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inロッカー

 お願い!間に合って!


 キヨの腕を引っ張り無駄な装飾が施されている、木製のロッカーの扉を開けてまず自分が入り、キヨを引き寄せる。そこでようやく気を取り戻したらしく何やら慌てているが、此方はヒロイン達との接触の危機が迫っている。


 目一杯の力で二人分の体をロッカーに押し込み扉を閉める。私が先に入ったので、キヨを抱き締める用に手を伸ばして足音がこの廊下に進入する直前で扉を閉めることができた。


「ユ、ユリ!?」


「静かにして。」


 まだ状況が理解出来ていないキヨが声を出したので掌で口を押さえる。廊下の様子を伺う為にロッカーの隙間に目を近づける。この事でキヨの顔に私の手、もう一方の手はキヨの広い背中に回し、脚はお互い交互に絡まっている。体を密着する事になったが、こうしないと入らないのだ。背に腹は変えられない。


(んん……。よく見えない。)


 もう少しでヒロインとお兄様が見えそうだったので、内股に力を入れて伸びる。ん?なんかキヨが固まったんだけど。あぁ、でもこれでよく見える。


 桜色の指通りが良さそうな肩辺りで揃えられたサラサラの髪。雪の様に白い肌にほんのり赤い頬と艷やかな小ぶりの唇。髪よりも若干濃い色の大きな瞳。うん、間違いなくヒロインの『櫻田 小町』だ。

 そして、向かい合っているのでこちらからは背中しか見えないが白紫の髪色の長身の男子生徒、お兄様だ。


 キャー!!あの場面が生で見れた!!

 私は興奮のあまり声が出そうになって、思わずキヨの制服をギュッと掴んでしまった。


「っっっ!?」


 またキヨが声を出しかけたが私が口を押さえているおかげか、未遂でおさまった。かわりにさっきよりも体が硬直した様だが、動かなければ動かないだけ物音を立てずに済むため好都合だ。


「こんな所でどうしたんだい?教室とは真逆だけれど。」


 お兄様の声だ。


「あっ、あの、スミマセン!!迷ってしまって……、それであの……」


 ヒロイン、もとい小町の声だ。ふふっ、焦ってる顔も可愛いー!


「大丈夫か?取り敢えず落ち着いて。僕の名前は城之内 彰人。生徒会長を務めている。」


「はい!さっき入学式で挨拶していらっしゃいましたよね。よく、覚えています!私の名前は櫻田 小町です!」


 そりゃね。だって小町入学式でお兄様に一目惚れしたんだもんね。よく覚えているはずだよ。

 元気がよろしーこって。


「君が、あの特待生の子か。話は常々聞いているよ。よほどこの学園に入りたかったんだね。」


「私、夢があるんです!どうしても叶えたい夢が!だから、この学園に入るために沢山勉強してきました。」


 と胸の前に拳を2つ作る小町。……カワユス。


 実はさっきの小町のセリフ、選択肢だった筈だが、今の小町の答え方は好感度が上がるやつだ。やはり、お兄様を狙っているな。今後は小町と遭遇しない様にお兄様とも距離を取るか。


「フフッ、そうかい。じゃあ夢の為に頑張らなきゃな。」


 そう言ってお兄様はヒロインの目を見て微笑むのだ。

 いや、こっからは見えないけどゲームではそうなってた。


「おいで。1年の教室まで案内しよう。」


「はっ、はい!!」


 自然に差し出されたお兄様の手。男性は女性をエスコートするものだと幼い頃から教育を受けてきたのでお兄様にとっては当たり前の事だったのだが。小町は所謂庶民。差し出された手に何を勘違いしたのか両手で握ってしまう。


 おーい、それじゃ握手だよ。

 まぁ、私も突然されたらそうなると思うケド。


「ハハッ。……うん。よろしくね。」


「?はい。」


 レディの顔を立てて握手という事にしてしまうお兄様。さすが!スマートです。


 そのままヒロインの少し前を進むお兄様。その後ろからちょこちょこと着いて行く小町。



 ムフフフ。いい目の保養になりました!ご馳走様です。

誤字脱字等ありましたらご指摘の程よろしくお願い致します。



1月13日瀬那川 匠

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