学園ばさら!(2/2)縦書き表示RDF


学園ばさら!
作:奇壱



弐 猿飛くんと転校生


 
 今日も朝から災難続きで、俺様はほとほとまいっていた。学校についたのは九時二十分、一時間目の授業も半分近く過ぎてしまっていた。
それも災難は続くもので、一時間目の授業はなんと体育。担当は鉄拳制裁で有名な豊臣先生だ。俺はそそくさと着替えて校庭へ向かったが、時すでに遅しというやつで。
案の定俺は豊臣先生の大きなゴリラのような手から、教育の一撃を食らってしまったわけだ。
 それもこれも、全部旦那と武田先生のせいだ。というかあの人はなんでいつもわざわざウチに飯を食いにくるのか。そしてなぜ旦那は武田先生をお館様とか呼ぶのか。…これは関係ないか。
とりあえず、だ。この災難は全て旦那と武田先生の作り出したものであり、俺様はぜんぜん悪くない。なのになぜ、俺様ばかりがこんな痛い目を見るのか。理不尽じゃない? これってさ。



「だと思わない? チカちゃん」
「いきなり俺に振るなよ」

 波乱の一時間目を終え、やっと一息つけた昼休みに、俺は後ろの席に座っている長曾我部元親こと略してチカちゃんに今日の朝までの出来事を一通り愚痴った。
こうでもして発散しないとやってけない。

「俺様は全然悪くないんだよ? それなのに俺だけ痛い目にあうってさぁ…」
「まぁ、アレだろ。運がワリィんだろあんたは」

 そう言ってチカちゃんは読んでいた雑誌に目を戻した。なんかいつもよりそっけない気がして、少し腹が立った。
もういいよ、と言い残して、俺は机にうつぶせた。旦那の弁当作ったりなんなりで朝が早かったため、すぐに睡魔が襲ってきた。
 睡魔との格闘をなんとなく楽しんでいると、目の前に見慣れない背中があるのに気がついた。微妙にうちの制服と違う色合いの制服を着ている。

「…転校生…?」

 ぽつりと呟くと、俺の声に気がついたのか、その見慣れない背中が俺のほうに振り向いた。
まず、目に入ったのは彼の眼帯だった。チカちゃんとキャラが被ってるなぁ、とかしみじみ思ってしまった。あと、目つきがネコみたいなつり目で、きつそうな印象だった。
自称不良のチカちゃんなんかより、よっぽど不良っぽいってか、コワイ感じがした。
 じっと顔を見つめていると、転校生がにまりと笑った。


「Hey, あんたが猿飛佐助か?」
「あ…ああ、そうだけど…」

 いきなり名前を当てられて、ちょっと驚く俺様。でも、なんで俺の名前を知ってるんだろうか。

「なんで俺の名前知ってんの? どっかで会った?」

 疑問をそのまま口にすると、転校生くんは楽しそうに口の端を吊り上げた。
なんとなく、その笑った顔に見覚えがある気がしたが、多分気のせいだろう。

「今日の朝な、担任の武田…だっけ? とりあえず、そいつが『遅刻とはけしからんぞ佐助ぇぇ!』とかずっとアンタの名前叫んでたんだよ。
 転校初日にあんなに名前連呼されちゃ、イヤでも覚えちまうさ」

 遅刻の原因作ったのは誰だ! と頭の中で武田先生に毒づく。その俺の気持ちを察したのか、チカちゃんが後ろでクスクス笑っているのに気付く。
むかついたので、さりげなく頭をはたいてやった。

「なーんかイヤな覚えられ方しちゃったなぁ、俺様。そうだ、あんたの名前は?」
「伊達政宗だ。よろしくな」
「政宗かぁ、よろしくね」

 軽く挨拶を終えて、もう一度政宗の顔を見る。最初に感じていた近づきがたいオーラはすっかり消えていた。やっぱり人間、第一印象だけできめちゃダメだと改めて実感する。
その後しばらく、後ろでかまってほしそうにちょっかいをかけてくるチカちゃんを無視しながら、政宗と会話を続ける。
政宗も俺にあわせてか、それとも本当に気にしていないのか、チカちゃんをさらりと無視している。まぁ、チカちゃんは弄られキャラだし仕方ないだろう。

 チャイムが鳴って二時間目の開始を告げる。
次の授業はなんだったっけ、と眠たい頭で考えていると前を向いていた政宗がいきなりこちらを向いて話しかけてきた。

「なあ、この学校に真田幸村ってやついる?」
「旦那のこと? いるよ、一年生に。でもなんで旦那のこと……」
「いや、なんでもねぇ。ただちょっと…」

 政宗はそこまで言うと、なぜか口ごもった。そして聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でぼそりと、昔の因縁がな、と呟いた。
好奇心旺盛な俺としてはもっと詳しく追求したかったが、ドアが開いて先生が入ってきたので聞けなかった。次の授業はどうやら数学らしい。

「昼休み、そいつのとこまで連れてってくれ」
「え、別にいいけど…」
「Thank you」

 この会話を最後に、政宗は俺に背を向けた。
どうやら、旦那とこの伊達政宗という男の関係の謎は昼休みまで持ち越しらしい。なんだかすっきりしなかったけど、まぁあと三時間の辛抱だ。


「なぁ、何話してたんだよ」
「ん〜…ナイショ」

 意地悪くそう言うと、チカちゃんはふてくされたように机に顔を突っ伏してしまった。ちょっと弄りすぎたかな、と心の中で反省する。
次の休み時間にでもかまってやろうと決めて、俺は前を向いた。そして授業もまだ始まってないというのに、政宗が机に顔をうずめて眠っていた。

「結構図太いねぇ」

 転校初日から授業で居眠りする政宗を見て、俺は苦笑した。
 また俺に、キャラの濃い友人が増えてしまったようだ。
 














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう