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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 過去へ訪問

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(9)よそ者を受け入れるということ

 長老の家に到着したゲルタとイネスは、早速家主と対面して考助とシュレインのことを話した。
「珍しくお主が来たと思えば・・・・・・また、ややこしい問題を持ってきたな」
 ダンディーな髭を蓄えたヴァンパイアの長老は、ゲルタに向かってそう言ってきた。
 口元が笑っていることから、怒っているわけではないことはわかる。
 そんな長老に対して、ゲルタは肩をすくめた。
「またというのが引っかかりますが、少なくとも今回に限っては私ではなく、不肖の弟子の仕業だな」
「えっ!?」
 まさかこのタイミングで自分に話がふられると思っていなかったイネスは、思わず驚きの声を上げた。
 イネスにしてみれば、薬草を取りに行った帰りにモンスターに襲われて、助けられた相手がアムだったのだ。
 それを自分のせいにされてもなんとも言い難い。
 ちなみに、里に連れてこなければよかったとか、その場でお礼を言って別れればよかったという考えは、イネスの頭の中にはない。

 そんなイネスの思いがしっかりと顔に出ていたのか、長老がフォフォと笑った。
「そんな顔をするな、イネス。別に責めておるわけじゃ・・・・・・いや、少しは責めておるな」
「ええっ!?」
「それは仕方あるまい? アムの話には、悪しきものが暴れるというものもあるのじゃからな」
「でも、コウスケさんとシュレインさんは・・・・・・」
 違うと続けようとしたイネスを、長老は右手の手のひらを見せて止めた。
「まあ、待て。別に、其方の目を疑っておるわけではない。だが、それだけで疑いを持つのを止めてしまうのも間違っているぞ?」
「うぐっ」
 すっかり考助とシュレインのことを信用していたイネスは、長老の言葉に言葉を詰まらせた。
 長老の言う通り、外部の者を完全に信用するには、時間が短すぎる。
 本来であれば、信用や信頼というものは、長い時間を掛けて得ていくはずのものなのだ。

 黙ってしまったイネスを見て、ゲルタが笑みを見せながら長老のほうを向いた。
「まあまあ、イネスに注意するのは、それくらいにしてくれ。イネス、一応言っておくが、其方の対応が間違っているわけではないからな?」
「え?」
 いままでと真逆に近いことを言われたイネスは、驚きで目を丸くした。
 その顔には若干の混乱もある。
「なにを驚いている? イネスがあのふたりを里に連れてこなければ、吾らはふたりの存在を知ることすらできなかったのだぞ?」
 そう前置きをしたゲルタは、イネスがやったことが正しかったと続けて主張した。

 イネスが狼に襲われた地点で考助、シュレインと別れていれば、当然ふたりは里に来ることはなかっただろう。
 もしかしたら黙ってあとを付いてきたかもしれないが、それはあくまでも可能性の問題だ。
 イネスがふたりを里に案内したからこそ、ゲルタも長老もふたりの存在に気付くことができたのだ。
 もちろん、長老が言った通り里が危険な目に合うかもしれないが、それはこれから先の対応次第でもある。
 少なくともゲルタがシュレインと筆談した感じでは、いきなり襲ってくるような性格だとは思えなかった。
 それも偽装している可能性はあるが、それは別に、アムでなくとも同じことで、どんな種族を連れてきても同じような状況になる。
 危険な可能性があるからと、里の外から来る全ての者を排除してしまえば、里は停滞してしまうだろう。

 そんなことを滔々と語ったゲルタは、一度話を区切ってからイネスを見た。
「だからな。長老もいまはまだ怒っているわけではないさ。ふたりを追い出すかどうかは、これから決めるだろうからな」
「そう、なのですか?」
 イネスはそう言いながら、そっと長老に視線を向けた。
 その当人は、ゲルタの話を聞いて、口の端を上げていた。
「まあ、そういうことだ。まずは会ってみないことには、今後どうするかの判断はできないだろう? ・・・・・・まあ、会うといっても姿を見ることができるかはわからないが」
 イネスが会った考助とシュレインの対応で難しいのは、普通の人と違って顔や仕草が確認できないことだ。
 もっとも、長老がふたりの姿を見ることができるのか、それともできないのかは会ってみないとわからないので、いまから考えても仕方のないことだ。

 長老の言葉を引き継いで、今度はゲルタがイネスに言葉を掛ける。
「そういうことだから、其方はあのふたりを信じられるだけ信じればいい。疑うのはこちらの役目だ」
「そうだな」
 ゲルタの言葉に、長老も頷いた。
「はい!」
 ふたりからの言葉を受けたイネスは、笑みを浮かべて頷くのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 イネスたちが考助とシュレインの扱いについて話をしている間、ふたりはふたりで話を続けていた。
「それにしても、イネスって、あの(・・)イネスだよね?」
 老化という意味では、ヴァンパイアはヒューマンのようにはっきりとした変化が現れるわけではないが、それでもある程度の違いは出てくる。
 いまのイネスの見た目は、どう考えても少女といったほうがふさわしい姿なのだ。
 考助の疑問に、シュレインは少しだけ沈黙して頷いた。
「・・・・・・恐らくじゃが」
「いくらヴァンパイアが長寿だからといって、一万年近く生きられるの?」
「例の装置で魂だけの存在でいた期間があったとしても、さすがにそれは無理じゃ」
 シュレインの端的な答えに、むしろ考助はホッとしたような顔になった。
 万年単位で生きていられるとなると、神そのものだと言われてもおかしくはないのだ。

「そうだよね? だとしたら、これってどういうことなんだろう?」
「まあ、先ほど言った見積もりは、かなりざっくりとしておるからの。さすがに言い過ぎたかもしれんの」
 悪びれなくそう言ったシュレインを、考助はジト目になった。
「万年単位と千年単位は、だいぶ違うと思うんだけれど?」
「そうともいうの」
 ついと自分から視線を逸らしたシュレインを見て、考助は大きくため息をついた。

 考助はぐるりと庵の中を見回してから、シュレインをもう一度見た。
「外見もそうだけれど、中身も随分と時代がかっている気がするけれど、間違っていないよね?」
 庵といっても間違っていないような小さな建物と、中にある生活用品その他の置物を見れば、いま考助たちがいる時代がかなり昔だということはわかる。
 シュレインもそうした物を見て判断したのだということは、考助も理解していた。
「うむ。そもそもヴァンパイアがこんな形式の建物に住んでいたというのは、ほとんど伝説に近いほどの昔のことじゃからの。それに、使っておる文字も相当古い物じゃ」
 シュレインがゲルタとの筆談で使っていた文字は、一般のヴァンパイアでさえ理解することが難しいような古い文字だった。
 なぜそうした文字をシュレインが知っているのかといえば、幼少期に受けた教育のお陰でもあるが、古い文献を読むために必要でもあるためだ。
 最近のシュレインは、古い儀式を調べるために、そうした古い文字も頻繁に目にしていたのである。

 考助と同じように庵の中を見回したシュレインは、ぽつりと呟いた。
「それに、もしかすると・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・いや、なんでもない。まだ材料が少なすぎるからの。不確定要素は話さない方がいいじゃろう」
 首を振りながらそう言ったシュレインに、考助は少しだけ首を傾げつつも頷いた。
「そう。それだったら、はっきりしてから教えてくれればいいよ」
 不用意に情報を得られたとしても判断を間違う可能性もある。
 シュレインの中で確定してから話を聞いた方がいいということは、考助もわかっているのである。
イネスたちの話し合いと考助たちの話し合いでした。
いまのイネスは若いです。
見た目は大体中学三年~高校一年の間くらいでしょうか?

ちなみに、シュレインの最後のつぶやきはフラグです。
すぐに回収(少なくとも今回の話の中で)する予定ですので、ご安心(?)くださいw
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