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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第11部 第1章 塔のあれこれ(その23)

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(8)人形

 くつろぎスペースで休んでいた考助のところに、イスナーニがよってきた。
「考助様、いま大丈夫でしょうか?」
「うん? どうしたの?」
 特に寝ていたわけでもないので、考助はすぐに体を起こしてイスナーニを見る。
「すこし変わった・・・・・・面白い物を持ってきました」
「へえ? どんなもの?」
 イスナーニの言葉に興味を示した考助は、目を輝かせた。
 彼女が考助が関わっていない物でこのような言い方をするのは、非常に珍しい。

 考助の反応を見て小さく笑ったイスナーニは、スッとアイテムボックスからとある物を取り出した。
「・・・・・人形?」
「はい。そうです。勿論、ただの人形ではありません。どんなものかわかりますか?」
「ん~?」
 イスナーニに問われた考助は、人形を受け取ってから首をひねった。
 そして、すぐにニヤリとした笑みを浮かべた。
「へー。なかなか面白い物を作ったね」
「・・・・・・もうわかってしまいましたか」
 考助の言葉で、あっという間にどんな人形であるのかとばれたとわかったイスナーニは、ガクリと首を落とした。

 そこで、考助とイスナーニの会話を聞くとはなしに聞いていたシュレインが、興味深そうに聞いてきた。
「なんじゃ? どんな人形なのじゃ? なにか仕掛けでもあるのかの?」
「まあ、そういうことだね。・・・・・・ちょっと待ってよ」
 考助はそう言いながらスッと持っていた人形をテーブルの端っこに置いた。
 そして、考助が人形のある部分触ると、その人形が音もたてずに動き出した。
「おっ!? なんじゃ、これは? ・・・・・・って、どこかで見たことがあるの」
 人形の動きを見ていたシュレインは、なにかを思い出そうとするように天井を見た。

 そして、すぐに思い出したのか、両手をポンと打った。
「ああ! コウスケたちが正式にメイドゴーレムを作る前に作ったゴーレムにそっくりじゃの」
「まあ、そういうことだね。ただ、あれとはちょっと違っているともいえるけれどね」
「・・・・・・どういうことじゃ?」
 考助の説明に、シュレインは首を傾げた。
 見た目はともかく、動きはそっくりだったので、シュレインには見分けが付かなかったのだ。

 シュレインを見ながら小さく笑った考助は、動いている人形を止めてから説明を始めた。
「僕らが初めに作ったゴーレムは、もともと今いるメイドゴーレムを作るためにいろいろ詰め込んでいたからね。少し大げさにいえば魔法陣だらけだったんだよ。ところが、この人形はむしろ魔法陣の数を減らして、技術でカバーして作られているね」
「・・・・・・意味がわからないのじゃが」
「あら。んー・・・・・・どう説明したもんかな?」
 頭上に「?」マークを浮かべたままのシュレインに、考助は腕を組んでからしばらくの間首をひねってから説明を始めた。

 考助たちが初期に作ったゴーレムは、簡単にいえば魔法陣の塊のような物だった。
 ゴーレムについていた手足や顔の動きや命令を判断して受け付けるパターンなどは、それらの魔法陣によって制御されていた。
 そのため、最終段階のメイドゴーレムに至っては、信じられないほどの膨大な魔法陣が使われていて、いわゆる魔法陣の専門家と呼ばれる者たちでも解読不可能といわれるような代物になっている。
 それに対して、今回イスナーニが持ってきた人形は、できる限り魔法陣を排除して、機構(技術)によって作られているのである。
 考助が知る茶運び人形により近くなっているのが、この人形ということだ。
 魔法陣の数が少ないといういうことは、魔法陣のメンテナンスが簡単になっているともいえる。
 勿論、その分、機構のメンテナンスが必要になるのだが。

 考助の説明を聞いたシュレインは、納得したように頷いた。
「要するに、この人形は魔法ではなく技術によって動いているといいたいのじゃな?」
「まあ、ざっくり言うとそういうことかな」
 正確にいえば魔法(魔法陣)も使われているので、完全に技術によるものではないのだが、シュレインの認識はおおむね間違っていない。
 そもそもこの世界において、どこかで魔法の補助が入るので、完全に技術のみで作られている物はほとんど存在しないのである。
 それを考えれば、シュレインの認識は正しいものだろう。

 考助の言葉に頷いたシュレインだったが、ふと首を傾げた。
「それはわかったのじゃが、考助が言った面白いというのは、どういうことじゃ?」
 つくりの違いというのはわかったが、それがどうしたとしか思えなかったシュレインは首を傾げた。
「まず単純なところで、工賃が安くなる」
「ほう。どれくらいじゃ?」
 単純明快な考助の回答に、シュレインは興味深そうな顔になった。
「ちゃんと中を見てないから分からないけれど、具体的には・・・・・・どうだろうね? もし、需要が高まって、大量生産するようになれば、かなり安くなるんじゃない? 一般庶民が年に一度、子供に贈り物できるくらいには」
「それはまた、極端じゃの」
 考助たちが最初に作ったゴーレムは、一般庶民どころか裕福な家庭が購入を躊躇うくらいの金額がかかっていたはずだ。
 それから比べれば、雲泥の差といっていい。

 感心するシュレインに、考助は頷いて、
「単純なつくりになっている分、魔法陣用の素材も少なくて済んでいるみたいだからからね」
 考助はそう言いながら視線をイスナーニへと向けた。
 ここから先はイスナーニのほうが詳しいだろうと考えてのことだ。
「そうですね。仰る通りです。製作者は、なるべくありふれた素材で作りたいと言っていましたよ」
「なるほどね。ルカがそういう視点を持ち始めたのは、いいことだと思うよ」
「なんじゃ。これを作ったのはルカだったのか」
 何気なく言った考助の台詞に、シュレインは首を傾げて、イスナーニは苦笑をした。
 イスナーニは、わざと製作者の名前は言っていなかったのだが、考助は最初からお見通しだったようだ。

 あっさりと製作者を見抜いた考助に、シュレインは呆れたようにため息をついた。
「どこをどう見れば、製作者が分かるんじゃ。名前が書いているわけでもないじゃろうに」
「魔法陣の作りの癖とか?」
「いや、吾に聞かれても分からんからの?」
「ハハハ。いや、いざ言葉で説明するとなると難しいんだよね。ただ、なんとなくとしか言えないよ」
 考助が魔法陣の作成者の癖を見抜いている方法は、感覚によるものが大きいので、間違った説明ではない。
 誰が作ったかと聞かれれば、名前がわかっている作成者は当てることができるが、なぜわかるのかと聞かれても説明が難しいのである。

 大方、現人神としての権能も含まれているのだろうと想像したシュレインは、それ以上は聞かずにただ頷いた。
「そうか。・・・・・・それは良いとして、考助はそれを見てどうするのじゃ?」
「うん? 別にどうもしないよ。この人形がはやるのなら作ればいいし、逆に駄目だった場合は、廃れるだけだから」
「随分とあっさりしたもんじゃの」
「まあ、基本的に道具ってそんなものだからね」
 いくら作成したものがこれは良い物だ、と思って作ったとしても、実際に需要が無ければいずれは作られなくなって行く。
 それは、新しい道具の宿命と言っていいだろう。
 勿論、世の中には製作者の趣味だけで作っているものも大量に存在するのだが。

 とにかく、ルカが作った人形は無事に(?)考助の目に留まることとなった。
 ただし、だからといって、考助自身がなにかをしようとするつもりはない。
 敢えてするとすれば、自分が作っている魔道具の参考にするくらいだろう。
 そんなことは百も承知で、イスナーニやルカは考助に人形を見せたのである。
魔法の造りを極力少なくした人形の登場です。
ただし、製作者は考助ではなく、ルカ。
ルカも元気にやっているという証明になるでしょうか?w
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