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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 錫杖の変化

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(4)予想外の提案

祝! 千話達成!
「早く用事を済ませないと他のたちに恨まれそうだから、さっさと終わらせましょうか」
 考助とエリスの話がひと段落すると、クラーラがそう提案してきた。
「そこまで急ぐ必要ある? 最近は落ち着いていると思っていたけれど?」
 定期的に神域に来るようになってからは、一時のような混乱ぶりは落ち着いているように見えていたため考助は首を傾げた。
 それを見たクラーラは、少しだけ呆れたような顔になる。
「あのね、考助。それは単に、あまり押しすぎると返って考助が引いてしまうとわかったからよ。見えないところでの争奪戦は、相変わらずよ?」
「なにそれ、怖い」
 アスラや三姉妹は、そんなことを言っていなかったので、考助はてっきり完全に落ち着いているのだと思っていた。
 だが、クラーラの言葉を聞く限りでは、外ではいろいろな駆け引きが行われているようだ。
「初対面のときほど効果は無いとはいえ、考助と会えば神として良い影響ができるのだから当然でしょう?」
 神域に住まう女神たちにとって、考助の存在はアースガルドとの懸け橋に他ならない。
 直接降臨する機会などほとんどない女神たちには、考助はアースガルドの「空気」を直接感じとることができる絶好の機会なのだ。

 クラーラの説明に、考助は渋い顔になった。
「なんか、空荷を運ぶ運搬船になったみたいだ」
「あら。似たようなものじゃない。・・・・・・それだけじゃないけれど」
 最後のクラーラの呟きは、考助には届かず、横で聞いていたアスラにはしっかりと聞こえた。
 だが、アスラはそのことは何も言わず、笑顔になってクラーラを見た。
「ほらほら。考助をからかうのはそのくらいにしたら? 早く考助を解放したほうがいいのよね?」
「あら。そうでした」
 アスラの言葉に、わざとらしく口元に手を当てたクラーラは、そう言いながら考助を見た。
 その目が楽しそうに曲がっているのを発見した考助だったが、なにも言い返さずに、ただため息をついた。

 
 そんな考助を見ながら、クラーラは本題に入ることにした。
「それで? 単に宝玉を小さくすればいいのかしら?」
「うん。まあ、それは必要最低限だけれど、例えばこんなことができるかな?」
「あら。なるほど。それは面白そうね」
 考助の提案に、クラーラが楽しそうに頷いたのだが、そこで意外な乱入者が現れた。
「それでしたら、こうするのは――――」
 考助とクラーラの間に入ってきたのは、それまで黙って話を聞いていたエリスだった。
 考助には、どこか微妙にいつもより目が輝いているように見えた。

 そのエリスの様子を疑問に思うよりも先に、考助はその提案のほうが気になった。
 エリスの言った内容が、考助の制作心をくすぐるものだったのだ。
「ああ、なるほど。でも、それだったら――――――」
「あら。でも、それだとバランスが――――」
「いえ。それは、ありかもしれません。ですが――――」
 エリスの提案を起点にして、考助、エリス、クラーラは、様々な提案を出し始めた。
 その結果、宝玉を含めた錫杖のリニューアルは、考助も考えていなかった方向に伸びて行くことになる。
 ただ、その様子をほかに見ていたのはアスラだけで、三人の会話を止めもせずにニコニコと笑いながら見守っていたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 アスラの神域を訪ねた考助は一泊する。
 それはすでに暗黙の了解になっているため、考助も抵抗することなく一泊に了承して、夜には女神たちとのパーティを楽しんだ。
 そして、その翌日には宝玉の改良を済ませたクラーラが、アスラの屋敷を訪ねてきて考助に宝玉を手渡していた。
 いくら大地母神といえど、一瞬で話した内容の改良をできるわけもなく、一晩預かるという形を取ったのだ。
 その甲斐あって、宝玉の改良は無事に済んでいた。
 クラーラから宝玉を浮かべて受け取った考助は、満面の笑みを浮かべてからアマミヤの塔へと戻った。
 そして、塔の管理層へと戻った考助は、皆への挨拶をそこそこに、研究室へと引き籠った。
 早速手に入れた宝玉を錫杖へと組み込むのと同時に、エリス、クラーラと話したことを、錫杖に反映し始めたのである。
 結果、考助が研究室と食堂を往復する生活を終えたのは、管理層に戻ってから二日後のことだった。

「シュレイン、できたよ!」
 コウヒかミツキに言われたのか、風呂に入ってさっぱりとした様子で、考助がシュレインに向かってそう言ってきた。
 その手には、錫杖が握られている。
 だが、なぜかシュレインは、その錫杖をすぐには受け取ろうとしなかった。
「・・・・・・どうしたの?」
 そのシュレインの様子に考助は首を傾げる。

 不思議そうな顔をしている考助に対して、シュレインは頬を引きつらせた。
「いや、なんだか、コウスケのその顔を見ていたら、受け取らない方がいい気がしたのじゃが?」
「げ。な、なにそれ?」
 シュレインのいいように、考助は傷ついたような顔になった。

 だが、傍で考助とシュレインの話を聞いていたシルヴィアが、珍しく考助に追い打ちをかけて来た。
「コウスケさん。それ、私も同意します」
「えっ!? シルヴィアまで?」
「あ、あの。誤解しないでください。私が言っているのは、コウスケさんの顔がどうのということではなく、その錫杖から感じる力のせいです」
 慌ててそうした釈明したシルヴィアに同意するように、シュレインも頷いた。
「うむ。以前と違って、はっきりと力を感じ取ることができるようになっておるのじゃが? 一体、どんな改造をしたのじゃ?」
 考助の顔が云々発言をなかったことにしたシュレインは、首を傾げつつそんなことを聞いてきた。

 シュレインとシルヴィアから呆れたような、責めるような視線を向けられた考助は、
「あれ? どこかで調整間違ったかな? 力が漏れているはずはないんだけれど・・・・・・?」
 そんなことをぶつぶつ呟く考助に、シルヴィアが半眼になった。
「コ・ウ・ス・ケ・様?」
「隠し事はしないで、さっさと吐いてくれないかの?」
 両目を吊り上げるシュレインとシルヴィアに、考助は両手の手のひらをふたりに向けながら先日神域で起こったことを話し始めた。

「いや。最初は小さくした宝玉を取り込むつもりだったんだけれどね。なぜか途中からエリスが参加してね」
「はい? エリサミール神が?」
 思ってもいなかった名前が飛び出してきて、シルヴィアがきょとんとした顔になった。
「そう。エリスが錫杖の改造案を提案したら、それにクラーラが乗ってきて、三人でいろいろ話をしていたらいつの間にかこの錫杖を作ることになっていた」
 実に簡潔な考助の説明だったが、間違ったことは言っていない。
 それどころか、いまの言葉で、シュレインが絶望的な表情になっていた。

 そのシュレインの顔を見て首を傾げた考助に、シルヴィアがため息をつきつつ答えた。
「それは要するに、エリサミール神とクラーラ神が、シュレインはこの錫杖を使うべきだとおっしゃったというわけですね」
「えっ!? いや、別にそんなことはないと・・・・・・」
 思う、と言おうとした考助だったが、シルヴィアは首を左右に振った。
「お二方は、この錫杖がシュレインの物だということはわかっているはずです。それにもかかわらず、コウスケさんにそんな提案をしてきたということは・・・・・・そういうことです」
「うーむ。そういうことになるのか。・・・・・・だってさ。良かったね、シュレイン」
 考助にしてみればあのときの会話は、単に興が乗ったうえでの雑談にちかいものだったのだが、シュレインやシルヴィアにとっては違ったらしい。

 考助は、内心で首を傾げつつもそれを受け入れることにした。
 そして、まだ受け取ろうとしないシュレインに、ズイと錫杖を差し出すのであった。
錫杖(改)、爆誕!

今回はどちらかといえば、珍しく(?)エリスのせいです。
あそこでエリスが口を挟まなければ、単に小改造をしただけでおわったはずです。
・・・・・・タブン。
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