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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その24)

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(10)浮遊島の行方

 天翼族が世界に現れてから二月ほどが経ったある日。
 管理層にトワが訪ねてきていた。
「そういえば父上、天翼族がどこにいるのか、わかっているのですか?」
「天翼族? いや、僕は知らないよ。敢えて聞くこともしていないし」
 以前に飛龍たちを使って移動したときは、浮遊島がどこに浮かんでいるのかは把握していたが、あれから日にちも経っているのでどこにいるのかは全く分からない。
 考助が尋ねれば、エイルは答えてくれるだろうが、敢えて聞く必要もないので聞いていないのである。

 考助の返答を予想していたのか、トワも特に表情を変えることなく頷いていた。
「そうですか」
「なに? 浮遊島がどこにあるのか、国でもわかっていないんだ」
 考助としては何気なく言ったつもりだったのだが、トワはそうは受け取れなかったようで、少しだけムッとした表情になった。
「・・・・・・そうなんですが、別にラゼクアマミヤだけではないですからね? そもそも、自由気ままに空を飛んでいるものを追い続けるのは、中々難しいのです」
「それはそうなんだけれど・・・・・・必要だったら船とかで追いかけられなかった?」
 国家規模になれば、交代要員も含めて船で追い続けることも可能だったのでは、というのが考助の認識だった。

 ところが、これに対して、トワは若干苦い表情になりながら首を左右に振った。
「ずっと海の上を移動していればそうだったのでしょうが、残念ながらそう上手いことは行きませんでしたよ」
「あれ? ということは、どこかの大陸の上空に行ったんだ」
「ええ。最初に入ったのは北大陸でしたね」
 世界で最初に浮遊島が侵入してくることになった北大陸では、大騒ぎになっていた。

 それはそうだろう。
 なにしろ、どんな攻撃能力を持っているかもわからない、ひょっとしたら敵勢勢力かもしれない巨大な島が、上空に侵入してきたのだ。
 場合によっては、侵略行為だと取られてもおかしくはない行動だ。
 そこで英断を下したのが、最初に浮遊島が上空を飛ぶことになった国家のとある王だ。
 その王は、相手が手を出してこない限りは、一切浮遊島に手を出すことを禁じたのだ。

 勿論、貴族たちの中には王の決定に反対する者も出た。
 それでも王は王権を使ってそうした者たちを黙らせて、浮遊島の移動をただ見守ることにしたのだ。
 結果としてはそれが正しい対応だった。
 というのも、その後に別の国の上空を移動した際には、その国の王が不用意に攻撃命令を出した。
 ところが、その空を攻撃する魔法やら空を飛べる魔法使いたちは、見事に撃退されることになる・・・・・・というよりも、近付くことすらできなかった。
 それどころか、手痛い反撃を喰らうことになったその国は、虎の子の対空兵力を激減させられる結果になったのである。
 それらの結果から、とりあえず浮遊島が上空を通過する際は、手出し無用というルールが世界中に広まったのだ。

 トワからそれらの話を聞いた考助は、いかにも天翼族らしい対応だと思いながら頷いていた。
「ふーん。で、北大陸を抜けたあとは?」
 考助の当然の疑問に、トワは軽く肩をすくめて答えた。
「途中で見失ったそうです」
「あらまあ」
 なんとも分かり易い結果に、考助も思わず気の抜けた返事をした。

 そもそもアースガルドの世界は、現在のところ大きな島も含めて、外側に陸地が見つかっていない。
 その理由のひとつに、現在の船の能力では行ける範囲というのが限られているからということがある。
 逆にいえば、その探索可能範囲を超えてしまうと、いくら船を多く持っている国家といえど、浮遊島を追いかけることは不可能なのだ。
 それに、いくらなんでも浮遊島の追跡のためだけに、全ての船を使うわけにはいかない。
 結果として、浮遊島の現在位置は、少なくとも国家間では行方不明ということになっているのである。
 ちなみに、当然どこかの大陸の上空に現れればわかるが、現在のところは発見されてない。

 トワから話を聞いた考助は、フーンと気のない返事をした。
「あまり興味がなさそうですね」
「うーん。というか、もしかしたら敢えて見つからない場所に行ったのかと思ってね」
 浮遊島はある程度自由意思で動かすことができる。
 であれば、そういうこともあり得るかなと考助は考えたのだ。

 察しの良いトワは、考助が言いたいことがたちどころにわかった。
「・・・・・・生活を安定させるため、でしょうか?」
「そゆこと。いくら簡単に追い払えるといっても、いちいち外からの対応に時間が取られるのが勿体ないってね」
 天翼族はこの世界に来たばかりで、食糧生産も含めて、まだまだ生活が安定しているとは言い難い。
 食料の安定供給さえできれば、外に目を向ける余裕もできるだろうが、しばらくは内に籠りたいと考えるのは当然だろう。

 さらにいえば、大陸から離れられる理由がもうひとつある。
「・・・・・・もしかしなくても、転移門、ありますね?」
 疑問形でありながら確信しているようなトワの言い方に、考助は素直に頷いた。
「うん、あるよ。でも、今のところ一度も使ってないけれどね」
 天翼族がこの世界に現れてから考助が浮遊島に行ったのは、最初のときと飛龍に乗って行ったときの二回だけだ。
「そうなのですか?」
「うん。今のところ手助けは必要ないみたいだね。というか、ここまで時間が経てば、特に外からの支援も必要ないんじゃないかな?」
 移住で一番厄介なのは、初期の頃にかかる負担だ。
 それを乗り越えれば、大きな事故などが無い限りは、安定させることができる。

 考助の言葉に、トワがうーむとうなった。
 最初の援助こそ天翼族と繋がるチャンスなのに、考助の言葉が正しければ、それが失われたということになる。
「たった二カ月でそんな成果が出ますか?」
「さあ? あくまでも予想だし。ただ、生活支援で連絡が一切ないことは確かだよ?」
「・・・・・・ということは、それ以外では連絡があるということですね?」
 トワの当たり前すぎる突っ込みに、考助は曖昧な笑みを浮かべた。
 天翼族から連絡があることは確かだが、一応一国の王であるトワに漏らしては、少しばかり不公平にすぎる。
 もっとも、こんなに気楽に情報を漏らしている時点で、不公平だといわれればそれまでなのだが。
 ちなみに、考助が天翼族から貰っている情報は、さほど頻繁に来ているわけではない。
 それに、内容も眷属であるゴブリンの話だったり、浮遊装置に関してのものだったりするので、浮遊島がどこにいるのか考助が知らないというのは嘘ではない。

 考助からこれ以上の情報を得ることは不可能だと判断したトワは、ひとつだけため息をついた。
「そうですか。まあ、手の届かないところで、体制を整えているのではという話は出ていますからね」
「それはそうだろうねえ」
 外部からの一切手の届かないところに行けるのであれば、誰でもそうするだろう。
 他と接触を始めるのは、生活の基盤が安定してからだと考えるのは、当たり前のことだ。

 どうにか天翼族と交流を持とうと、それぞれの国ではあれやこれやと考えているらしいが、今のところ有効的な手は打たれていない。
 そもそも対象である浮遊島すら見つけられないのだからどうしようもないのだ。
 すでに、いないものを相手にしても仕方ないと、諦めている国も出ているくらいだ。
 少なくとも、ほかの国を出し抜いて、一国が天翼族と交流を持つことになるのは当分ないだろうと、考助の態度を見てそう考えるトワなのであった。
行方不明中の浮遊島でした。
ちなみに、コウヒ&ミツキは、行こうと思えば転移で行けます。
以前訪問したときに、こっそりとマーカーをつけていますw
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