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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 新たな大地と種族

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(3)見学会

 細かい調整などを行って完成した浮遊島を、考助とアスラ、三大神の姉妹とクラーラが揃って見学していた。
「こうなったのね。なかなかいいじゃない?」
 アスラがそう言うと、一番後ろについてきていたクラーラが、あからさまに安堵のため息をついていた。
 勿論、アスラには見えないようにこっそりとだ。
 唯一隣を歩いていたスピカが、クラーラの肩をポンと叩いていた。
 久しぶりにアスラの大号令で始まった浮遊島創造に関しては、これでようやく終わりとなった。
 ただ、アスラの計画は、浮遊島を作ることそのものではない。
 むしろ、エリスたちにとっては、ここから先が本番ともいえるだろう。

 そんな女神たちの思惑(?)をよそに、考助はのんびりとアスラの横を歩きながら会話をしていた。
「やっぱりそう思うよね。さすが世界を司っている女神だけあるよ」
「なにを言っているのよ。考助の天空石がなければ、この計画は立てられなかったのよ?」
 アスラから見れば、浮遊装置を覆うための大地やその上に乗っている山などの自然物は、あくまでも世界を管理する神としての能力でしかない。
 それに比べれて、天空石を生み出した考助の力は、まさしく創造神としての力の一端なのだ。
 世界にあるものを使って管理する力と、世界そのものを創造する力、どちらが上かといわれれば、少なくともアスラにとっては後者が上である。

 アスラがそんなことを考えているとは露知らず、考助はフーンという顔をしている。
「まあ、すでに作られている天空石にいろいろと細工を施しただけだけどね」
 本気でそう思っている考助に、アスラを始めとして女神たちはただ黙って笑うだけだった。
 良くも悪くもこれが考助だということをわかっているのだ。
「もう。まあ、それでいいけれど、考助がいなければこの計画は立てることもできなかったという事だけは覚えていて頂戴」
「わかったよ」
 アスラの念押しに、考助は苦笑しながらそう答えた。

 
 のんびりと地上(?)を歩いていた考助たちは、そのままの足で城へと向かった。
 最終目的地は、城ではなくその奥にある浮遊島のメイン機関である浮遊装置だ。
 ただし装置といっても、実際に目にすることができるのは、部屋の中央に浮いている巨大な天空石と壁だけである。
 入り口を除いた四方の壁では、ネオンが輝いているように、時折魔法陣で使われている文字や絵が光っている。
 それらが浮遊島を空間に浮かせるための役割を果たしているのだ。
 考助としては自分が作った装置の裏側を見られるようで気恥ずかしかったため、今見えている壁そのものを隠そうとしていたのだが、作業を見守っていた女神たちに止められて断念していた。
 折角なのだから、装飾の一部と考えましょうという勢いに流されてしまって、そのままということになったのである。

 女神たちの努力(?)によって残された考助渾身の魔法文字の数々を見ていたアスラは、感嘆のため息をついた。
「・・・・・・これは本当に凄いわね」
「え? そう?」
 まさか、アスラにまでそんなことを言われるとは思っていなかった考助が、キョトンとした顔になった。
 考助は自分がやったことを未だに理解できていないのだ。
 あくまでも気持ちの上では、いままでの延長で作業をした気でいるのだ。

 そんな考助にアスラは、今度は呆れのため息をついた。
「そうなのよ。まあ、考助がそういう人だということはわかっているからこれ以上は言わないけれどね」
「はあ・・・・・・」
 それでもいまいちピンと来ていない考助に、ほかの女神たちもジト目を向けていた。
 もっとも、こういうときの考助はなぜ気付かないんだというくらいに鈍いので、彼女たちの視線にはまったく気付いていなかった。
「それはともかく、他の子たちが言った通りに、これは確かに装飾としても面白いわね。別に触れても構わないのでしょう?」
「それはね。さすがに触れたくらいで影響があるようだったら、最初から表に出さないようにするから」
 壁に出ている魔法陣の数々は、あくまでも事象が起こった結果として出ているものなのだ。
 すでに結果は出ているので、その表面に出ている現象を止めたところでなんの影響も出ない。
 わかりやすく言えば、光のついた電球を手で覆っているようなもので、光そのものを消したことにはならないのと同じことなのだ。

 勿論、簡単には消されないように工夫もしてある。
 もっともそれは、考助が処理をしたというよりも、壁をそのままにしておくようにと主張した女神たちが、張り切って防護策を施したのだ。
 考助がそのことを話すと、アスラはクツクツと笑い出した。
「まあ、これを見てしまうと、そうしたくなるのはわかるわね」
 アスラがそう言うと、後ろで話を聞いていた三姉妹とクラーラは同時に頷いた。
 そんなことをしている四人も、この部屋に様々な防護を施していたりする。
 その雰囲気を感じ取ったのか、ふとアスラが真剣な表情になった。
「・・・・・・そうね。折角だから私もなにかしてみようかしら?」
「「「「「えっ!?」」」」」
 まさかアスラがそんなことを言い出すとは思っていなかった他の五人は、驚きの顔になった。

 その五人の反応に、アスラは少しばかり傷ついたような顔になる。
「あら。私だけ仲間外れにするつもり?」
「い、いえ、そういうつもりはありません! ただ、この浮遊島はアースガルドに移すことになるので、本当によろしいのかと思いまして・・・・・・」
 エリスが慌ててそう釈明すると、アスラはひらひらと手を振った。
「別に構わないわよ。どうせ私の力の行使がばれるわけはないし。たとえばれたとしても、それはそれで構わないわよ」
 アスラの力がこの部屋にあるとわかったとして、それだけの力を持つ者であれば、そもそも最初からアスラの存在に気付いている可能性のほうが大きい。
 それこそ、考助がガゼンランの塔でアスラの痕跡を発見したときのように、である。
 それならそれで構わないというのが、アスラの考えなのだ。

 エリスも驚いただけで、別にアスラを止めようとしたわけではなく。
 そのため、アスラはさっそく五人が見守る前で、力を行使することになった。

『アスラの名において世界に命ずる。何者をも寄せ付けぬ力を、我が威において示せ』

 たったそれだけの呪だったが、神域にあるありとあらゆる力が、考助たちがいる部屋に集まってきたのがわかった。
 もともと部屋に施されていた防護策は、考助から見ても破るのは不可能だと思わせるようなものだったのが、アスラの呪によってそれが一気により強固なものになってしまった。
 いま、この防護柵を破れと言われても、即座に不可能だと答えるだろう。
 そして、エリスたちは考助とは違った感想を持っていたのだが、それには考助は気付いていなかった。
 そもそも世界の元となっている絶対神が作った結界を破ろうなんてことを考えること自体が、あり得ないことなのだ。

 そんな周囲の視線はさておき、当の本人アスラは満足げな表情で頷いていた。
「これで十分でしょう。・・・・・・って、どうしたのよ?」
 ようやくアスラが周囲の雰囲気に気付いてそう問いかけた。
「いや、アスラの権能の行使があまりに素晴らしかったから、見惚れてた」
「なっ!? いきなり何を言っているのよ!」
 唐突すぎる考助の言葉に、アスラは思わず取り乱し、周囲の者たちは呆れたような視線を考助へと向けた。
 当然、考助は無自覚の上で、先の台詞を宣ったのである。
まじめに力の行使を行うアスラは、非常に珍しいですね。
実は初めてか、というくらいに作者の記憶にはありませんw
(考助との初対面のときに行ったのは別)
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