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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 南大陸での大騒ぎ

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(2)冒険者同士の話

 調査依頼を受けた対象の森の傍の町――エフェクに着いたリクたちは、早速情報収集を始めた。
 そもそも対象となっている森には、正式名称は付いていない。
 というのも、その森自体が複数の国にまたがっていることや、森林の一部は山脈にかかっているために、付近の町や村の住人たちは単に「森」とだけ呼んでいるのだ。
 国にとっても特に重要な資源が取れる森というわけではないので、呼称が付けられていない理由のひとつとなっている。
 そんな森のことが一番詳しいのは、やはり地元の冒険者となる。
 獲物を取るために日常的に森の中に入っているのだから当然だろう。
 そもそも、国に対して森の異変の話を持って行ったのは、その町にある公的冒険者ギルドだ。
 ただし、一応「公的」と名が付いているが、基本的に運営しているのは冒険者上がりの者たち(か受付嬢)なので、大した扱いを受けることが無かったのである。
 ちなみに、この町にはクラウンは存在していない。
 そのため、クラウンには森の異変についての情報は、まったく入っていなかった。

 他の仲間と別れてリクとカーリ、そしてダーリヤは、冒険者ギルドに併設されている酒場に顔を見せていた。
 女性ふたりを連れているリクに嫉妬の視線が向けられるが、リクは慣れた様子でそれらの視線を受け流しながら対象の相手へと近付いて行った。
「ちょっと聞きたいが、お前さんがギルかい?」
「・・・・・・いきなりなんだい?」
 リクの問いかけに、ギルはわずかに警戒の色を見せながら、肯定も否定もせずに三人を順番に見た。
 少なくともギルが覚えている限りでは、初めて会う相手なので、警戒するのは冒険者として当然の対応だった。

 最初から突き放すような対応をしてこなかったギルに、内心では好意的な感情を持ったリクは、店員を呼んでエールを注文した。
 勿論、その中にはギルの分も含んでいる。
「お楽しみのところ済まないな。是非ともあんたの話を聞かせてもらいたくてね。とりあえずいっぱいおごらせてくれないか?」
 冒険者にとっては、初対面の間柄で酒をおごるということは、情報をきかせてほしいということと同じことである。
 一応、冒険者流の挨拶を済ませたリクに、ギルはフンと鼻を鳴らした。
「確かに俺はギルだが、一体俺に何を聞きたい? 冒険者としての腕は、お前さんのほうが上だろう?」
 このギルの台詞で、周囲にいた一部の冒険者たちは、驚きの顔になっていた。
 それもそのはずで、ギルはこの町においては、第一人者といえるほどの強者なのだ。
 そのギルがはっきりと自分より上と言ったのだから、驚くのも当然だろう。

 そんな周囲の状況に気付いていながらリクは、特に気にした様子もなく話を続けた。
「俺の腕はともかく、どうしてもあんたの話が聞きたくてね。・・・・・・森の異変について話を上に持って行ったのは、あんただろう?」
 付け足されたリクの台詞を聞いたギルは、はっきりと顔色を変えた。
 それまでは、話半分に聞くような体勢だったのが、スッと目を細めて見極めるような視線をリクに向けて来た。
 その表情は、これまでとは違い、明らかに歴戦の冒険者のものになっていた。
「・・・・・・やっとお上もまともに動いてくれたか」
「残念ながらそうと決まったわけじゃない。少なくとも俺たちは一冒険者でしかないさ」
 ギルの言葉に、リクは軽く肩をすくめてそう答えた。

 そんなリクに、ギルはフンと鼻を鳴らしてさらに返した。
「それでも構わないさ。少なくとも、俺たちには手に負えないところまできているからな」
 その言葉の意味を瞬時に理解したリクは、スッと目を細めた。
「・・・・・・そこまでか?」
「ああ。少なくとも俺たちにとっては、だがね。それに、森がここまで異常な状態になるのは、俺が冒険者になってから初めてのことだ」
 ギルは、森の様子を思い起こすような顔になりながら、はっきりとそう言うのであった。

 
 ギルが――正確にはギルも含めたパーティメンバーが、森の異変に気付いたのは、三カ月以上前のことだ。
 最初は、ちょっとした環境の変化で、森の中のモンスターの勢力バランスが崩れて、出てくるモンスターの種類が変わっただけだと思った。
 これまでにもそうした異変はなかったわけではないので、今回もそうだろうと考えていたのだ。
 ところが、その異変は一月後にはさらに様子が変わることになる。
 森に入って狩ることができるモンスターが極端に少なくなった。
 ある程度の稼ぎを出すためには、さらに森の奥に入らなければならなくなったほどだ。
 これもすぐに収まるだろうと考えていたギルたちだったが、さすがにそんな状態がひと月以上も続くと、ただの異変とは思えなくなってきた。
 だからこそギルは、町で一番のランク保持者である立場を利用して、国に森の異変を伝えたのである。

 一通りこの場で話せることを話したギルは、リクが注文したエールをぐいと煽った。
 森の異変については、この町で活動している冒険者たちにとっては死活問題であるため、酒場にいた他の冒険者たちもいつの間にかリクとギルのやり取りに注目していた。
 そして、それを確認したリクは、若干重くなった空気を変えるように、敢えて明るい雰囲気を纏った。
「そうか。それは稼ぎが悪くなって大変だったな」
「フッ。いや、そうでもないさ。なにせ、森がない場所に関しては、まったく影響を受けていないからな」
「そうなのか?」
「ああ。森で異変が起きているのが不思議なくらいに、いつも通りだぜ?」
 ギルの言葉に、リクが考え込むような顔になった。

 リクが悩む表情を見せている間に、今度はカーリとダーリヤが交互に質問をしていく。
 例えば、森の中で出てくるモンスターの種類は変わっているか、などだ。
 かなり細かいふたりの質問にも、ギルは的確に答えていった。
 それだけでも、ギルが一流の冒険者と呼ぶにふさわしいことがわかる。

 一通りの質問攻めが終わったカーリとダーリヤを見て、リクが最後に締めるように言った。
「ありがとう。かなり参考になったよ」
「そうか。それはよかった。・・・・・・それで、実際はどうなんだ?」
 既に周辺の冒険者は息をひそめてリクの様子を窺っている。
 ギルも含めた彼らは、とっくにひとつの答えを持っていた。
 ただ単に、自分たちどころか一世代上の先輩冒険者すら経験したことのない事態に、明確な結論が出せないでいるのだ。

 周囲の視線を感じていたリクは、それをまったく気にした様子もなく、肩をすくめながら答えた。
「流石にこれだけだと答えを出すのは難しいな。あとは実際に現場を見てみないとな」
 そのごく当たり前の答えに、これまで張り詰めていた空気が僅かに緩んだ。
「そうか。いや、確かに、それはそうだな」
 納得して頷くギルに、リクはある提案をすることにした。
「そこで相談なんだが、あんたに・・・・・・いや、あんた方に、俺たちの調査に同行してもらえないか?」
「俺たちが? いや、だが、本当にいいのか?」
 リクたちが自分たちには及びもしない実力を持っていると確信しているギルは、戸惑いながらリクを見た。

 その視線を受けたリクは、当然という顔で頷いた。
「良いもなにも、むしろこちらからお願いしていることだ。森に詳しい冒険者がいれば、それだけ調査がはかどるからな。ただし、きちんと俺たちのいうことを聞いてくれるなら、だ」
 言外に、いざとなったら足手まといになる可能性もあることを告げたリクに、ギルは真顔になって頷いた。
「ああ。それは当然だろう。・・・・・・まずは仲間たちと相談させてもらってもいいかい?」
「勿論。仲間との話がまとまったら、宿に来てくれ。俺たちは――に泊まっているから」
「ああ、あの宿か。わかった。遅くとも明日中には答えを出す」
 調査に出るのが早ければ早いほど良いと理解しているギルは、リクに向かってそう言った。
 その言葉を受けて、リクは一度だけ頷いて、きちんと会計を済ませてから酒場を出て行くのであった。
再び考助の出番なし!

す、すみません。しばらくこの状況が続きます。
話の流れ的に、どうしてもリクがメインになってしまうのです。
まあ、これまでの話で、理由は察していただけるでしょうがw
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