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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 帰還

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(6)ふたりの気持ち

 クラーラとの通信を切った考助は、自分を見てくるシュレインに気付きながら、先ほどの話をどう伝えようかと悩んだ。
 別の素直にそのまま言ってもいいのだが、それによってシュレインがどう反応するのかが全く読めない。
 だからといって、内容を隠したままことを進めることは、不可能ではないがほぼ無理と言っていい。
 というよりも、自分ひとりで動こうとしても、知識不足でどうしてもシュレインに聞かなかなければならないことが出てくる。
 結局、その過程でシュレインにばれてしまう可能性が高いのである。

 そこまで考えた考助は、諦めてなにも隠さずに伝えようとした。
 だが、その前に、
「覚悟は決まったかの?」
 そう聞いてきたシュレインに、考助はため息をついた。
 自分中での葛藤は、すっかり見抜かれてしまっていたようである。

 ただ、その聞き方からシュレインが勘違いしていることもわかった。
 その誤解を解くために首を左右に振った。
「いや。別にいまの通信は、そこまで悪い話じゃないよ?」
 シュレインの顔は、クラーラからの通信の内容が、自分たちにとって芳しくないものだと思っているものだったのだ。
 案の定、考助の言葉で、シュレインはキョトンとした顔になる。
「・・・・・・なんじゃと? では、なぜ悩んでいたのじゃ?」
「あ~。それはね・・・・・・うん。クラーラの言葉をそのまま伝えるけれど、いい?」
「うん? なぜだかそう言われると、急に不安になってくるの。少し待ってくれるかの?」
 なにやら躊躇う様子のコウスケに、シュレインが待ったをかけた。

 そして、わざとらしく深呼吸をして見せたシュレインは、一度大きく頷いた。
「よし。準備はできたから、きちんと教えてくれるかの?」
 大げさな様子を見せたシュレインに、考助は苦笑を返す。
「じゃあ、言うけれどね。前に話した子供の話、覚えている?」
「それは、勿論覚えておるぞ?」
 考助が言っているのは、本来自分たちがいる時代のヴァンパイアで子供が少ない理由についての話だ。
 あのときは、その場で結論が出るはずがないかと、尻切れトンボの状態で話が終わっていた。

 シュレインは、なぜその話を今更するのかという疑問が思い浮かんでくるのとほぼ同時に、別の考えが浮かんできた。
「まさか・・・・・・」
「あっ。やっぱり気付いた? 恐らく間違っていないと思うから、言ってみて」
 先を促す考助に、シュレインは少しだけ間を置いてから、同じ言葉を繰り返した。
「まさかと思うが、その理由をしっかり探れというわけではないじゃろうな?」
「はい! ビンゴ!」
 わざとらしくテンションを上げて返してきた考助に、シュレインは思わず頭を抱えるのであった。

 しばらく頭を抱えていたシュレインは、やがて復活してから頭を上げた。
「大地母神のいうことだから間違いはないと思うがの・・・・・・。元の時代に戻ることとそれが、一体なんの関係があるのじゃ?」
「うーん。なんて言ったらいいかな? ・・・・・・僕らが戻るのには、いくつか大きな扉があると思ってね」
 そう前置きをした考助に、シュレインは頷いた。
 そこから考助が説明した内容は、次のようなものだった。

 今回の過去への移動は、水鏡と錫杖の使用実験の事故のようなもので起こっていた。
 結果として、正規の手続きから外れた状態で過去へ渡ってしまっている。(正規の手続きに関しては、いまは除外)
 そのため、簡単に元の時代に戻すというわけにはいかず、いくつかの手順を踏む必要がある。
 その手順というのが、扉を開けるための鍵に類するものを探すことであり、そのうちのひとつがヴァンパイアの子供問題というわけだ。
 ちなみに、考助たちは、すでにいくつかの鍵を自力で見つけて扉を開けることに成功していたりする。

「――――というわけで、この時代と元の時代の相違点を見つけて解決策を探ってほしい・・・・・・んだって」
「・・・・・・そうか」
 長めの考助の説明に、シュレインは感慨深げに頷いた。
 考助にとっては思ってもみなかったシュレインの反応に、内心で「あれ?」と疑問に思っていた。
 てっきり呆れるとか、疑わしく思われると考えていたのだ。
「シュレイン・・・・・・?」
 探るような視線で自分を見て来た考助に、シュレインは自嘲するような笑みを浮かべた。
「いや、なに。吾が種族は、神々にも心配されるほどなのかと考えたのじゃ」
「ちょっと待って。それは、盛大な誤解だよ」
 なにやら落ち込みそうな雰囲気のシュレインに、考助が慌てて右手を振った。
「もし本当にそうなら、わざわざこんな方法取らないって。せっかく加護与えているんだから、神託を与えるなり交神するなりするよ」
「・・・・・・あ」
 考助の言葉に、シュレインは思わず呆然とした表情になった。

 シュレインの表情を確認した考助は、心配そうな顔になった。
「本当に、大丈夫? こっちに来て気弱になっていない?」
 普段のシュレインであれば、すぐに気付きそうなことにも気が付かず、滅多に見せない気弱な態度を取っている。
 考助が心配するのも無理はなかった。
「そんなことは・・・・・・いや、確かにあるかもしれんの」
 一度は否定しようとしたシュレインだったが、すぐに首を左右に振って考助の言葉を肯定した。
 確かにいまの自分は、普段とは違って負の方向に思考が偏っていると感じ取ったのだ。

 それを見ていた考助は、スッと立ち上がってシュレインの傍へと近寄って行った。
「・・・・・・コウスケ?」
 立ち上がっている考助を見上げるようにしながら、さらに首を傾げるシュレインの背後に立った考助は、そのままスッとしゃがみ込んだ。
 そして、両手を広げてそのままシュレインを軽く抱きしめた。
「コ、コウスケ!?」
 滅多にない考助の直接的な抱擁に、シュレインが慌てたような声を出した。
 そんなシュレインに構わず、考助はそのままの状態で、
「ひとりじゃないんだから、シュレインはもっと僕を頼ってもいいんだよ?」
 シュレインは、自分の耳元でそう囁いてきた考助の腕をギュッと掴むのであった。

 
 考助がシュレインを抱きしめてからしばらくたった。
 時間が経過すると自分のしでかした(?)ことが理解できて来たのか、考助はシュレインを抱きしめていた腕をパッと離した。
「・・・・・・コウスケ?」
 シュレインは思わず不満そうな顔を向けたが、考助はそれに気づかずに顔を真っ赤にして言った。
「ああ~。いや、ゴメン。なんか、突然衝動に駆られたというか、なんというか・・・・・・!?」
 そういう(・・・・)関係になってからすでに二十年以上経つのに、いまだにこんな顔を見せてくる考助を見て、シュレインはクスリと笑った。
 これが良くも悪くも自分が惚れこんだ男だと、改めて認識したのだ。
「・・・・・・ふむ。吾としては、もう少し続けてほしかったのじゃがの」
「えっ!? いや、それは、その・・・・・・」
 いまの素直な気持ちを告げたシュレインに、考助は顔を赤くしたまま手をパタパタと振っていた。

 数十秒ほどそんなことをしていた考助だったが、シュレインの視線に負けたのか、おずおずと手を伸ばして、先ほどと同じようにシュレインを抱きしめた。
 そして、その考助の抱擁を受け入れたシュレインは、心地よい感覚にしばらくの間、安心したように身をゆだねるのであった。
爆ぜろ!

・・・・・・いや、しかし今更ながらに思ったのですが、これだけ書いていてこういうシーンって少ないですよね。
なにやら書いていて、こっちが気恥ずかしくなっていましたw
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