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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 新たな大地と種族

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(4)天翼族

 アスラの見学会が終わったあとは、一晩時間を空けてから浮遊島の住人を迎え入れることになっている。
 そのため、考助とエリス、スピカ、ジャルの三姉妹が、島に唯一ある建造物の城の前で住人たちを待っていた。
『そろそろ送るけれど、いいかなー?』
「うん、大丈夫」
 本人がいないのにアスラの声があたりに聞こえてきて、考助がそれに返事をした。
 この場合、エリスが答えるのが正解ではないのかとか、考助が考えたりもしていたが、三姉妹は特に文句を言ってきたりはしてこない。
 というよりも、むしろ考助が答えるのが当然だと思っていたりする。
 それに気付いていない考助は、やはり鈍いというべきなのだろうが、この場にそれを指摘する者はいなかった。

 考助が返事をしてからすぐに、考助たちの目の前で変化が起こった。
 握りこぶし大の光の塊が出て来たかと思ったあとに、その光の塊が徐々に大きくなってき、辺りに広がって行った。
 その光は、考助たちのいる側には広がって行かずに、反対方向へと向かって行った。
 やがて、その光は薄くなって消えるのだが、そのあとには浮遊島の住人となるべく者たちが残されていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 天翼族のエイルは、「そのとき」が来るのをただひたすら待っていた。
 そもそもエイルは、争いの絶えない天翼族の中で変わった性質を持って生まれてきていた。
 その性質というのが、「調和」や「平和」という物であり、戦いの中に身を置く天翼族としては、中々受け入れられるものではなかった。
 それでも、彼女のその性質を慕って集まってくれる仲間は多くいてくれたため、天翼族の中ではそれなりの発言力を持っていた。
 とはいえ、やはり天翼族の本質は戦い種族であり、天翼族としての本流になることはなかった。

 しばらくの間は、エイルの派閥は主流派との意見のぶつかり合いだけですんでいたのだが、やはりそれだけでは終わることはなかった。
 幾度目かの話し合いの最中に裏切りが発覚して、多くの主要な人物が集まる場が襲われるという事件が起こった。
 力自体は強かったエイルが何とか襲撃を防いだが、それでも幾人かの人物を失うこととなった。
 それをきっかけにして、エイルの派閥は、主流派を始めとした他の派閥を相手に戦いを強いられることとなる。
 その事件以降は、エイルがいくら和平を呼びかけたとしても話を聞き入れる者はなく、エイルの派閥は徐々にその数を減らしていった。

 そして、ついには派閥としての力が維持できなくなるような数になり、あとは座して死を待つのみという状態になったところで、一筋の光が現れたのだ。
 それが今回の話に繋がっており、神からの別世界への移住の誘いだった。
 その話にエイルは一も二もなく頷きを返した。
 派閥の仲間たちにも当然その話をしており、移住をするか元の世界に残るかはそれぞれの判断に任せていた。
 とはいえ、もともとぎりぎりまで残っていた者たちであり、残る選択をする者はほんのわずかしかいなかった。

 エイルが神から受けた啓示には、世界が変わることで神の存在も変わると聞いていた。
 転移先にその者が待っているという話を聞いていたので、エイルはその対面を緊張しながら待っていたのだ。
 やがて仲間たちと集まっていた場所に光が広がり、転移が始まったことがわかった。
 その光は、とても自分たちでは出せるようなものではなく、まさしく神の偉業と呼べるような力の奔流だった。
 そして、その光が消えたときに、自分たちの目の前に、四人の人影があることを見つけて慌てて膝をついたまま頭を下げたのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 目の前に現れた千人ほどの翼つき(・・・)の人たちが、突然頭を下げ始めたのを見て、考助は戸惑った表情になった。
 いままでこれほどの多くの存在に頭を下げられたことなどなかったので、どうしていいのか分からなかったのだ。
 ちなみに、エルフやヴァンパイア、サキュバスたちは、考助に対する神としての敬意は持っているが、考助の要請によりこのような態度を取ることはない。
 今回は、それが見事に裏目に出たというわけだ。

 戸惑う考助を見て少しだけ笑ったエリスは、助け舟を出すようにして言葉を発した。
「顔を上げなさい」
 エリスの言葉はさほど大きくなかったが、それでもしっかりと全体には届いていたようで、見事に全員が揃って同じように顔を上げた。
 その様子を見ていた考助は、内心で冷や汗を流している。
 とはいえ、見ている側のエイルを始めとした天翼族の者たちは、そのことにはまったく気付いていなかった。
 それよりも、女神とわかる三人の女性の傍に、ひとりだけ平平凡凡な男がひとりだけ混じっていることに、戸惑いを覚えていた。
 勿論、神が直接送った場所なので、ただの人がいるとは考えてはいない。
 ただ、不思議に思っているのだ。

 そんな天翼族にエリスは、考助がぼろを出す前にすぐに説明を始めた。
「いま貴方たちがいる世界は、仮の場所であって、本来移動するべき世界ではありません。ですが、この島が貴方たちの生活する場所になります」
「畏まりました」
 エリスの言葉に、エイルが代表して答えを返す。
「私の名前はエリサミール。これから移動する世界の一柱の神です。後ろにいる女神二柱は、私の姉妹神になります」
「はい」
 エイルが頷きながらちらりと考助を見た。
 これまでの説明に出てこなかったので、気になっているのだ。

 エイルのその態度に頷いたエリスは、頷きながら考助を見た。
「こちらの方は、貴方たちにとっての重要な存在(カミ)になります。貴方たちの生活する場としてのこの島を用意したのが、こちらの考助様になります。また、貴方たちの主神となるのもこちらの考助様です」
「ハハッ!」
「えっ!?」
 威勢のいい天翼族たちの答えとは裏腹に、考助は驚いた顔になってエリスを見た。
 そんな話は聞いていないと顔に書いてある。

 そんな考助に、エリスがため息をついてから続けた。
「考助様。これからこの島に天翼族が生活を始めるのですが、もし浮遊装置に何かが起これば、誰が対処するのですか?」
「ええと・・・・・・僕、かな?」
 浮遊装置のすべてを知っているのは、考助以外には誰もいない。
 アスラもすべてを把握しているとは言い難いのだ。
 考助の答えに、エリスは満足げな顔になって頷いた。
「では、そういうことです」
「はあ。・・・・・・えっ!? いや、それとこれとは別ではっ!?」
 エリスに押し切られそうになった考助は、途中で気付いて慌てて反論した。

 そんな考助に対して、エリスは笑顔になってからずいと顔を近づけて来た。
「考助様。この島はこれから天翼族たちの生活の場となるのです。その場所を用意したのは考助様なのですよ?」
「えっ、いや、別にそれは僕だけじゃなくて・・・・・・」
 他の女神の力も使っていると続けようとした考助に、エリスはあからさまにため息をついて見せた。
「以前にも申しましたが、浮遊装置は考助様がいなければできなかったものです。この島の中心的な役割を果たしているのですから、貴方が主神ではなくて、なんだというのですか」
 わざとらしく両手を広げながら芝居がかって説明しているエリスだが、それは考助に聞かせるためではなく、むしろ天翼族たちに聞かせているのだ。
 その目的はしっかりと果たせたようで、すでに彼女らの中に、考助を侮るような視線は欠片もなかった。

 そして、そのことに考助が気付いたときは、すでに遅し。
 自分たちが住むべき場所を作った主神=考助として、彼らの中にはインプットされているのであった。
ある意味で天翼族は、考助に神としての自覚を促すためにアスラが用意した存在ともいえる・・・・・・ようになるかもしれませんねw

ちなみに、天翼族は翼つきですが、代弁者とはまた別の存在です。
とはいえ、この世界の他の種族とは一線を画すほど戦闘能力は高いです。
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