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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第11部 第1章 塔のあれこれ(その23)

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(2)ミクの後見人

 それは猛々しくも時に優しい顔を見せる神聖な物語。
 春には命の芽吹きを讃え、夏にはすべてのものに暖かさを与える。
 秋には命のはかなさを教え、冬にはなにものも寄せ付けないような厳しさを見せる。
 それでも、そこに住まうすべてのものたちに、命のすばらしさを教える存在。
 はるか昔よりそこに存在しながらも四季折々の様々な姿を見せる。
 ときに優しく、ときに厳しく、すべてのものに自然の偉大さをみせてくれるもの。
 それは、人が自然の前にしては無力であることを教えてくれる。
 そして、同時にたとえようもない愛おしさを教えてくれるのである。

 ――――ということを昔の偉い人が、とある偉人の演奏を前にして解説してくれた・・・・・・そうである。
 なんとも他人事のような感想だが、実際に考助はフローリアからそんな話を聞いたので、あながち間違いではない。
 なんのことかといえば、先ほどミクが演奏した曲を聞いたあとのフローリアの感想だ。
 つい先ほどミクが、考助たちを前に、これまでの練習の成果を披露したのである。
 ちなみに、チート級の能力である魅了の力は完全に封じたうえでだ。
 いまのミクは、考助たちの前であれば、それくらいのことはできるようになっていた。
 見慣れない人の前で緊張した状態で演奏すれば、まだ魅了の力が漏れてしまうが、それでも以前の状態から比べれば、大進歩している。

 それはともかくとして、フローリアが思わず朗々と先の弁を述べるような事態になったのは、紛れもなくミクの演奏の力によるものだった。
 しかも魅了の力がない状態でそこまでの腕になっているのだから、空恐ろしいものがある。
 弾いたのは、とある地方にある山を讃えるための曲・・・・・・だと言われている。
 残念ながら曲だけが残っていて、作者やできた年代などの詳しいことは失われてしまっているのだ。
 それでも、この世界にいる誰もが知るような有名な曲なのである。

 管理層に来てからのフローリアは、自分が受けた教育の成果を披露することは珍しいのだが、それだけミクの演奏に感動したということだろう。
「・・・・・・なんというか、こういうときほど、自分の語彙のなさを悔しく思えるときはないよね」
 フローリアの感想を聞いたときの考助の言葉である。
「・・・・・・まったくですね」
 シルヴィアが深くため息をつきながら、考助に同調した。
 ほかの者たちも似たり寄ったりの状況なのか、フローリアの解説を茶化すことなく、ミクの演奏の余韻に浸っている。

 その中のひとりに、ラゼクアマミヤ現国王であるトワの姿もあった。
「いや、しかし、勿体ないですね。やはりいま一度人前で演奏して見てはいかがでしょうか?」
 半ば本気でそう言ってきたトワに、考助は特に表情を変えることもなく返答した。
「んー。まあ、ミク本人が望めばね」
 以前に行った劇場での演奏は、半ば伝説のものとして、人々の間で語られている。
 あれ以降、演奏者が一度も表舞台に出てきていないのだからなおさらだ。
 その噂に押されるようにして、出演者を手配したトワに対して、もう一度彼女の演奏を聞きたいという要望が殺到しているのである。
 勿論、トワはその要望をすべて断っているが、もしミクが出たいといえば喜んでその舞台を用意するだろう。
 だからこそ、あわよくば狙いで、時々こうして考助に対して冗談交じりに、出演依頼(?)を出しているのだ。
 もっとも、トワも考助の答えの通り、ミクが望まない限りは無理やり表舞台に出すことはしないのだが。

 考助の返答を聞いたトワが、わざとらしくため息をついた。
「それは、残念ですね」
 実際にはミクの答えなど聞いていないのに、すぐにこう答えを返すこと自体、あまり期待していないことがわかる。
 ただし、考助もそうだが、ほかの管理層の面々も、ミクの演奏を自分たちだけで独占しているのは勿体ないという意識はあるのだ。
 だからこそ、ふたりの会話を傍で聞いていたミアは、興奮冷めやらぬ様子でこういった。
「でも、いつまでも閉じ込めておくのは可愛そうよねえ」
「こればかりは、どうしようもないからの。・・・・・・ああ、そうじゃ」
 いいことを思いついたと言わんばかりの顔になったシュレインが、わざとらしくポンと手を打った。

 そんなシュレインに、フローリアが訝し気な表情を向けた。
「突然、どうしたのだ?」
「いや、なに。折角じゃから、ミアが後見人にでもなればいいのではないかと思っただけじゃ」
「えっ!?」
 唐突なシュレインの提案に、当人であるミアが驚きを示したのだが、ほかの者たちの顔色はむしろ好意的なものだった。
「・・・・・・なるほどね。確かに検討の余地はあるかな?」
 と、考助が言えば、
「そうですね。少なくとも私がなるよりは、遥かにいいでしょう」
 と、トワも同意して頷く。

 国王であるトワが後見人になるというのもいいのだが、なにぶん忙しい身であるために、あまり構って(?)上げることができない。
 それならば、王の実妹であり、なによりも現人神の実子であるミアが後見人につくのは、確かにいい案なのだ。
 ついでにいえば、最近になって表舞台に復帰したミアにとっては、ミクの存在がいい宣伝材料にもなる。
 もっとも、ミアが後見人になったとしても、そんな利用の仕方はしないだろうが。

 驚くミアを余所に、他の面々は真剣な表情でシュレインの提案を検討し始めていた。
「確かに、ミアであれば、実の姉妹ということで面目もたちますね」
「それはあり難いですね~。先生もそろそろ表に出してもいいのではと言っていますから」
 余計な虫が付くことを考えれば、他の者に任せるわけにもいかず、それを考えれば身内であるミアに任せるというのは絶好の案だった。
 ミアであれば、親であるピーチからしても、安心して任せられる相手になる。
 シルヴィアが言った姉妹云々というのは、ほかの余計な言い訳を退けるための強いカードになり得る。
 それ以上となると、実の親か祖父・祖母くらいしかいないだろう。

 それぞれの意見を聞いていた考助が、大きく頷きながらトワを見て言った。
「なるほどね。確かに、一度そっちで検討してもらってもいいかな?」
「勿論、喜んで。ですが、ミクの意思もきちんと確認してくださいよ?」
「それは勿論」
「ちょっと!?」
 ミクの意思は確認するのに、自分のはしないのかと言いたげな表情でミアは抗議の声を上げた。
 だが、ミアにとっては残念ながら、その声を拾い上げる者はひとりもいなかった。

 盛り上がる周囲を見ながら、ミアは弱弱しく肩を落とした。
「・・・・・・私の意見は誰も聞いてくれないのですね」
「未来ある若者のために、諦めるのだな」
 ミアの実母であるフローリアが、一応慰めるために肩を叩いたが、ミアの味方をしているわけではない。
 いまはどちらかといえば、フローリアもミクの味方なのだ。

 そして、いじけるミアの前に、最強の追い打ちがやってきた。
「ミアお姉様、どうしたの?」
 なにもわかっていない純真な表情で、小首を傾げながらミクがミアに近寄ってそう聞いてきた。
 その顔を見てしまえば、ミアもなんの文句も言えなくなってします。
「あっ、うん。いいえ! なんでもないのよ!」
「そうなの?」
「そうなのよ!」
 そう元気よくミアが返事をすると、考助がニンマリとした表情になって、
「そうだよね。ミアは勿論、ミクの味方だよねえ」
「ミアお姉様、私の味方?」
「勿論よ!」
 嬉しそうな顔になって聞いてきたミクを見ながら、心の中では考助たちに対して「卑怯者~!」と叫ぶミアなのであった。
ミアが苦労することはすでに決定ですw
ちなみに、ミクは順調にピーチの薫陶を受けて、暗部の技術を身につけて行っています。
これで、ミアのあとについて、一般的な貴族の常識を身に着けて行けば、最高の暗さ・・・・・・ゲフンゲフン、淑女となるのではないでしょうか。
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