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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(3)森の調査

 森に入ってから一日と半日後。
 ギルと彼のパーティメンバーがピタリと足を止めた。
「ここらが限界だ」
 これ以上先に進んでしまえば、確実に辺りに生息しているモンスターに見つかってしまう。
 この数カ月で、何度も経験してきたからこそ分かる限界だった。
 正確には、この辺りで出てくるモンスターは倒すことはできる。
 だが、その討伐は、先のことを考えずに消耗品を使えば、という条件になるので、実質的に限界になるというわけだ。
 逆にいえば、この辺りのモンスターであれば、どんなに襲われても跳ね返すことが可能だいうことだ。
 腕のいい冒険者というのは、この限界の見極めが優れていなくてはいけない。
 なぜなら、それが生死に直結するためである。

 ところが、そのことが十分にわかっている『烈火の狼』の面々は、驚きの表情をギルたちに向けた。
 その反応の意味をすぐに理解したギルが、肩をすくめながら続けた。
「早すぎると思うか?」
「ああ。いや、あんたたちの実力がどうこうじゃない。むしろ逆だ」
「そうね。これまで一緒に森を歩いてきた限りでは、限界点が速すぎるわ」
 リクの言葉に同調するように、カーリも頷いている。
 実際、リクたちは、最低でも二日ほどは森の奥に行けるとにらんでいたのだ。
 それが半日以上も早く限界が来たということは、予想以上に森の状況が悪化しているということになる。

 その想像を裏付けるように、ギルが忌々しい表情になった。
「そう思うのも当然だろうな。実際、森がおかしくなる前は、まだ先に進めたんだ。それが、いまじゃあ、これだ」
「・・・・・・なるほど。アンヘル、頼んだ」
「あいよ」
 リクが短くアンヘルに仕事を頼むと、それ以外のメンバーが次々に荷を置き始めた。
「おい?」
 『烈火の狼』の突然の行動に、ギルとその仲間たちが当然疑問の表情になる。

 そんなギルたちに、リクが更に説明を付け加えた。
「今日はここに拠点を作る。まずは安全圏を確保してからさらに奥の調査を進める」
「・・・・・・なるほどな」
 リクの説明に、ギルは納得顔になって頷いた。
「それに、アンヘルは索敵担当だ。あいつならいまのこの周辺の状況も詳しく調べられるだろう。いまはその結果待ちだ」
 信頼している仲間の結果を待つ間、自分たちは安心して戻ってこれる拠点を作るという、冒険者としては基本中の基本の行動に、ギルたちもそれ以上はなにも言わずに、自分たちも行動を開始するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 リクたちが仮拠点に選んだ場所は、水場から歩いて三十分ほどの場所になる。
 水場から近すぎると、それこそその水場を利用するモンスターに襲われる可能性があるのだ。
 それに、いざというときは、魔法で水を出すこともできる。
 モンスターに襲われる可能性も考えてできる限り魔力の無駄遣いはしないようにしているが、水を確保できなかった場合はそんなことを言っている場合ではなくなる。
 水ひとつ汲むのも危険が伴うのが、冒険者の活動なのである。

 リクたちが着々と拠点づくりを進めている中で、早速アンヘルが偵察から戻ってきた。
「アンヘル、早いな」
「まずは報告と思ってな。だが、予想以上にまずいことになっていそうだぞ」
 その顔に、若干の焦りを感じさせているアンヘルに、リクは真剣な表情を向けた。
「それほどか?」
「ああ。たったこれだけの時間だけで、ゴブリン共の巣を三つほど見つけた。しかもそれぞれが中規模のだな」
「それは・・・・・・まずいな」
 ゴブリンが巣を作ること自体は珍しいことではなく、むしろよくあることだ。
 ただし、中規模の巣を狭い範囲に作っていると話が別になる。

 ゴブリンが巣を作るのは、縄張りを主張するためだが、基本的には他の巣の近くに作るようなことはしない。
 なぜなら、狩る物がかぶれば、当然争いに発展するためだ。
 ゴブリンの場合は、同族同士の争いも珍しくないのである。
 ところが、そのゴブリンが近距離で中規模の巣を作っているとなると、必ずそれらをまとめているリーダーのような立場の存在がいるということになる。
 それぞれにそうした存在がいることもあるが、それはそれで逆にまずいことになる。

 そのまずいこと(・・・・・)が起きているかどうかが、今回の場合は重要になって来る。
「・・・・・・キングはいそうだったか?」
 そのリクの問いに、他の者たちの視線が集まることがわかった。
 ゴブリンキングがいるとなれば、中規模の巣が三つ程度では済まないためだ。
 そのリクの問いに、アンヘルは首を左右に振った。
「さすがにそこまでは、これだけの時間じゃ確認できなかった。必要なら調べてくるが?」
「いや、やめておこう。明日、アンヘルには思いっきり働いてもらうからな。それに、この先の拠点にできそうな場所も調べてもらう必要がある」
「へいへい」
 ニヤリと笑って言ったリクに、アンヘルは肩をすくめた。

 ゴブリンの巣のことを調べるのも重要だが、リクたちの本来の目的は、この森の異変を調べることだ。
 はっきり言えばゴブリンだけに関わっていられないというのが本音だ。
 さらにいえば、キングがいない中規模のゴブリン巣であれば、リクたちであれば半日もあれば片付けられる。
 それよりは、先のことを考えて行動する必要があるのだ。
 それを考えれば、アンヘルがこの先忙しくなるのは目に見えているのであった。

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 ギルたちの限界点を進むことさらに一日後。
 モンスターに気付かれないように森の中を進んでいたギルが、ぽつりと呟いた。
「・・・・・・これがAランクパーティの実力か」
 自分たちの限界点を超えた場所だからこそ、上位ランクの実力がよくわかった。

 リクたちの行動は、緻密にして大胆というべきだろう。
 時にモンスターに見つからないように慎重に行動しては、またある時は襲い掛かってきたモンスターを一瞬で葬り去る。
 その後の処理に時間を掛けないのも、他のモンスターに見つからないようするするためだ。
 どの行動をとっても、それぞれのメンバーが一流の動きをしていることがわかる。
 ましてや、リクたちはギルたちという足手まといを抱えながら行動しているのだ。
 この場にいるのがリクたちだけであれば、もっと早く進むことができるだろう。

 初めて間近で見るAランクパーティの手際は、ギルたちに様々な刺激を与えていた。
 それがわかっているので、リクも敢えてギルたちにはなんの指示もすることなく、好きにさせていた。
 実際、リクたちにとっては、森に詳しい者たちがいるだけで十分なのだ。
 ギルたちにとっては、いまでは到底拠点を作ろうなんて思わない場所に拠点を作ったリクたちは、周辺の偵察に向かっているアンヘルの帰還を待っていた。

 そしてついに、リクたちが待っていた、別に意味では来てほしくない報告をアンヘルが持って帰ってきた。
「どうやら間違いないようだぜ」
 その報告を受け取ったリクは、盛大にため息をついた。
「そうか。それで? どれくらいに規模になりそうだ?」
「さてな。それを結論付けるには、他の場所からも侵入しないとだめだろうぜ」
 その言葉を正確に受け取ったリクは、当たってほしくない方向に事態が転んでいることを悟って、もう一度盛大にため息をつくのであった。
アンヘルは一体何を見つけたのか!?
・・・・・・は、はい。まるわかりですね。
恐らく皆様の想像は間違っていませんw
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