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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第11部 第1章 塔のあれこれ(その23)

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(5)胎教?

 シュレインの妊娠が発覚してから数か月後。
 管理層では変わりのない日々が続いていた。
 少しだけ変わったことがあるとすれば、シュレインが以前よりもヴァミリニア城に滞在する時間が長くなったくらいだろう。
 とはいっても、他の女性陣のように、自分の里に入りびたりになっているわけではない。
 これには理由があって、出産数の少ないヴァンパイアの里では十分な受診ができずに、第五層の街でも診察を受けているためだ。
 両方の医師の診察を受けるために、どちらにでも行きやすい管理層で過ごしているのだ。
 もっとも、転移門を使えばどちらにいてもいいのだから管理層にこだわる必要はない。
 それでもシュレインが管理層により多くいるようにしているのは、なんのことはなく考助と一緒にいる時間が減るのが嫌だからである。
 考助はともかく、他の面々はそれを見抜いているので、敢えてそれ以上はなにも言っていない。
 基本的には当人の好きにすればいい、というのが管理層メンバーのスタンスなのだ。
 それに、母子ともに順調に過ごしているので、目くじらを立てる必要もないと考えている。

「それにしても、シュレイン母上もついに本当の意味で「母上」ですか」
 シュレインのお腹を優しく触りながら、ミアが嬉しそうな顔でそう言った。
 さすがに目立つほど大きくはないっていないのだが、ミアはそんなことはまったく気にした様子はなく撫でている。
 その様子をシュレインは、少しばかりあきれた様子で見ていた。
「そうなのじゃが・・・・・・其方、これで同じことを言うのは何度目じゃ?」
 シュレインが呆れているのは、ミアがことあるごとに自分のお腹を触りながら、まったく同じことを言ってくるためだ。
 悪意があってのことではないとわかっているので好きなようにさせているが、それでも頻度が多くなればそれだけ煩わしくなってくる。

 もっとも、ミアもその辺の加減はわかっているので、シュレインが多少呆れるくらいで済んでいたりする。
「これから何度でも同じことを言いますよ! あっ! 勿論、シュレイン母上が嫌だというのならやめますが」
 ミアもシュレインに嫌われてまで続けるつもりはない。
 将来生まれてくる異母弟妹に会えなくなるようなことになるのは、ごめんなのだ。
「むっ。いや、まあ。別に嫌というわけでは無いのじゃがの」
 シュレインにしてみれば、ここまでストレートに喜んでくれる者が、実は貴重な存在だったりするのだ。

 というのも、考助はすでに九人目の実の子だし、他の考助のパートナーは皆が出産を経験している。
 皆がベテランという風格を漂わせているのだ。
 勿論、シュレインの妊娠自体は喜んでいるのだが、ミアほど感情をあらわにすることはないのである。
 逆に、他のヴァンパイアたちは、妊娠自体が珍しいことなので、腫物を触るような対応になっているのだ。
 シュレインにしてみれば、ミアの存在は自分の妊娠を認識するうえで、貴重な(?)存在となっているのだ。

 
 そんなわけで、シュレインはミアにある程度の釘を刺したところで、再びミクの演奏に集中し始めた。
 そう。いまシュレインたちは、ミクのストリープの演奏を聞きながら寛いているのである。
 これは、シュレインの妊娠がわかったときに来ていたミクの横で、考助が「そういえば、お腹の中にいる子供に、演奏っていいんだよね」と呟いたときから始まった習慣である。
 考助の言葉を聞いたミクが、初めてできる弟か妹のために、張り切って企画していた。
 他人のためにきかせる演奏は、当人にとってもいいことなのはわかり切っているので、ストリープの教師が許可を出して実現した。

 そのストリープ教師であるフェリシアは、真剣な表情でミクの演奏を聞いていた。
 最初は管理層で指導することに難色、というよりも極度の緊張を示していたフェリシアだったが、既にそれも慣れたのか今では完全に指導に集中している。
 ミクも教師役がいることで、緊張した状態で弾けているので、シュレインにとってもミクにとってもいい経験になっているようである。
 プチ演奏会というよりもミクの練習風景を見せるという感じになっているのだが、既に子供の演奏レベルはとっくに越しているので、誰にとってもお得なことになっていたりする。
 特にピーチは、ミクがいる間は管理層にいることができるので、ミクにはばれないように陰で喜んでいたいたりする。

 ミアもシュレインが演奏に集中し始めたのを見て、同じように目を閉じて演奏に集中し始めた。
 ・・・・・・と思ったら、演奏の途中でぽつりと呟いた。
「それにしても、いつ聞いてもミクの演奏はすごいですよねえ。やっぱり」
「うむ。これだけ毎日聞いているのに、飽きるということが無いからの。技術はともかくとして、人に聞かせるという意味においては、既に最高峰でないのかの?」
「そうですねえ」
 ミクはまだ子供の手なので、一般に知られている曲で弾けないものも数多くある。
 それらの曲に対して技術が追い付くかどうかが今後の勝負(?)になるのだが、いまのところはそうした壁にぶつかっている様子はない。
 勿論、まったくの壁なしにここまできているわけではなく、ミクの日々の努力もあるのだが。

「ところで、聞いていなかったのじゃが、この間の演奏会はどうだったのじゃ?」
 つい先日、ミクはトワの私的なパーティで、演奏を披露していた。
 勿論、後見人としてミアが付いたうえでである。
 いきなりの大舞台でもう一度演奏するよりも、わりと小さめの場で弾いた方がいいだろうということになり、その場が選ばれたのだ。
「あ~。それはもう、予想通りというか、予想以上の結果になりましたね」
「あれは凄かったです」
 頭痛をこらえるようにこめかみに手を当てるミアに対して、それまで黙って話を聞いていたココロが満面の笑みを浮かべてそう言った。
 ココロも腹違いとはいえ、実の妹ということで、そのパーティにお呼ばれしていたのだ。
 また、だからこそ、忙しい仕事の合間を縫って、こうしてミクの演奏をわざわざ管理層まで聞きに来ているのだ。
 完全にココロもミクのファンになったと言えるだろう。

 会話を続けながらウットリと演奏を聞いているココロを見たシュレインは、
「ココロがそこまで言うとは、相当だったのじゃろうの」
「トワお兄様の私的なパーティですから、相当耳の肥えた方たちが集まっていたにも関わらず、皆呆然としていましたからね」
「ふむ。一度劇場で聞いていたにも関わらずそれか」
「私のお知り合いの方は、あのときとは比べものにならないとおっしゃっていましたよ」
「それは、また」
 シュレインたちは、何度もミクの演奏を聞く機会があるので実感が少ないが、やはりミクの演奏は急成長しているらしい。
 劇場のときと合わせて二度目の演奏を聞くことになった者たちは、ココロがいま言ったような感想を口をそろえて言っていた。

「まあ、なんにせよ、ミアが苦労することになるのは、確定のようじゃの」
「・・・・・・言わないでください。いまでも頭が痛いのですから」
 からかうように笑いながら言ったシュレインに、ミアが渋い顔になって答えた。
「ふふ。まあ、いまのうちに苦労さえしておけば、あとが楽になるじゃろ。ミクの演奏の腕があれば」
「それも、頭痛の種のひとつなのですが・・・・・・」
 自分の立場を強化するのに妹を利用するなんて、という思いが透けて見えるミアの言葉に、シュレインはフフと笑みを浮かべるだけで、それ以上はなにも言わないのであった。
ココロもミクの演奏にやられました。
暇を見つけては演奏を聞きに来ています。
そして、ミアはやっぱり苦労することが決まっておりますw
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