。
 実際問題、クラウンが援助できるのは、支部がある範囲内だけと判断されていたのだ。
 結果としてガゼランは、会議でその範囲内で収まるように、見事に役割を果たしたと言えるのであった。
後でも書くと思いますが、会議の後で、支部がある国々の代表とは別個で話をしています。

会議の内容を記録してあることは、まだ他には知らせていませんが、それが使われないことを願います。
それにしても、一部の代表者たちはあほすぎる……気がしましたが、このままにしておきます。
私たちの世界でいえば、地震のない国々に津波の脅威を知らせるようなものでしょうかね?
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