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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第11部 第1章 塔のあれこれ(その23)

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(9)修羅出現?

 リクは、仲間たちがフローリアとシルヴィアのタッグに向かっていくのを真剣な表情で見ていた。
 その隣にはカーリが立っていて、同じように仲間たちの戦いぶりを見ている。
 戦っているのはほかの四人のメンバーだが、フローリアとシルヴィア相手に中々健闘した戦いぶりを見せていた。
「おー。かなり成長したねえ。やっぱり実戦を繰り返していると、成長が速いなあ」
 感心したように言ってきた考助の感想に、リクはガクリと肩を落とした。
「あのなあ、父上。そういうセリフは、せめてふたりが大技を使うようになってから言ってくれ」
「そうですね。それに、シルヴィアさんは開始からほとんど動いていません。とても攻め切れているとはいえませんよ」
 リクの言葉に補足するように、カーリがそう補足してきた。

 そんなふたりに対して、考助は考え込むような顔になった。
「うーん。ふたりに追いつくにはかなり厳しいと思うけれど? せめてパーティでSランクくらいにはなっていないと」
「Sランクって・・・・・・あのなあ。どれだけ強いんだよ、母上たちは」
 今更過ぎる事実に、リクは目を剥いて驚いていた。
 隣に立っているカーリは、驚きを通り越して青白くなっている。
「さあ? そもそもまともにランク付けしようと思ったことが無いからよくわからないなあ。ああ、いまだったら第七十二層は単独走破できるだろうね」
 第七十二層は、いまのところ冒険者が攻略している層の中で、ダンジョン階層を除けば一番強いモンスターが出てくる階層といわれている。
 それだけに、冒険者にとっては第七十二層を抜けて、その先にあるダンジョン層の攻略ができることは一種のステータスとなっていた。

 考助の説明を聞いたリクは、ぽかんと口を開けた。
「いや、第七十二層を単独走破って・・・・・・。一体どうやって?」
「うん? 別に深く考える必要はないと思うよ? フローリアの場合は、あらかじめ仕込んでおいた高火力の魔法で寄ってきた集団を片付けて、こぼれて来た相手は剣で倒せるからね。シルヴィアに至っては、そもそも戦う必要が無いからね。ただ歩いているだけで、ゴールに着くよ?」
 あっさりと事実を暴露した考助に、リクはこめかみを抑えるように右手を頭に当てた。
「・・・・・・たしかに聞けば簡単そうだが、そんなことができるのか?」
「できるよ。というか、同じような階層で、ふたりとも似たようなことをしているんじゃないかな?」
 フローリアもシルヴィアも、それぞれが管理している塔を確認するときには、護衛なしで歩き回っている。
 それくらいの実力が付いているので、最近の考助はすでに何も言わなくなっているのだ。
 もちろん、間違いが起こらないとは限らないので、いざというときの魔道具はふたりとも常に身に着けている。

 ようやく衝撃から復活してきたカーリが、真剣な表情になって考助を見た。
「あの・・・・・・フローリアさんの対処方法はまだわかるのですが、シルヴィアさんは一体どういうことですか?」
 歩いていればそのうち着くという説明は、あまりにざっくりとしすぎていて、まったく想像がつかなかったのだ。
 カーリの問いに答えようとした考助は、ふと口を閉じてリクを見た。
「だってさ。説明してあげて」
「俺かよ!? まあ、いいけどな。・・・・・・カーリ、シルヴィア母上は巫女だ。となれば、身を守る結界を張ったうえで、門まで歩いて行けばいいだけだ」
「はいっ!? 何を言っているのよ!? そんなことが、本当にできるとでも!?」
 カーリは、思わずといった感じでリクを攻め立てた。
「いや、俺に言うなよ。父上がそう言っているんだから、できるんだろうよ。俺だって、半信半疑で言っているんだよ!」
 普通の常識で考えれば、巫女が張れる結界では、そこまで高レベルのモンスターの攻撃を完全に防ぐことなどできない。
 ましてや、その結界を維持したまま自由に歩き回れるなど、笑い話でしかないのだ。・・・・・・一般常識で考えれば。

 嘘だと言ってほしいという顔になったカーリは考助を見たが、残念ながらその願いはかなわなかった。
 しかも、考助はさらなる爆弾まで落とした。
「うん。まあ、大体そんなかんじだろうね。いまのシルヴィアだったらドラゴンの一撃も防ぐだろうし」
 その何気ない言葉に、リクとカーリは愕然と顎を落とした。
「父上、本気で言っているのか!?」
「あ、あり得ない・・・・・・」
 この世界でもドラゴンは、頂点に位置する生物だ。
 その攻撃で砕けないものはないと言われるほど、強力な一撃を繰り出す。
 冒険者に伝わる言い伝えのようなものの中には、ドラゴンと出会ったらすぐに逃げろ、もし敵わないときは、なにをおいても攻撃を避け続けろ、というものがある。
 ドラゴンの攻撃は絶対に当たってはいけないという教えのようなものだが、それだけ強力な一撃だということを物語っている。

 その攻撃を防ぐ結界など、冒険者たちにとっては想像の埒外なのだ。
 勿論、複数人が集まって協力したうえで結界を張れば、同じようなことはできるが、考助が話したことはあくまでもシルヴィアだけでのことだ。
 だからこそ、リクもカーリもこれほど驚いているのである。
「いや、そうかもしれないけれど、なんでリクが驚いているかな? だって、シルヴィアだよ?」
「それは確かに・・・・・・あっ、いや、なんでもありません!」
 一瞬納得仕掛けたリクだったが、なぜかある方向を見て突然急に首を左右に振りはじめた。

 さすがにそれを見て、なにが起こっているのか気付かないほど、考助は鈍くはない。
 パッとリクが見た方向に振り返り、両手を合わせた。
「あっ、いや、別に、これには、特に、含みは、ありませんよ? さすが、シルヴィア、すごいね、ってことで・・・・・・????」
 妙に不自然にとぎれとぎれになっているその言葉が、なによりも考助の気持ちを代弁しているようだった。
 考助の視線の先には、いつの間にか訓練を終えたシルヴィアが、にこやかに笑った状態で立っている。
 特に普段と変わりがないようなシルヴィアだったが、なぜか考助の背中には大量の冷や汗が出てきていた。
「あの・・・・・・シルヴィア?」
 黙ったまま笑っているシルヴィアに、考助がそっと話しかけたが、当人は特に表情を変えずに首を傾げた。
「コウスケ様、どうしました?」
「ああ、いや、うん。なんでもないから、気にしないで」
 誤魔化せるとは思っていないが、敢えて地雷を踏みに行くつもりのない考助は、無難なところでそう返した。

 考助とシルヴィアの様子を少し離れたところで見ていたリクとカーリは、こそこそとふたりには聞こえないように話をしていた。
「ねえ。あれって、気付いていないのかな?」
「いや、気付いているだろ? お互いにわかっていて、ああいう会話をしているんだよ」
「だったら、なぜシルヴィアさんは、なにも言わないのかしら?」
「あれが、シルヴィア母上の怒り方だからな。父上もそれがよくわかっているから、あれだけ腰が引けているんだろう」
 リクの的確な分析に、カーリが納得の表情を浮かべた。

 だが、どうやっても聞こえるはずのない小声で話していたふたりのところに、シルヴィアの声が飛んできた。
「リク、カーリ?」
「「は、はい! ごめんなさい!」」
 ピタリと揃ったふたりの返事に、シルヴィアはそれ以上何も言わずに、にこやかな笑顔を浮かべたまま考助の腕を取って訓練場を後にした。
 そして、震えたまま残されたリクとカーリに、それまで黙って様子を見ていたフローリアがため息をつきながら言った。
「お前たちも、中途半端な距離でこそこそとするな。なにか話をしていますと言っているようなものだろう?」
 とのありがたいフローリアのお言葉に、リクとカーリはガクリと首を落とすのであった。
こんな書き方をしていますが、実はシルヴィアはあまり怒ってはいません。
折角なので、考助と甘えようと画策しただけです。
微妙に黒いですかね?w
実は、フローリアはそのことをわかったうえで、敢えて見逃して(?)います。
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