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第184話 うちゅうを つくった そんざいとして しんわに えがかれている。

遂にGW最終日……('A`)

仕事なんかせずに毎日小説書いたりゲームしたりして暮らしたいなあ……(駄目人間)

『ふむ、どうやらここまでのようじゃの』


 戦いの最中、木龍は諦めたように呟いた。

 まだ負けたわけではない。やや不利ではあるが逆転も可能だ。

 しかし彼は、己の終わりが訪れた事を察して空を見上げた。

 既に消えた天龍や土龍を構成していた膨大なマナが何処かへ移動しているのが分かる。

 死に体の火龍も光の粒子となり、己も時間の問題だろう。


「え?」

『幕が降りたのじゃよ……この物語の幕がな』


 幕引きの時が遂に訪れた。

 世界の終末の先にある物語の破局。とうとうその瞬間が来てしまった。

 ここまでプロットから逸れて滅茶苦茶になってしまっては、もう物語は成り立たない。

 後は女神がシナリオを破り捨てるだけだ。

 木龍は我が子との邂逅の時を惜しみながらも、消える前の最期の仕事を果たすべくポルクスとカストールを見た。

 そして目から淡い輝きを放ち、二人の身体を満たす。


「こ、これは?」

「ち、力だ……力が溢れて来る」


 ポルクスのSPが再び無限となり、更にステータスが上昇する。

 更にスキル欄には今まで見た事もないような……世界の調停者たる龍のスキルが加わっていた。

 それと同時に木龍の身体が薄まり、光の粒子となる。


「あ、貴方一体何を!?」

『儂の力と、龍としての権限を可能な限りお前達へ譲渡して儂との繋がりを断ち切った。

これでもう、お前さん達は儂のアバターではない……儂が消えても道連れで死ぬことはないじゃろう』


 ニィ、と口の端を歪めて木龍が笑う。

 それを見てポルクスは確信した。やはりそうだ。

 最初からこの龍だけは何処か妙だったが……彼は最初から、ポルクス達を殺す気などなかったのだ。

 彼がやっていたのはただのじゃれ合い。我が子をからかい、遊んでいたに過ぎない。

 そうでなければアルゴー船はとうに沈んでいただろう。実際そのチャンスはいくらでもあった。

 彼にしてみればポルクス達の反逆など、幼い子供が木の枝を振り回してチャンバラごっこをしていたようなものだ。

 微笑ましさこそ感じれど、殺意など持つはずがない。


「ふざけないでよ! 私達は貴方の敵なのよ!? なのに何で……!」

『儂はそれが嬉しかったんじゃよ。ただの分身だったはずのお前さん達が儂と違う意見を持ち、儂と違う道を選んだ……それが嬉しくて、楽しくてのう』


 ポルクスが生まれた時からずっと、木龍はその成長を見守っていた。

 微睡の中から、彼女の苦悩を感じていた。

 その彼女が今やこうして自分の前に敵として立っている。己の意思で未来を選んでいる。

 親としてそれを喜ばぬわけにはいかないだろう。


『女神の物語は終わった。ならばここから先はお前達自身の物語じゃ。

……親らしい事を何もしてやれんで済まなかったな。達者で暮らせよ、二人共』

「冗談じゃないわよ! ここまで来て、今更何を言ってるのよ!

そんな事を言われたら……私は……。私はまだ、貴方の事を……」


 ――私はまだ、貴方の事をお父さんと呼んでいないのに。

 その言葉が届いたか、それとも届かなかったのか。

 木龍は光の粒子となってこの世から消え去り、呆気なくポルクス達の前から居なくなってしまった。

 最後に、『愉快、愉快』と……そんな言葉だけを残して。

 ポルクスはそれを見届け、ガクリと膝をつく。


「……何よこれ、勝手すぎるじゃない。それなら何で最初からそう言ってくれなかったのよ。

何で最後の最後でそんな、いい奴みたいな事言うのよ。反応に困るじゃないの」

「決意を鈍らせたくなかったのだろうな。私には何となく、木龍の……父の考えが分かるよ」

「兄さん……」

「勝手な生き物なのさ、男というのはな」


 カストールは妹の頭に手を乗せ、慰めるように撫でる。

 これで龍は去った。

 最後に残っていた火龍は光になりながらも『嫌だー! 消えたくなーい!』などと見苦しく喚いていたが、こちらもベネトナシュに止めを刺されてしまったようだ。

 ミズガルズは終わりを迎え、龍も去り、物語はここに終結した。

 ならば後は物語にもならぬ殴り合いが残るだけだ。

 最後の審判は女神と黒翼の覇王に委ねられた。

 カストールは涙を流す妹を優しくなだめながら、主がいるだろう方角を静かに見ていた。


*


 横取り。

 MMOにおいて問題視されている迷惑行為の一つである。

 弱った敵などを突然無関係の第三者が仕留め、経験値などを奪っていく行為やアイテムや金品を拾ってしまう行為を指してそう呼ぶ。

 言うまでもなくマナー違反である。よい子はやってはいけない。

 私がやったのはそれであった。瀬衣少年へと流れ込もうとしていた多量の経験値(マナ)の進行方向を無理矢理変えたのだ。

 本来それを受け取るはずだった瀬衣少年が要らぬと跳ね除けた今、龍のマナは誰にも所有権がない。

 そこにアイゴケロスのスキルを発動。経験値を私へと向けて取り込む。


「あ、あわわ……レベル4300……4600……4800……5000……ま、まだ上がる……。

貴女いくら何でも一人でインフレしすぎですよ!?」


 神の代行者でもある龍の経験値ともなれば、そこらの魔物などとは桁が違う。

 ましてやそれが四体……木龍だけは何か妙にマナが少ないが、それでも私のレベルを一気に上げてくれる。

 いや、待て。何か火龍もこっちに来ていない。これでは三体分しかないが……まあいいか。

 それでも今の私のレベルは5100。大分上昇したし、まだ上がる。

 さあどうする、女神よ。もうディーナでも私は手に負えないぞ?

 いい加減悟っただろう。もう其方自身でなければ私は止まらんと。


「エクスゲート」


 私は最後の仕上げとして世界全てを対象としたエクスゲートを発動した。

 この世界はもう終わる。終わって消えて無くなる。

 ならばその前に、この世界に残っている全ての生物を一時的に『向こうの宇宙』へと避難させなくてはならない。

 まさかこの期に及んでここに残りたいと思う者はいないだろう。

 その予想通りに転移は成功し、僅か何名かを残して全員の避難が完了した。

 残った気配は……ベネトナシュとオルム。それに十二星全員とテラか。

 ベネトとオルムは空を跳んで私の隣へと着地し、十二星も遅れてやって来て女神と相対する。

 ……何かベネトナシュのレベルが2700になってるし。

 お前か、火龍の経験値独占したの。

 流石というか何というか。やはりこいつも持っている……女神への挑戦権を。

 オルムは1500。こいつも限界を超える感覚を物にしたらしい。


「どうやら私一人ではないらしいぞ、アロヴィナスよ」

「ぐぬぬ、誰も彼も私の決めた上限を簡単に無視してくれちゃって……」


 私は懐に手を入れ、天へ至る鍵に触れる。

 そろそろこいつの出番だ。

 使わせてもらうぞ、ディーナ。其方が用意してくれた最後の一手を。

 そしてこの一手を以て王手(チェック)とする。


「…………ええ、いいでしょう。分かりました、もう分かりましたよ、ええ」


 女神(ディーナ)が諦めたように呟き、溜息を吐いた。

 そして顔をあげ、つまらなそうに私達を見る。

 彼女の駒はここに尽きた。打てる手も全て潰した。

 ならば今こそが終わりの時だ。

 勝ち目を失った彼女は盤上ごとひっくり返すしかない。

 大地が完全に砕け、遂にミズガルズが終焉を迎えた。

 ――爆発。

 私達の母なる惑星が消え去り、だがその爆炎の中で尚も私達は揺らがずに対峙し続ける。

 サジタリウスは咄嗟にシールドを張り、全員が窒息しないように空気を包んだ膜で覆った。


「この宇宙(せかい)は失敗作だった。正直ここまで育てたものを捨てるのは惜しいのですが仕方ありません。また数億年かけて次なる世界を築くとしましょう」


 女神(ディーナ)の顔に最早笑みはない。

 ただどこまでも疲れたような、どうでもよさそうな表情だけが残っている。

 幕は降りた。そして今から舞台が消える。

 きっと彼女はこの『先』の事など考えてはいないのだろう。

 それはそうだ。宇宙の崩壊に耐えられるなどと考えてもいないだろうし、実際耐えられない。


「――終わる世界(ビッグ・クランチ)


 女神(ディーナ)が呟き、宇宙が収縮を開始した。

 星々が一斉に私達へと向けて飛び……否、引きずられ、宇宙が狭くなっていく。

 だが私は動じない。ベネトもオルムも、微動だにしない。

 二人には何も話してはいないが……まあ何か手がある事くらいは察してくれているのだろう。

 ならばその期待に応えねばな。


「そういえば、コレを返して欲しがってましたね。ええ、いいでしょう。もう要りませんから。

どうぞ、この世界と運命を共にして下さい」


 そう最後に吐き捨て、そしてディーナはまるで糸が切れたように崩れ落ちた。

 それを咄嗟に抱え、即座に天法で保護する。

 流石に彼女といえど気絶したまま宇宙に放置されるのは不味いからな。

 宇宙が終わる前兆の収縮を続ける中、私はようやく戻って来たディーナを頬を軽く叩いた。


「……んう? あ、ルファス様」

「起きたか、寝坊助め」

「これは……ああ、そうか。やったんですね」


 ディーナは寝惚けながらも周囲を見て状況を察したようだ。

 そう……ここまでは上手くいっている。

 そしてここから先は私とベネト、オルムだけが入り込める領域だ。

 残念ながら挑戦権のない者達が入り込める世界ではない。

 私は天へ至る鍵を出し、あらかじめ設定が終わっていたそれを起動する。

 すると、この宇宙の所有権が私へと移った。

 そう、ここは最早捨てられた宇宙。故に鍵を持つ私に所有権がある。

 無論、宇宙の終わりは止められんがな。


「あ、あの、ルファス様! 落ち着いてますけどこれどうすれば!

な、何か凄い事になってますよ!?」

「落ち着けアリエス。ちょっとこれから宇宙が消し飛ぶだけだ」

「うえええええ!?」


 私は笑い、そしてスキルを発動した。

 使うスキルはアイゴケロスのスキルだ。

 この宇宙は女神の魔法。そして彼女が破棄した今、その所有権は私にある。

 ならば全てを私が取り込んでしまっても、文句はあるまい。


「――我が下へ集え! 暗黒(めがみ)の力よ!」


 この宇宙は魔法であり、魔法とはマナ。そしてマナとは女神の力の欠片であり経験値だ。

 ならば可能だ。宇宙全てを私と同化させ、神の域へ至る事も。

 そう、これが私の最後の一手。

 奴が破棄した宇宙を取り込み、奴と同じ領域へと登り詰めて殴り飛ばす。

 そして宇宙を取り込んでいるのは私だけではない。

 ベネトやオルムにもサジタリウスのスキル(アスケラ)の効果を与え、経験値を分配している。

 そう、これこそが挑戦権。限界の壁に阻まれる者はいくら経験値を得てもレベル1000より先へは進めない。故に限界を超えるのは必須事項だ。


「十二星よ、今までご苦労だった。ここから先は私達だけで往く。

其方等は私達の勝利を信じて待っていてくれ」


 私はエクスゲートを展開し、彼等の逃げ道を作った。ゲートの向こう側は箱舟へと繋がっている。

 この先に行けるのは私とベネト、オルムの三人だけだ。

 しかしそれに猛然と反論をしたのはアイゴケロスとピスケスの二人であった。


「いいえ、我が主よ! 我も最後の戦場へお供致します! 我をお使い下さい!」

「余もだ! このままではただの影の薄いエロスで終わってしまう!」

「……汝、切実だな」

「当然だ!」


 アイゴケロスとピスケスは十二星の中でも数少ない例外と言えるだろう。

 この二人は限界を超えてはいない。

 だがその代わり、私と共に最後の戦場に赴く能力を有している。

 アイゴケロスが完全なマナとなり、私へと同化していく。

 更にピスケスがスキルを発動し、私に憑依した。

 アイゴケロスの影響か、私の背からはアイゴケロスのそれとよく似た翼が生え、何だか妙に禍々しくなってしまう。


「ルファス様、僕も……」

「駄目だ。来るな」


 自分も一緒に来ようとするアリエスを、私は突き放した。

 残念ながら彼では無理だ。

 レベル1000程度では、存在するだけで宇宙すら崩壊させてしまう女神とは向き合う事すら出来ない。一瞬で消し飛んでしまうだろう。

 残念ながらここから先は挑戦権を持つ者だけの世界だ。

 しかし、今のいい方は少しきつかったかな。

 私はアリエスの髪を撫で、安心させるように笑う。


「大丈夫だ。今度はちゃんと帰って来る。

もう其方等を置いて行ったりはせん」

「約束ですよお!? 本当に帰って来て下さいよお!?」


 私の言葉にスコルピウスが凄い勢いで食い付いた。

 そんな彼女の襟首をリーブラが掴み、ズルズルと引き摺ってゲートへと向かって行く。


「ちょっとお! 何するのよおリーブラ!」

「私達は邪魔なので早々に退散するのが最善と判断しました。マスター、ご武運を」

 

 まずリーブラとスコルピウスがゲートの向こうへと消え、続いてアルゴー船ごとポルクス達が避難する。

 更にテラがオルムと何か言葉を交わしてゲートへ飛び込み、他の十二星も次々と避難を済ませた。

 そうして最後に残ったのはディーナだ。


「ルファス様……私、信じてますから。必ず帰って来るって、信じてますから!」

「ああ、すぐに戻る。待っていろ」


 ディーナと約束を交わし、彼女も宇宙を去った。

 これで残るのは私とベネトとオルムの三人のみ。

 宇宙も丁度限界まで収縮したらしく、今やそのほとんどが私達へと取り込まれている。

 レベルは……いや、最早そんな数値などどうでもいいか。

 ここに至ってはもうレベルなど何の指針にもならん。


「さあ行くぞ、まずは挨拶代わりだ! 一発派手に撃ち上げる!」

「いいだろう。合わせろよ、マファール」


 私はまず開戦の合図を上げるべく魔法を発動した。

 『金の弓番える予言者』。日属性最大の補助魔法だ。

 更にそこにベネトが合わせるように『銀の矢放つ乙女』を発動。

 矢は一つではない。オルムもまた同じ魔法を発動している。

 さあ、女神よ。覚悟はいいな?

 もうゲームを安全な位置で動かすだけのプレイヤーではいられんぞ。

 ここからは舞台裏の殴り合いだ。


「発射!」


 私の号令と共に二つの銀の矢が飛翔し、宇宙を文字通りに貫いた。

 次元の壁を破壊し、空間に穴が開く。

 その後を追って飛翔。三人が共に穴から飛び出し、宇宙を脱する。



 ――そして、どこまでも広がるような純白の世界の中。

 私達は遂に、こちらを呆然と、信じられないような顔で見ている女神と対面した。

ミズガルズHP:0/999999

ミズガルズ「あ、後少しだったのにー!!」


太陽HP:0/99999999999

太陽「何で俺まで!?」


宇宙HP:0/測定不能

宇宙「アイエエエエエエ!?」


遂にアロヴィナス本体の所まで来ました。ここまで長かったなあ……。

次回からラストバトル開始です。

最終戦メンバーはルファス、オルム、ベネトの三人となりました。

インフレし過ぎてこの三人以外は戦闘に参加すら出来ません。

ちなみにアロヴィナスが発動したビッククランチはサラッと回避されていますが、結構強力な技です。

効果としては爆破した宇宙のHPをそのまま敵全体に絶対命中で叩き込むといったところでしょうか。

宇宙のどこにも逃げ場がないので絶対命中ですが、しかし宇宙の外に脱出されてしまったので回避されました。絶対命中とは何だったのか。

完結まで後7話……さあいざ行かん、インフレの果てへ。

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[良い点] 太陽かわいそう(´Д` ) 巻き込まれただけなのにーw
[一言] 宇宙終わった( ;∀;)
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