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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(5)本部でのやりとり

 クリストフ国王への報告を終えたリクは、その足でクラウン本部へと向かった。
 スミット王国王都に支部があるため、本部との距離的な制約は存在していない。
 他国間を移動することになるので、ある程度の制約はあるが、Aランクであるリクたち『烈火の狼』にとっては、関係のない話だ。
 転移門を使って本部に戻ったリクたちは、すぐさま本部長のガゼランへの面会予約を取った。
 しかも、扱いは緊急でといってある。
 こうした無茶が通るのも、クラウンの冒険者部門が、ランクを重要視しているがゆえの結果である。

 リクたちが受付で面会を依頼したときは、先約があったらしくリクたちは別部屋で待たされていた。
 それでも、緊急でと言ったことはガゼランの耳には入ったらしく、急いだ様子でリクたちが待たされている部屋に入ってきた。
「おう。お前さんたちが緊急の連絡とは珍しいな。なにがあった? 確か、スミットでの調査をしていたはずだよな?」
 流石に現役上がりだけあって、ガゼランは無駄な挨拶は省いてすぐに本題に入った。
 しかも、部屋に来るまでに、きちんとリクたちが行っていた依頼のことまで調べていた。
「ああ。その結果だが、見事に大当たりだったな」
「ハア・・・・・・。できれば当たって欲しくなかったんだがな。対応が面倒だ」
 リクのその返答に、ガゼランは大きくため息をついた。

 セントラル大陸のように、大陸中に組織が根差していればモンスターの対応も一括してできるが、他の大陸のように支部が点在しているだけだと個別に対応するしかない。
 それだと、氾濫のような広範囲で起こるような災害には、不十分な対処しかできない。
 それに、いくらクラウンが連携して対応しようとしても、各国で足並みが揃わなければ十分な効果は得られない。
 そのためにも、氾濫が起こるであろう国との対応が非常に重要になる。
 ・・・・・・のだが、氾濫が起こることがまれな大陸の国々で、その認識があるかどうかは不透明としか言えない。

 ガシガシと頭を掻いていたガゼランは、探るような視線をリクたちへと向けて来た。
「それで? お前たちはどうする?」
「どうもこうもないな。とりあえずの依頼は終わった。あとは、次の依頼が無いかを探す・・・・・・」
「なんてことを許すはずがないよな?」
 リクの言葉をさえぎってニヤリとした笑みを浮かべたガゼランに、リクたちは揃って渋い顔になった。
「はあ。やっぱりそうなるか」
「当たり前だ。折角関わったんだから、最後まで残ってもらうぞ。まあ、知らぬ存ぜぬで安全圏にいたいのであれば、話は別だが」
 敢えて挑発するように言ってきたガゼランに、リクは無表情のまま・・・・・・であったが、他のメンバーが黙っていなかった。

「俺たちが逃げるはずがないだろう」とエディが言えば、「だよな」とアンヘルが返し、ゲレオンまでがそれらの言葉に頷いている。
 女性たちふたりはなにも言わなかったが、その顔でなにを言いたいのかは十分に察することができた。
 リクは、よっぽどここで、お前ら乗せられているぞと言いたかったが、それを言うと本当に逃げるように思われるので、言葉にするのだけは控えた。
 代わりにため息をつきながらガゼランを見た。
「・・・・・・だそうだ」
「なるほど。持つべきものは仲間だな」
 リクの返答に、ガゼランはクツクツと笑いながらそう返した。

 
 お遊びのようなやり取りをしたあとは、本格的に調査の内容を話し始めた。
 といっても、リクたちが調べたのは、スミット王国側の山脈だけなのでその地域のことしか話すことができない。
「・・・・・・そうか。となると、やはり山脈全体の調査が必要になるな」
 ガゼランの言葉に、リクが頷いた。
「ああ。しかも、広範囲にわたって、だな。・・・・・・一応、クリストフ国王は、他国に働きかけるとは言っていたが・・・・・・」
「どこまでまともに話を聞くかは、わからない、か」

 少なくともクラウン支部を置いている国は、比較的モンスターに対して危機感を持っているため、クリストフの話に耳を傾けるだろう。
 だが、それ以外の国は、氾濫など起こるはずがないと高を括ってしまう可能性もある。
 頻繁に氾濫が起こっているセントラル大陸からすれば信じられないような対応だが、残念ながら他大陸では、むしろそちらの方が普通の反応だったりするのだ。
 現に、支部を設置する際に、国を越えて動ける組織が必要だと訴えたりもしていたが、反応は鈍い・・・・・・どころか、冷笑さえもらってきた国もある。
 これだけの証拠が揃っているのに、なぜそんなに呑気なのかといえば、実際に氾濫が起こったとしても人が住む領域まで出てくることは少ないという認識もあるのだ。
 実際に、クラウンが、氾濫が起こるだろうと予測していた場所で、自然鎮火してしまった事例もいくつかあった。
 そういう意味では、まだまだ人は氾濫に対してよくわかっていないことがあるのだ。

 リクとガゼランの会話に、その場の全員がため息をついたが、だからといって状況が変わるわけではない。
 自分たちについては、必ず氾濫が起こるものとして対応していくしかない。
 それに、あれだけの状況が揃っていて、氾濫が起こらないとは考えにくい。
「複数のリーダー種が生まれている可能性があるから、同士うちの可能性も無いわけではないが、それだと森の中が、静かすぎたことが気になるからな」
 自分の考察を交えてリクがそう言うと、ガゼランも納得したように頷いた。
「確かにそれでは同士討ちはあり得ないだろうな。もしくは、山脈の別の場所で争いが起こっているか・・・・・・」
 結局のところ、山脈全体を調べないことには、詳しいことはわからないのである。

 予想だけをして話を進めても仕方ないので、ガゼランは決断を下した。
「仕方ないな。とにかくお前たちには別の場所の調査に行ってもらう」
「まあ、それはそうだろうな。他はどうするんだ? 間に合わないかもしれないぞ?」
「わかっているさ。当然、手が空いたパーティから送り込んでいく。・・・・・・話を聞く限りは、腕のいい索敵がいる所がいいだろうな」
 リクたちの話を聞く限りでは、もうすでにCランク程度では手に負えないほど事態が進んでいる可能性がある。
 それでは、調査をする意味がほとんどないのだ。

 ただ、そのガゼランの言葉にリクが待ったをかけた。
「いや。それなら、どの程度まで広がっているのかを調べることもできるだろう?」
「ああ、なるほど。確かに、それはありだな」
 今の状態では、正確な氾濫の規模もよくわかっていない。
 多少索敵の腕が落ちていても、どの程度の広がりがあるかくらいは調べることが可能なのだ。

 やることの方針が決まったところで、ガゼランが盛大にこの日何度目かのため息をついた。
「やれやれ。とんでもない出費になるな」
 リクたちの依頼は別にして、これからやろうとしている調査は、元になる依頼人がいないため、完全にクラウンからの出費になる。
 後から調査費と称して回収することも可能だろうが、どの程度戻って来るかは未知数だ。
「どうせ商人部門も巻き込むんだから、あまり関係ないよな?」
「まあ、そうなんだがな。・・・・・・いや、クラウン全体が考えれば、結局出費じゃねーか!」
 一瞬リクに騙されかけた(?)ガゼランが、途中で気付いてリクをにらんだ。
 氾濫が発生するとなれば、商人部門の輸送などでも関係してくるので、調査費という名目で金を引っ張り出すことはできる。
 ただ、どのみち「クラウン」というくくりで考えた場合には、大きな出費になることは間違いないのだ。

 シュミットも頭を抱えるだろうと予想していたリクは、一体どれくらいの損害になるのかと、他人事のように考えるのであった。
氾濫が起きたときは時間が勝負です。
とはいえ、裏ではお金のことも考えなくてはいけませんw
セントラル大陸では、ラゼクアマミヤからの保障があるので、あまり心配しなくていいのですがね。


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タイトル「異世界で魔法を覚えて広めよう」
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