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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その24)

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元日(大晦日)特別篇

今話は敢えて時間系列を気にしないように書いています。
いつぐらいの時の話なのかは、それぞれで想像しながら楽しんでください。
(作者自身も決めていないので、感想で聞かれても答えられませんw)
「――――――――5…4…3…2…1! ・・・・・・皆、あけましておめでとう! 今年もよろしく!」
 新年を祝う考助の挨拶が、管理層のくつろぎスペースに虚しく(・・・)こだました。
 なぜなら他のメンバーたちの反応が、呆気にとられたものだったためである。
「・・・・・・コウスケ。新年の挨拶はまだ(・・)わかるのじゃが、その前のカウントダウンはなんじゃ?」
 少しばかり呆れたような視線を向けて来たシュレインに、考助が驚いた顔になった。
「えっ!? いや、何だと言われても、年越しを待つためのもの?」
 ここで大事な前提がある。
 アースガルドの世界には、正確な秒数まで計るための時計は存在していない。
 それ故に、年越しを見守るためのカウントダウンも当然存在していないのだ。
 あるのは、間違いなく年が明けたとわかる日の出後の挨拶くらいである。
 勿論、年が明けた日は、各所で盛大に祝い事が行われる。

 そんなわけで、真夜中の日も出ないうちから考助がいきなり新年の挨拶をし出したことに、他の面々が呆気にとられたというわけだ。
 ちなみに、考助はこの世界に合う時計を持っているわけではないので、完全に勘と気分だけでカウントダウンをしている。
 この世界の住人から見れば傍から見れば痛い人だが、既に考助が元別世界の住人だったことを知っているメンバーは、またいつものかという感想を持つだけだった。
「年越しは、日の出を待つものではないのですか?」
 アースガルドの住人らしいシルヴィアの疑問に、考助は一所懸命に元の世界の年越しの説明を行った。
 といっても、正確な時間を計ることができる時計から話をしなければならなかったので、それなりに時間がかかった。

 ようやく考助が行ったカウントダウンの意味が分かった一同は、納得の表情になった。
「正確な時間を測って、皆と同時に新年を祝うのね。中々楽しそうな祝い事ね」
「うむ。だが、こっちでやるとなると、時間を合わせるのが難しいな」
 コレットの言葉に同意してフローリアが頷いたが、すぐに難しそうな顔になった。
 そもそも時計が無いこの世界では、一気に時間を合わせて祝い事をするということは極めて難しい。

「コウスケさん、時計を作ることはできないのですか~?」
 ピーチから期待するような視線を向けられた考助だったが、残念そうに首を左右に振った。
「さすがにそれは無理だねえ。あれって、完全に職人の世界の物だし」
 アースガルド基準でいえば、考助は職人の部類に入るのだが、それはあくまでも魔法陣(魔道具)に関しての話だ。
 精密機器の部類に入る時計は、考助が作れる物の範疇外だ。

 考助の回答に、一同が残念そうな顔になった。
 折角なので、一緒に新年を祝えるイベントを作れないかとどこかで考えていたのである。
 その様子に、考助が思案顔で提案した。
「別に全世界で合わせなくても、良いと思うけれどね。実際、向こうでもバラバラだったし」
 その考助の言葉に、他の面々が不思議そうな顔になった。
 先ほどと言っていることが違っているので、おかしいと感じたのだ。

 そして考助は、今度は時差に付いての説明をする羽目になった。
 平面世界であるアースガルドでは、時差の概念がないので、先ほど以上に説明するのに時間がかかった。
 世界が球体であるということから説明しないといけないので、こればかりは仕方がない。
 どうにかこうにか説明を終えたときには、考助はぐったりとしていた。

 なんとか考助の説明を理解したフローリアは、頷きながら考え込むような顔になった。
「なるほどな。確かにそれであれば一緒に合わせるほうが無理だろうが・・・・・・こっちではどうなんだろうな?」
 基本的に世界中で同じ時間の進み方をしているアースガルドの場合は、世界共通の祝い事をするときは、ある程度時間を合わせて行っている。
 ただし、繰り返しになるが時計が存在していないので、ぴったり同時に祝うことはないのだ。
「神殿の祝い事でも完全に一緒に合わせることはないのですから、そこまで考えなくてもいいのではないでしょうか」
 そう言ったシルヴィアの言葉に、他の面々が納得の表情になって各々頷いている。

 なんとなく新年のカウントダウンがする流れになっているように思えた考助が、慌てて口を挟んだ。
「いや、別に、無理にこの世界で新年のカウントダウンを実行しなくてもいいんじゃない?」
 考助がそう言うと、他の面々は顔を見合わせた。
「・・・・・・そういえばそうじゃの」
「うむ。なんとなくそういう流れになっていたな」
 と、シュレインとフローリアが納得すれば、
「だったらなぜ考助はあんなことをしたの?」
「やっぱり祝いたかったからではないでしょうか?」
「昔を思い出して、懐かしくなりましたか~?」
 と、コレット、シルヴィア、ピーチが疑問を呈する。

 鋭い突っ込みに、考助が「ウッ」と詰まったのを見て、いよいよ真打が登場してきた。
「主様が衝動的に行った事なので、恐らくそこまで考えていないかと思われます」
「そうよね。本気で考えているのだったら、もっと前準備するものね」
 コウヒとミツキの鋭い突っ込みに、考助はくつろぎスペースのソファに完全撃沈することとなった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「まあ、それはともかくとして、せっかくだから新年を祝ってしまおうか」
 撃沈している考助を見ながらフローリアがそう提案すると、コレットがそれに乗ってきた。
「そうね。それが良いわね」
「そうじゃの。それじゃあ、シルヴィア頼む」
 こういうときの宗教的な(?)出番は、基本的にシルヴィアが音頭をとることになる。
「そうですか? それでは、失礼して――せーの!」

「皆さま、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」(一同合唱)
というわけで、お正月編でした。
去年は祝ってなかったのと、なんとなく思いついたので書いてみましたw

それでは、ご挨拶をば。
昨年中は「塔の管理をしてみよう」をご愛顧くださりまして、大変ありがとうございました。
今年もご贔屓いただきますよう、よろしくお願い申しあげます。
ではでは。

※今日はもう一話、いつも通りの時間に更新いたします。
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