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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(4)得た情報の共有

 リクたちは、森での調査結果を持って直接クリストフの元を訪ねた。
 といっても、相手は一国の国王のため、いくら依頼を受けている最中とはいえ、簡単に会える相手ではない。
 そもそも普段の対応としては、リクたちが依頼を受けているのはあくまでもクラウンなので、クラウンに報告をするのが当たり前なのだが、今回に限っては直接結果を報告するように言われていた。
 内容が内容のため当然ともいえるのだが、本来の冒険者部門の対応としては異例のものだ。
 一応、依頼を受ける際に、支部長の確認を取ってあるので問題ないが、本来であればクラウンの職分を侵していると取られても仕方ない。
 ただ、今回は、調査対象の場所がクラウン支部の範囲外であるために、たとえ報告をしても手の出しようがない。
 ついでにいえば、リクたちが受けた依頼は、支部ではなく本部から受けているというややこしいことになっているので、さらにこの問題をややこしくさせていた。
 結局、あとで本部に結果を報告にしなければならないが、何はともあれ依頼人本人へと報告をすることになっていた。

 クリストフへの面会は、事前に渡されていた目印を持って、まずは宰相へと目通りを願ってから果たされた。
 国王と対面するのに、この程度の手続きで済んでいるのは、それだけ今回の件が少なくともクリストフの中では重要だと考えている証拠である。
 そして、残念ながらそのクリストフの対応は、見事に当たってほしくない方向で当たってしまったことになる。
「――――それは、本当のことかい?」
 宰相と同じように険しい顔になって聞いてきたクリストフに、リクは苦しい表情で頷いた。
「・・・・・・残念ながら」
 本当であれば「冗談だ」といいたいところだが、残念ながら今回のような場合は、対応が遅れればそれだけ被害が拡大することになる。
 冗談だと言っている場合ではない。
 それに、目の前にいるクリストフは、この国のトップに立つ者なのだ。
 できる決断は、早い方がいい。

 ただし、それでも更に問題を複雑化させていることがある。
「それにしても、氾濫どころか、大氾濫の可能性があるとはね。予想以上すぎて実感がわかないね」
 弱気ともとれる発言をしたクリストフだが、宰相やリクが何かを言うよりも早く真剣な表情になった。
「わかった。とりあえず、この国でできる限りのことはしよう。国内は勿論、他国についてもね。といっても、他国はこちらから働きかけることくらいのことしかできないが」
 複数の国にまたがっている山脈で起こっている大氾濫は、それぞれの国で対処するのではなく、連携して対処しなくてはならない。
 一国で無事に対処が終わったとしても、他の国で対処が遅れて、結果的にモンスターの侵攻を抑えられなければ意味がないのだ。
 こういうときこそ国境を超えて対処ができる組織が必要になるのだが、残念ながら南大陸にはそうした組織はない。

 クリストフの台詞を聞いたリクは、憂慮するような顔になった。
「私たちもこのことは本部に伝えますが、どの程度対処できるか・・・・・・」
 今のクラウンは、敵対的な国以外の首都には支部を置いているような状況だが、それ以外に窓口が広がっているわけではない。
 とてもではないが、今回見込んでいるような大氾濫に対処できるようにはなっていないのだ。

 他国にどう働き掛けていくか考え込むクリストフに代わって、宰相が気になっていることを確認してきた。
「そういえば、大氾濫の可能性があることはわかったが、どれくらいの規模になるのだ?」
 大氾濫の規模によって、準備に必要な物資なども変わってくる。
 宰相にとっては、どうしても聞いておかなければならない事柄だった。
「それは、この国に限ってのことですか? それとも山脈全体で?」
 モンスターにとっては国境など関係なく山脈から出てくることになる。
 山脈全体から均等にモンスターが出てくるとは限らない以上、ある程度の推測にしかならないのだ。

 リクの問いに、宰相は一瞬考え込むような顔になった。
「むっ・・・・・・まずはこの国だけに限って聞いておこうか」
「さて、それはどうでしょうか。モンスターを率いているリーダー種がどの程度いるかにもよりますからね」
「待て。それは、もしかしなくてもリーダー種が複数いるということかい?」
 驚くクリストフに、リクは大真面目な顔で頷いた。
「私たちが調査した感じでは、ほぼ間違いなくそうだろうと予想します」
「なんてことだ」
 少なくとも南大陸の歴史の中で、ほとんどなかったような事態だと聞いて、クリストフが呆然となり、宰相に至っては顔を青くしていた。
 セントラル大陸以外の大陸にとっては、それほどまでに大氾濫とは縁がなかったのだ。

 落ち着かせるように一度大きく息を吸ったクリストフは、まっすぐにリクを見て来た。
「君の予想では、この大氾濫の規模はどの程度だと予想しているんだい?」
「・・・・・・そうですね。山脈全体で見れば、少なく見積もって千弱でしょうか」
 何しろ山脈全体の調査ができているわけではないので、正確な数字を出すことはできない。
「・・・・・・多めに見積もった場合は?」
「下手をすれば万を超えてもおかしくはないかと」
 自分たちが調査をした結果をもとに、リクはその数を出していた。
 ただしこの数字は大氾濫が山脈全体で発生していると仮定した場合のものだ。
 実際には、リクたちはスミット王国側しか調査出来ていないので、どの程度モンスターが発生しているかまではわからない。
 ひょっとしたらたまたまスミット王国側だけで発生している可能性もなくはないのだ。
 もっとも、リクたちは、その可能性は限りなく低いと考えているのだが。

 ただし、流石にリクたちも山脈全体に氾濫が広がっている可能性はないと思っている。
 そのため、万という数字はかなり多めに盛っている予想でもある。
 それでも、その数字はクリストフと宰相に強烈なインパクトを与えていた。
「・・・・・・早急に他国に働きかける必要があります」
「ああ、そうだね。直接私が通信できる国はいいが、それ以外の国は対処を頼む」
「畏まりました」
 クリストフからの指示に、宰相は青ざめた顔のまま返礼を行った。

 その顔は、そのまま駆け出していきそうであったが、まだリクたちから必要な情報は聞いていない。
 そのため宰相は、リクたちから事細かに話を聞いて行った。
 といっても、リクたちが今回調査した場所は、山脈のほんのごく一部のことでしかない。
 だからこそ、先ほどから半端な数値しか出すことができていないのだ。

「私たちもこれから本部に行きますが、正直あまりクラウンが根を張っていない場所のことなので、どの程度情報が集まるかは疑問です。恐らく詳細を調査する時間もさほど残されていないと思われます」
 本来であれば、これほどの規模の大氾濫が発生しているとなれば、細かい情報を得たうえで対処する必要がある。
 だが、リクたちが見て来た感じでは、いつ人の生活区域になだれ込んできてもおかしくないような雰囲気をしていた。
 できる限りの対処はクラウンでも行うだろうが、それが間に合うかどうかは未知数なのだ。
「わかっているよ。それはもう仕方ないだろう。今は、自分たちにできる最善を行っていく行くしなかないね」
 クリストフがそう締めくくると、宰相も同意するように頷いていた。

 リクとしては、セントラル大陸での対応と比べて、後手後手になっていることが歯がゆいが、いまそれを責めても仕方がないということもわかっている。
 とにかく、いま自分ができることは、得た情報を持って本部に駆け込むことくらいだろうと考えているのであった。
というわけで、皆様の(?)予想通り、大氾濫の発生です。

氾濫など起きないと甘く見て放置(というか氾濫という考えすら起きない)。

モンスターが大発生する。

氾濫(もしくは大氾濫)が起こる。

セントラル大陸以外では、上記パターンを歴史上、何度も繰り返しています。
大陸全体でも数十年に一度、当事者ともなれば何世代も起きないような自然現象を忘れてしまうのは仕方ないといえば仕方ないですが・・・・・・歯がゆいですね。
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