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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 錫杖の役割

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(8)突破口?

 長老の協力のもと、考助とシュレインは十人ほどの大地母神を信仰している者と対面した。
 その結果、そのすべての者がふたりの姿を見ることができ、さらに信仰の深さによって見え方が違っていることもわかった。
 この場合の信仰の深さというのは、大地母神をメインで祭る儀式などの務めたことがあるなどの具体的なものから、普段の何気ない信仰まで含まれていることまでわかった。
 特に、アネタやルーミヤが考助とシュレインの姿をはっきり見ることができたのは、里で行う儀式の祭司を務めたり、普段から大地母神をあがめていたことが分かっている。
 イネスの場合は、母親であるアネタの影響を受けて、普段何気ないとこで大地母神に感謝を捧げていた。
 ちなみに、考助とシュレインの姿をはっきり見ることができるのは、アネタとルーミヤだけで、他は長老のようにぼんやりとしか見えなかったり、顔がはっきりしなかったりという感じだった。
 これは、アネタやルーミヤが、里での祭司役を務めている影響が大きいと、考助やシュレインは考えている。
 たった十数人での検証で結論付けていいのかという考えもあるが、考助とシュレインは、これでいいと考えていた。
 なによりも、大地母神を普段から信仰している者が、思った以上に少なかったため、これ以上は意味がないと判断したこともある。
 考助たちがいる時代では考えられないことだが、この時代ではこんなものだということがわかっただけでも十分である。

 考助とシュレインにとっては、大地母神クラーラが重要な存在だとわかったところで、あとはもとの時代に戻るためにどうすればいいのかというのが問題になる。
 それを検証するために、シュレインはアネタとルーミヤを長老に用意された庵に呼んでいた。
「――――というわけで、なにか思い当りはないかの?」
 シュレインの問いに、アネタとルーミヤは顔を見合わせた。
 ふたりにしてみれば、いきなりそんなことを言われても、といった感じなのだ。
「そういわれても、私は長老の娘だから重要な祭司役を務めたくらいで、さほど大地母神に詳しいわけではないわよ? やっぱり里で一番詳しいのはルーミヤでしょう?」
「わ、私ですか!?」
 アネタに話を振られたルーミヤは、目を見開いて驚きを示した。

 確かにアネタの言う通り、里の中で大地母神に一番詳しいのが誰かと言われれば、自分だという自負はないわけではない。
 ただ、だからといって、いまの考助とシュレインの状況を解決できるような知識は持ち合わせていない・・・・・・はずだ。
 念のため自分の知っていることを思い出すように、天井を見上げていたルーミヤだったが、やがて諦めたように首を左右に振った。
「・・・・・・やっぱり駄目ですね。思い当ることはなにもありません」
 ルーミヤが知っている大地母神の知識は、あくまでもその年の豊穣を祈ったり、実りに対する感謝を捧げるもので、アムに関係するようなものはなかった。

 無念そうな表情を浮かべるルーミヤに、シュレインは気にするなという感じの顔になった。
「なに。ルーミヤがなにも知らないというだけでも十分に役に立つことじゃ。里の者は今回の件はまったく知らないということを前提に考えることができるからの」
 考助やシュレインにとっては、里の者たちが対処できるのかできないのか、中途半端な状態でいることが一番困るのだ。
 いまシュレインが言った通り、まったくわからないのであれば、無駄に里の者に聞くのではなく、自分で調べていけばいいだけである。
 勿論、いちから自分で調べるとなると、里の者が知っている場合よりも時間はかかる。
 だが、いままでのように里の者に聞いて回る時間をほかのことに回すことができる。
 それに、アネタとルーミヤがこの時代の大地母神の信仰をよく知っているので、まったく役に立たないということはない。

 シュレインの説明に納得の表情を浮かべたアネタとルーミヤは、次いでほっとした表情になった。
 長老からはできる限り考助とシュレインに協力するように言われているので、役に立てないのではと考えていたのだ。
「では、なにをお知りになりたいのでしょうか?」
「まあ、待つのじゃ。いくらなんでもすぐには思いつかない・・・・・・ん? コウスケ、どうしたのじゃ?」
 自分が思いつかないと言ったのとほぼ同時に、考助がそわそわしだしたことに気づいたシュレインが、考助を見て首を傾げた。

 シュレインから話を振られた考助は、大地母神を信仰している里の者と話をしているときから気になることがあった。
 それがなにかといえば、
「ふたりに聞きたいんだけれど、シュレインの持っている錫杖はどう見えている?」
「錫杖?」
「錫杖、ですか?」
 考助の問いに、アネタとルーミヤは同時に首を傾げた。
 それを見た考助は、自分の予想が正しかったと確信した。
「やっぱり、ふたりには、錫杖ははっきりとした形で見えていないのかな? シュレインが常に持っているはずなんだけれど」
「なんじゃと? 本当なのか!?」
 思ってもみなかった考助の言葉に、シュレインは目を見開いてからアネタとルーミヤを交互に見た。

 シュレインからの視線を受けて、アネタとルーミヤは戸惑った表情を浮かべた。
「私は、シュレイン殿が左手に常になにかを持っているということはわかっていたけれど、なにを持っているのかまではわからないわね」
「私の場合は、長い棒のようなものということくらいしか、見えません」
 シュレインは、アネタとルーミヤでも見え方が違っているとわかってさらに驚いた。
 そして、考助を見て難しい顔になった。
「コウスケ?」
「ああ、うん。まあ、とりあえず、この場にイネスにいてもらったほうがいいかもしれないね」
 いまのところ錫杖をはっきりと見えているとわかっているのは、イネスくらいだ。
 考助もシュレインも、最初のうちはそんなところに違いがあるとは考えていなかったので、確認していなかった。
 いずれ長老にも確認を取る必要はあるかもしれないが、とりあえずはイネスから話を聞いたほうがいいと、考助は提案するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ルーミヤに呼ばれて考助たちのいる庵に来たイネスは、なぜか引き攣った顔になっていた。
「いや、いきなりその顔はないと思うんだけれど、なにか変なことでもしたの?」
 思わず考助がそう突っ込むと、イネスは慌てて首を左右に振った。
「い、いえ。なにか緊迫した空気になっていたので、私がおかしなことでもしたのかと・・・・・・」
 イネスは、庵の中に漂っていた緊迫した空気を、敏感に感じ取っていたのだ。
 それが、自分にとって悪い想像をしたのは、積み重ねた年齢のせいかもしれないが、その感覚は悪くないとシュレインは内心で感心していた。

 そんな考えなどおくびにも出さずに、シュレインは首を左右に振ってから笑みを浮かべた。
「そんなわけないじゃろう? そなたはよくやってくれている。いまは聞きたいことがあったから呼んだのじゃ」
 シュレインは、イネスを安心させてから自分の要望を伝えた。
 せっかく突破口が見つかりそうなのに、肝心の人物が変に緊張してしまっていては意味がない。
 そう考えてのシュレインの言葉だったが、イネスはあからさまにほっとした表情になった。
 その顔を見て、シュレインは自分のいるべき時代のイネスも、ここまで素直だったらなとどうでもいいことを、笑顔の裏で思い浮かべるのであった。
相変わらず弱腰(?)なイネスでしたw
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