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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 錫杖の変化

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(3)作成依頼

最初の一話目が本編ではないので、明日で本編千話達成です!
『できなくはないけれど、物の受け渡しに考助に来てもらったほうがいいわね』
 シュレインがクラーラに交信すると、返ってきた答えがこれだった。
「いいの・・・・・・ですか?」
 シュレインの口から思わずついて出たのは、普段の口調ではなく敬語だった。
 あまりにあっさりとクラーラが許可を出したので、呆然としてしまったのだ。
『いいわよ。それもこれも考助という存在がいるからできることだけれどね』
「受け渡し、ですか」
 神が作った物をアースガルドの住人に渡すためには、降臨しなければならないという高いハードルがある。
 その逆もまたしかり。

 ところが、考助という存在がいれば、その点はなんの問題もなくのである。
 もっとも、考助がアスラの神域に行けば、もれなくほかの女神たちの歓迎を受けなければならないという問題(?)は付いてくることになる。
『そういうことね。それに、どういったものを作るのか、きちんと話を聞くのに一度はこっちに来てもらったほうがいいでしょう?』
「なるほど。確かにその通りじゃの」
 クラーラの言葉に納得して、落ち着いたシュレインがなんとか普段通りの口調に戻っていた。
 ちなみに、このときシュレインはクラーラの顔を見れていなかったが、神域にいたクラーラは満足げな表情になっていた。
『とにかく、作業自体は問題ないから考助にはこっちに来るように伝えておいてね』
「わかったのじゃ」
 シュレインが返事をすると、すぐに交神が切れてしまった。
 クラーラはなにも言っていなかったが、忙しかったのかもしれないとシュレインが考えるのは当然の流れだったが、残念ながらその答えは誰からも得られなかった。

 
 クラーラとの交神を終えたシュレインは、早速考助に先ほどの内容を話した。
「――――なるほど。確かにその問題があったか」
「うむ。言われるまで気付けなかったのは迂闊じゃったな」
 考えてみなくとも、神域にいる女神にアイテム作成を依頼するとなると、物の受け渡しは最大の問題となる。
 とはいえ、考助がいる限りは、その問題は問題ではなくなるのだが。

 そのふたりの会話を横で聞いていたシルヴィアが、ジト目になって言った。
「そもそも、女神に道具を作ってもらうということ自体があり得ないことに気付きましょうね」
「うっ!?」
「あ、ハハハハ」
 シルヴィアの突っ込みに、シュレインが言葉に詰まり、考助は笑ってごまかした。
 いまだにクラーラとの交神に慣れているわけではないのに、しっかりと交渉をしていること自体、シュレインが考助に毒されてしまっているともいえる。

 とはいえ、シュレインは言葉を失うだけではなく、しっかりとシルヴィアに反撃もした。
「・・・・・・あり得ないということには大いに同意するが、シルヴィアにそんな顔をされるいわれはないと思うがの?」
「・・・・・・どういう意味でしょう?」
「なに。考助に毒されているという意味では、其方も同じだと思っただけじゃ」
「うっ!? い、いえ! そんなはずはありません!」
 シュレインと同じような反応をしたシルヴィアだったが、すぐに立ち直って憤然と言い返してきた。
 だが、見る者が見れば、その反論は勢いがないことに気付けるものだった。
 シュレインもそのうちのひとりで、すぐに鼻でフッと笑った。
「そうか? まあ、そういうことにしておこうかの」
 シュレインの顔を見れば、どちらに分があるかはすぐにわかることだった。

 そんなふたりのやり取りを第三者的な立場で見ていたフローリアが、ぽつりとこぼした。
「・・・・・・どっちもどっちだと思うがな?」
 小さく呟かれたその言葉だったが、しっかりとふたりには届いたらしく、揃ってその視線をフローリアへと向けて来た。
「な、なんだ?」
「「人のことをとやかくいえる立場かの(ですか)?」」
「言えないな」
 ふたりからにらまれたフローリアは、すぐにそう答えた。

 そして、その三者のやり取りを見ていた考助はといえば・・・・・・。
「なんだか、ひどい言われ方をしている気がするんだけど?」
 といったものの、それに答えを返す者はなく、ひとり寂しい思いをしていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シュレインがクラーラと交神をした翌日、考助は早速神域を訪ねていた。
「よく来たわね。話は聞いているわよ?」
 そういって出迎えたのは、アスラだった。
 考助が神域へと送還陣を使ってくる場所は、アスラの屋敷に固定されているので、必然的に最初に出迎えるのはアスラということになる。
「昨日の今日なのに、話が早いね」
「なにを言っているのよ。考助のことに関しては、すぐに情報を上げるように伝えているもの。これくらいは当然よ」
「えっ!?」
 そんな話は欠片も聞いたことが無かった考助は、驚いてアスラを見た。

 その考助の反応を見て、アスラは可笑しそうにクスリと笑った。
「半分は冗談だけれどね」
「・・・・・・半分?」
「そう、半分。考助の話がすぐに伝わってくることは本当。でも、わざわざ命令しなくても伝わってくるわね」
 むしろ考助にとっては悪くなっている情報に、話を聞いた当人はげんなりとした顔になる。
「そんな顔をしないの。いまこの神域では、あなたの噂話が一番重要な情報になっているのよ」
「それ、むしろより悪くなっている気が・・・・・・」
 神域での自分の立場を理解している考助ではあるが、それでも大げさな気がしてならない。
 檻の中にいるパンダになったような気がした考助が、ため息をついたのも仕方のないことだろう。

 
 考助がアスラとあいさつ代わりの会話をしていると、部屋のドアがノックされた。
「アスラ様。よろしいですか? クラーラが来ていますが」
 声の主はエリスだったが、一緒にクラーラも来ているようだった。
「ええ、勿論よ。一緒に入ってもらって」
「かしこまりました」
 その返事と同時にガチャリとドアが開き、エリスと一緒にクラーラが入ってきた。

 まずはアスラに頭を下げたふたりは、そのあとに考助へと視線を向けた。
「では考助様。早速見せてもらってもいいですか?」
 そう言ってきたのがエリスだったことに、考助が驚いた。
「あれ? エリスが興味を示すと思わなかったんだけれど、なにか問題でもあった?」
「・・・・・・問題というわけではありませんが、考助様が作った道具に興味があっただけです」
 珍しく狼狽えたような表情になったエリスに首を傾げた考助に、アスラが口をはさんできた。
「考助。例のあの場所にあるアイテムのほとんどは、エリスが集めて来た物よ。考助が作った物に興味を示すのも当然でしょう?」
「アスラ様!」
 慌てた様子でエリスが抗議をしたが、当然ながら(?)アスラにはまったく効果が無かった。

 その様子に苦笑した考助は、宝玉を渡そうとして首を傾げた。
「この宝玉は僕が作ったわけじゃないんだけれど、まさか興味があるのは錫杖のほう?」
「勿論そうです」
 そう即答してきたエリスに、考助は不思議に思いながらも錫杖を彼女に渡した。

 そもそも精霊との契約でできた宝玉は、エリスにとってはこの世界の理でできた物なので、さほど珍しいという物ではなかった。
 それよりも、考助が作った道具に興味を示すのは、エリスにとっては当たり前のことなのだ。
 あとからそうエリスから説明された考助は、喜ぶべきなのか、戸惑うべきなのか、なんとも複雑な表情になるのであった。
他人からすれば、わざわざ神域まで!? という感じですが、考助にしてみれば、車で温泉地に遊びに行くような旅行気分です。
そこにいるのは、女神という珍獣どころでは済まないような大物たちですが。
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