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31.おぼれてません。

「と、いうわけで今日から魔王サマ好感度あっぷあっぷ大作戦を決行いたします!」

 何が『というわけ』なんだ? という不可思議そうな顔をして、薬草園の手入れをしていたカーディナルがあたしを振り返る。

 いえね、いろいろお話を聞き仕入れた結果、ちまたで魔王(カーディナル)のしわざだと言われてることのほとんどが、それってヌレギヌ、てかこじつけじゃん? という内容で。
魔王が存在することで、生じる多々な現象(魔術的な均衡がどうの、界の揺らぎがどうの、動植物の活性化とかとかなどなど)は、まあ仕方ないと思うのよ、天災的な意味で。
 別にそれだってカーディナルが好き好んで行ってるわけじゃないし。
 それを魔族を操作してどーのとか、魔物をけしかけてどーのとか、言いがかりもハナハダシイ。
 時には森で悪さをしている奴ら(山賊とか追いはぎとか言うアレ。ん? 出没してるの森だから森賊? ちょおヘン……。)の所業まで、カーディナルのせいにされてるっていうんだもの。お世話になっているアタクシといたしましては、我慢ならんちゅーワケですよ!!

「そーゆーことで、今週は魔の森お掃除週間なのですっ」

 実際の魔王なんて、イマドキ履歴書に書いてもハネられる趣味読書なんて地味なお人なのよ?
 ごらんなさいよ、テキトーに紐でくくったポニーテールに腕まくりざっくりシャツとズボンという姿を! 背景は畑、手にはクワ、麦藁帽子がないのだけが惜しいっていう、こんなのどかに腰砕け(脱力という意味で)な人物なのに!

 みんな誤解してるんだよ。
 そりゃあ、長々信じられてきた魔王コワイ信仰はそう簡単に(くつがえ)らないと思うけど。
 あたし一人が否定して騒いでも、どうしようもないんだろうけど。
 ちょっとしたところから、訂正していけばいいかなって。
 意識改革? そういうのをやってみようかなって。
 考えたの。

「じゃあ行って来る! お昼はお弁当作ったので。カーディナルの分もあるよ! テーブルに置いといた! 夕方には帰るから、いってきまーすっっ」

 すちゃっと手を上げて、意気揚々と森に向かって足を踏み出し―――

「待て、りら。具体的に何をどうするのか言ってから出掛けなさい」

 渋面のカーディナルに首根っこをひっ捕まえられた。
 ちっ。
 カーディナルもいい加減あたしの行動パターンを読むようになってきたわね。
 猫の子のようにぷらりと持ち上げられたあたしは、不満に唇をタコにする。

「だからー。おそうじー。」
「具体的に」

 辛抱強いお父さんみたいに、再度問い直すカーディナル。
 聞き分けのないお子様りらはシブシブ口を開く。

「えっとね、あたしも村を行き来して気付いたんだけどね? 森の街道ってほぼケモノ道になってるじゃない。だから魔物が潜みやすいし、遭遇したら逃げにくいの。でもって通る人がいなくなって、ますます荒れて、魔物増殖して、魔の森って言われるようになったんでしょ? 

 そこで登場するのがこの星剣! 内蔵された雑草駆除機能によりケモノ道もあらフシギ! あっという間にちょっと手入れの行き届いてない田舎道に早変わり! 

 ―――そんな感じで道を整備してこようかと」

 深夜の通販番組みたいな説明になったのは置いといて。

 サディたちも言ってたの。
 昔に比べてアガーテと他国を行き来する人が減って、物流が途切れがちになってるんだって。
 森を通るのに護衛を雇ったりするんだけど、それも年々賃金が高くなってるそうなのね。
 レンデ村は、フェリア王国に近いところにあるから、まだそんなに困ってないらしいけど。
 このままだと、アガーテは孤立しちゃうんじゃないかって言うウワサ。
 レガートさんたちが魔王退治に躍起になる原因もここにあるんだ、たぶん。

 魔法仕えるんだから転移を駆使したらどうよ、と思ったりもしたんだけど、転移ってそうホイホイ出来るものでもないらしい。
 そうだったのか。カーディナルが簡単に送ったり迎えに来てくれたりしてたから、それが普通だと思ってたよ。さすが魔王サマというところか。

 だからさ、どうせあたしうろちょろしてるんだし、星剣もあるし、前みたいに剣に使われないためにも、修行がてら街道に出る魔物退治とかしようかなって。
 魔物が減ったらみんな助かるでしょ?
 そしたら、カーディナルのこと知りもしないで、魔王のせいにする人も減るかなって。

 道がキレイになったら、旅の人通りやすくなるよね。
 魔王の陰に隠れて、悪いことしてる人たちも、悪いこと出来にくくなるかなーって。

 ……だ、だめ?

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