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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 新たな大地と種族

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(7)事前連絡

 考助が、アスラの神域(No.2)で作業を始めてから五日ほどが経っていた。
 その間管理層では、いつも通りの日常が送られていた。
 考助がいなくても管理層は通常通りの生活が送れるのだが、それはそれで寂しいものがある。
 特に今は、コレットとピーチが子育て中、シュレインは妊娠中ということで、常時管理層にいるのはシルヴィアとフローリアしかいない。
 ミアに関しては、第五層の王城との行き来が増えてきて、いまでは週の半分くらいしかいないのだ。
 それ以外には、コウヒとミツキもいるのだが、ふたりは基本的に考助がアスラの神域に行っているときは、活動していない。
 眠っているとか休んでいるとか、そういうレベルを通り越して、完全に生物としての活動を低下させているのだ。
 それでも考助が戻って来る少し前には、いつも通りの動きを見せるので、どうなっているのか不思議である。

 この日シルヴィアは、朝から巫女としての修行を行っていたのだが、そのタイミングを見計らったように、エリスからの交神が来た。
『シルヴィア、いま大丈夫ですか?』
 その声が聞こえて来た瞬間、シルヴィアは巫女としての神への正式な礼を返した。
「はい。大丈夫です。なにかございましたか?」
 エリスからシルヴィアに交信してくることはよくあるのだが、わざわざこう聞いてくることは少ない。
 基本的には一言二言で済んでしまうような内容なので、すぐにエリスとの交神は終わってしまうのだ。
 それが、大丈夫かと確認を取るということは、ある程度の時間が取られるということだ。
 とはいえ、いまのシルヴィアは、さほど忙しいというわけではない。
 エリスとの交神をする時間は、いくらでも取れる。
 それに、このタイミングで話を持ってくるということは、考助が長期間神域に行っていることと関係していることは、すぐ考えればわかることだ。

『今日の午後に、大規模な神託があります』
 エリスと交神できるようになってから初めて聞くような内容に、シルヴィアは思わず首を傾げた。
「大規模、でしょうか? それは、どの程度ですか?」
 神からの神託は、世界規模で見れば、小さな物を入れればそれこそ数え切れないほど行われている。
 勿論、内容は他愛もないものから重要なものまでピンからキリである。
 だが、さすがにシルヴィアは、次にエリスが言ってきた内容に驚いた。
『すべての女神から、世界の者すべてに届く物になります』
「・・・・・・えっ!?」
 シルヴィアは、エリスの言葉に驚きのあまり絶句してしまった。

 エリスが言ったことは、もはや特定の者にだけ送ることができる神託というよりも、まさしく神のお告げそのものだったからだ。
 過去にそう言ったお告げが全世界の者たちに送られることは、少なからずあった。
 だが、そのときは、例外なく世界アースガルドに対して、重要な変化が起こったときである。
 ちなみに、比較対象として、考助が現人神になったときには一斉に神託が送られたが、今回エリスが言ったことは、それ以上の規模になることを示唆している。
 エリスが言った『世界の者すべて』というのは、本当の意味でのすべての人が対象なのだ。

 シルヴィアは、考助が今までにない期間神域に行っていたことで、なにかがあるとは予想していたが、さすがにそれほどまでの規模になるとは考えていなかった。
「一体、何が?」
『今回の交神の内容は、フローリアや他の加護持ちにも前もって伝わっています。どう対処するかは、それぞれに任せます』
 そう前置きをしたエリスは、シルヴィアに浮遊島と天翼族についての話をした。
 そして、エリスからすべての話を聞いたシルヴィアは、納得した顔で頷いた。
「なるほど。そういうことでしたら、確かに必要な措置ですね」
『そうなります。・・・・・・考助様の暴走でなくて、安心しましたか?』
「っ!? エリサミール神!」
 珍しくからかうように言ってきたエリスに、思わずシルヴィアは大きな声を上げてしまうのであった。

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 エリサミール神との交神を終えたシルヴィアは、すぐにフローリアを探した。
 午前中は管理層にいると言っていたので、どこかの部屋でスピカとの交神をしているはずである。
 フローリアを捜して歩き回ろうとしていたシルヴィアだったが、予想に反して当人はすぐにくつろぎスペースで見つけた。
 どうやら、休んでいたところスピカからの交神を受けたらしい。
 部屋に入ってきたシルヴィアの顔を見て、自分と同じように交神を受けたとわかったため、フローリアから話しかけた。
「シルヴィア、聞いたか?」
「ええ。勿論です。どうしますか?」
「どうもこうもないと思うが? やめろと言える相手でもあるまい」
 ため息交じりに答えたフローリアに、シルヴィアは口元を手で押さえながら小さく笑った。
「それもそうですね。・・・・・・いえ、そういうことではなく、トワに伝えるかどうかということです」
「なに?」
 フローリアにとっては予想外だったのか、驚いた表情になってシルヴィアを見た。

 フローリアにしてみれば、神から聞いた内容をそんな簡単に外に漏らしてもいいのかという感覚だった。
 だが、巫女であるシルヴィアにとっては、得た神託の内容を開示することは、業務の一貫である。
 それを、どの程度の範囲にまで広げて開示することを決めるほうが重要なのだ。
 しかも、今回は、すでに神がすべての人に開示すると言っている。
 多少前もって知らせておくことは、大した問題ではないのだ。

「――ですので、こういう場合は、為政者に前もって知らせておいた方が混乱を抑えられることが多いです。そのために、神々もわざわざ前もって交神してきたのでしょう」
 シルヴィアの予想では、すでに神殿関係者や各国の上層部との繋がりを使って知らせているはずなのだ。
「なるほどな。確かに、内容に驚いてそこまで頭が回らなかったが、その可能性が大きいか。そして、だからトワか」
「はい。ただ、ココロを通じてすでに知っている可能性もありますけれどね」
 ココロは複数の神から加護を得ている。
 交神も受け取ることができるので、話を通すには不自由しない。

 シルヴィアの問いにしばし考えたフローリアは、首を左右に振りながら答えた。
「いや。やはり伝えておいた方がいいだろう。・・・・・・内容が内容だけに、複数から話をしておいた方が、信憑性が上がるからな」
 今回は話の内容が内容だけに、いくら実績を上げているココロといえど、信用してもらえない可能性がある。
 トワはそんなことはしないだろうか、問題は周りにいる側近たちだ。
 時間があれば信じさせることも可能だろうが、説得をしている時間もない。
 それならば、フローリアとシルヴィアが出て行って話をした方が、話が早いだろう。

 フローリアの意図を察したシルヴィアが頷いた。
「わかりました。では、すぐにでも・・・・・・といいたいところですが、私は少し遅れるか、いけないかもしれません」
「うん? なぜだ?」
 シルヴィアの言葉に、フローリアは意味が分からずに首を傾げる。
 そんなフローリアに、シルヴィアが僅かに苦笑しながら答えた。
「・・・・・・コウヒさんとミツキさんを起こして、話をしておいた方がいいでしょうから」
「あ・・・・・・ああ。そうだったな。・・・・・・すまないがそうしてくれ」
 流石に今回のことは、考助が帰ってくるまで目を覚まさないであろうコウヒとミツキを起こして、話をする必要がある。
 そう判断したシルヴィアの言葉に、動揺のあまりすっかり失念していたフローリアは、内心でホッと胸を撫で下ろすのであった。
考助が天翼族の相手でわちゃわちゃしている間の、管理層側の出来事でしたw
まあ、本発表(?)まであまり時間もないので、大きな余裕があったというわけではありませんが。
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