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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その24)

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(2)飛龍のために

 第八十層にいる飛龍たちは、現在二百体ほどの群れを作って生活している。
 ただし、群れといっても階層の中央にある大きな山を生活の場として、四方に広がる平原にそれぞれ狩りをしに行くと言った感じである。
 考助が管理している塔では唯一、塔の召喚陣による召喚ではなく、野生の飛龍だったコーが眷属となり群れを率いていたりもする。
 だからといって何か違いがあるというわけではないのだが。
 召喚陣からの餌やりがあるために、飛龍たちが飢えることはないのだが、広さ的にはいまの数が限界だと考助は考えている。
 というのも、第八十層の平原にいると、結構な頻度で空を飛ぶ飛龍を見ることができるのだ。
 普通の場所では、ここまで頻繁に飛龍を見ないことを考えれば、大発生していると言ってもいいほどなのだ。
 勿論、飛龍の巣とされるような場所であれば、そうしたこともあるのだが、そういった自然の場所はごく稀である。

 そんなわけで、第八十層のテコ入れはもうやめてしまっている考助だが、暇を見つけてはコーに会いに来たりしている。
 目的は、コーに乗って空の散歩をするためである。
「・・・・・・やっぱり気持ちいいなあ」
「きゅお」
 コーの背の上で独白する考助に、コーからの返事が返ってきた。
 考助の後ろにはコウヒとミツキが同じように飛龍に乗って飛んできているが、さすがにそこまで言葉は届かない。

 コーはコーで考助との久しぶりの飛行とあって、楽しそうな感情が伝わってきていた。
 この飛龍との感情のやり取りも、他の種族にはない独特なもので、考助はコーとの空の散歩を気に入るひとつの理由となっている。
「お? コー、今日はあそこで休もうか」
「きゅお」
 空を飛んでいて、休むのにちょうどよさげな平原を見つけた考助がそう指示を出すと、コーはいつものように短く返事を返してきた。
 その後、念話でコウヒとミツキに連絡を取って、しばしの休憩となった――。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「――それで? 休憩になったのはわかったが、なぜ帰ってきたミツキがバタバタしているのだ?」
 第八十層から考助たちが帰ってくるなり、なぜかミツキが台所に走り出したのを見て、フローリアが不思議に思ったのか、なにがあったのかと訊ねてきた。
 そこで、考助が休憩したところまでを話すと、重ねてそう聞いてきた。
「いや、コーたちと一緒に休んでいるときに、何気なく久しぶりに長距離の移動をしてみたいなと呟いたらね」
「・・・・・・ああ、なるほど。コウヒとミツキが張り切りだしたわけだな?」
「まあ、簡単にいえばそういうことかな?」
 考助の返答が曖昧な言い方になったのは、フローリアが言った二人以外にも、コーたち飛龍が騒ぎ出したからだ。
 どちらかといえば、コウヒとミツキよりも飛龍たちのほうが乗り気になっていたと言っていいだろう。

 その状況が目に浮かんできたフローリアは、
「その状況でそんなことを言えば、飛龍たちが騒ぐのも当然だな。というか、私も一緒に行きたいぞ?」
「同感です」
 相乗りしてきたフローリアに同調して、それまで黙って話を聞いていたシルヴィアが混ざってきた。
 フローリアにしてもシルヴィアにしても飛龍には乗れるので、空の散歩の気持ちよさを良く知っているのだ。
「それで、どこに行かれることにしたのですか?」
「うん。せっかくだから、アマミヤの塔の麓から浮遊島を目指そうっていう話になってね」
 考助の答えに、シルヴィアが納得したような顔になって台所を見た。
「ああ、なるほど。だからミツキさんが、急いで準備しているのですね」
「うん。僕は別に急がなくていいって言ったんだけれどね」
 考助としては、ちょっとした暇つぶしのつもりで言ったのだが、話をするうちにちょっとした遠征の様相を呈してきて、逆に戸惑っているのだ。
 だが、せっかくコウヒやミツキが珍しく乗り気になっている上に、少ししか構ってやれなかったコーたちの気晴らしになるだろうと、止めるつもりはない。
 さらにいえば、考助自身も楽しみになってきているのだ。

 ここで、考助の話を聞きながら何度か頷いていたフローリアが、チロリとシルヴィアを見た。
 その視線を受けたシルヴィアは、コクリとフローリアに向かって頷く。
「その旅だが、私たちもついて行っていいか?」
「え? いや、別に構わないけれど、本当に飛龍を使って空を飛んで行くだけだよ?」
 飛龍の旅は、馬車の時と違って、ずっと空を飛んでいなければならないため暇つぶしをすることもできない。
 飛龍に乗って空を飛ぶのは、意外に体力を使うので、どちらかといえばきつい旅ともいえるのだ。
「わかっているさ。ただ、私たちも飛龍を思いっきり飛ばしてみたいと思っていたからな」
「それに、どうせでしたら浮遊島をきちんと見てみたいです」
 フローリアの言葉に、シルヴィアが付け加えて来た。
 飛龍に乗って浮遊島を見る機会などそうそうないので、せっかくだから考助に便乗したいということもあるのだ。

 シルヴィアとフローリアの言葉に、考助もようやく頷いた。
「まあ、別に無理に止めるつもりはないからいいけれど、本当に大丈夫?」
 アマミヤの塔の麓から浮遊島に行くとなると、数日かかっての飛行になる。
 その間体力を使いっぱなしになるのだ。
 考助が心配するのも無理はない・・・・・・のだが、逆にフローリアが僅かに呆れたような顔になった。
「体力に関しては、私の方が上だと思うのだがな?」
「うぐっ!? い、いや、まあ。それはそれ、これはこれ」
 まったくもって疑いようもない事実に、考助は言葉を詰まらせながら、そっぽを向いた。

 考助とフローリアのやり取りをくすくすと笑いながら見ていたシルヴィアが、まあまあと間に入った。
「私たちも行くとなれば、準備もあるでしょうし、ミツキさんにきちんと伝えましょう?」
「ああ、そうだったな。・・・・・・ところで、私たちが行くことは天翼族は許可するんだろうな?」
「うん。多分、大丈夫だと思うけれど、どのみち今から連絡してみるから、そのときに確認してみるよ」
 天翼族のエイルには、通神具を渡してある。
 それを使って前もって連絡しておけば、飛龍で向かっても問題はないのだ。
 まさか、いきなりこんな使い方をするとは思っていなかったが、備えあれば憂いなしといったところだろう。

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 早速連絡を取った考助だったが、エイルはすぐには出てこなかった。
 浮遊島という新しい環境に移ってきた天翼族が忙しいということはよくわかっていたので、考助としては特に気にしていなかったのだが、通信に出たエイルはひどく恐縮していた。
「遅くなって申し訳ありませんでした!」
「あ、ああ、いや、そんなに気にしなくてもいいから」
「いや、しかし!」
 さらに謝ってきそうな気配を察した考助は、さっさと話題を変えることにした。
「それよりも、今度そっちに行きたいと思っているのだけれど、いいかな?」

 考助が問いかけると、なぜかしばらくの沈黙があった。
「・・・・・・エイル?」
「はっ!? あ、いえ。も、勿論です! 出来る限り、歓迎いたします!」
「ああ、うん。良かった。――それでね」
 エイルの反応に少しだけ首を傾げた考助だったが、その後はすっかりそのことも忘れて、このあとの予定について話をした。
 結局、このときの違和感について考助が思い出したのは、浮遊島に着いてからのことだった。
久しぶりの飛龍登場!
・・・・・・すいません。特に大きな変化もないので、いままで出番がなかったのです><
折角浮遊島ができたので、飛龍たちに乗って、小旅行です。
と言いつつ次話には着くのですがw

本当は一話だけで終わらせる予定でした。
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