28.捜索
「金茶の髪、琥珀の瞳を持つ、十代半ばの娘がこの村に立ち寄らなかったか」
朝まだ早い時間、村にやってきた彼らは開口一番そう言い、今は宿の一室に陣取ってここ数週間の滞在記録や冒険者名簿などを調べているらしい。
名簿があるなんてはじめて知ったよ。なんでも、新たに村や町に入った冒険者は必ず足跡を残しておかないといけないんだって。
仮にも冒険者見習いと名乗ってるあたしが、それを怠っていたことについては――
「良かったね、リラ、まだ正式加入する前で! 宿に泊まったわけじゃないから、名前も残ってないし!」
……いい感じに誤解してくれてるようだ。
「門衛のラデッツさんがね、リラが来たことこっそり知らせてくれて。気付かれないうちに隠れた方がいいんじゃないかって」
あたしの姿を確認するなりの不審者扱いはそれだったのか。
エリサの話によると。
捜している理由は言わないものの、もし該当人物と思われる少女が現れた場合は、丁重に保護し、速やかに王宮まで知らせをよこせと。
王宮専魔術士の証を持ったひと(つまり勇者信仰隊長のルガートさんね)が通達書と共に、そう告げたという。
ひええ。危ない危ない、見つかったらまた、『強制☆勇者様歓迎会☆』を催されるところだよ。
サディーナの私室に隠れた今、息を潜める必要はないっていうのに、何故かあたしたちは部屋の隅に固まってこそこそ会話を交わす。
んん? でも、あれ?
「エリサ、どうしてあたしがその人たちから逃げてるってわかったの?」
でもって匿ってくれたのはなんでだ。
村の人たちも、あたしのこと黙ってくれてるみたいだし。
あたしがそう首を傾げると、二人は顔を見合わせて。うん、と同時に頷く。
「大丈夫よ、リラ! 私たちみんなあなたの味方だから!」
「アガーテの王宮魔術士が出てくるとは思わなかったけど――そっか、察するにあれリラの彼氏さんの上司なのねっ。いかにも融通きかなさそうな感じだわ」
………ええとー。
「身分違いのカケオチの罪状がどんなものなのか大体わかるつもりよ! 安心してちょうだい、リラと彼氏さんを引き裂くような真似、誰もしないからね」
「実はうちの村長もその昔奥さんをいけ好かない婚約者から掻っ攫ってきたっていうことがあってね」
「気持ちはわかるって、味方になってくれたのよ」
「だいたい自国の領内だって言って、こういうときは偉そうな顔するくせに、肝心の時に何もしてくれない役人の言うことなんか、誰が聞くかっっーの!」
「そーよね、何か困ったことはありませんかっていつも気遣ってくださるのはフェリアに雇われた冒険者の方ばかりだし!」
「ヒトの恋路を邪魔する奴には緑神様の鉄槌を! だわッッ」
ちなみに緑神様、豊穣と緑を象徴する神様ですが、何故か縁結びの神としても信仰されています。
怒涛の勢いで展開されていく昼メロ並みの『少女リラ物語』に口を挟めるわけもなく。
「えーと、ありがとう?」
エキサイトののちに国への不満を愚痴り大会になった二人にとりあえず、ハテナ付きながらも礼を言う。
「まっかせといて!」
いろいろな誤解は置いといて、―――捜されているのか、あたし。
当然といえば当然。
世界の向こう側から何人もの術力を使い、喚び戻した、魔王に対抗できる唯一の希望を、そう簡単に諦めるわけにはいかないんだろう。
―――たとえ本人が望まなくても。
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