夜、シルクハットを被った怪しい麗人が目の前にいきなり現れてこう言った。
「結婚しよう」
あなたはどうする?
――逃げるしか無い。
「ちょっと待って下さい!そこの「待てるかぁ!!」
ダッシュ、奪取、―。
逃げるが勝ちなんて誰が考えた言葉だろうか、聡明すぎて涙が出そうだ。
いや、今は違う意味で涙が出そうだ。何だあの麗人というか変人は。
タキシード?スーツ?そんなことは何でもいいんだ、とりあえず真夜中にシルクハットを被った麗人にでくわした私の今日の運勢は、一位だなんて嘘っぱちじゃないかこのヤロウ。
何がカウントダウン☆だフ○テ○ビ。(大人の事情により伏字、作者は毎朝見てます。悪しからず)
スクランブル交差点が何のその、突っ切れ突っ走れ私!と自分を鼓舞しつつ走り抜ける。
麗人だって負けじと走る。
街の人たちは、「何だ?」「何かの撮影?」と冷ややかな視線やら笑い声を浴びせてくる。
勘弁してよ。
元帰宅部舐めんじゃねぇ!と言わんばかりに私はすぐにバテた。
ぜーはーぜーはーと肩で息をして膝を押さえる。ぽん、と肩を叩かれて息が止まった。
ゆっくりと振り返るとそこには・・・・・・
「結婚しましょうよ」と超笑顔の麗人一号。
上昇する体温と下降する体温がこんなにも激しくバトルしたのは初めてだ。
汗と冷や汗が相乗効果で大放出。
冷静になって見てみると麗人は汗をかいていない、このクソ暑い時期にこんな格好をしてるクセに。
「貴族は汗をかかないんですよ」コイツは危険すぎる。
ようやく息が落ち着いてきた。
そして脳味噌も落ち着いてきた。
「・・あなたっ・・何ですか!!」
「コッペルバーゲン、と申します」
にっこりと変わらず微笑んでそいつは名前を告げた。嘘吐け、どう見たって日本人顔じゃないか。
というか何だそのハー○ン○ッツみたいな名前は。(大人の事情により・・・作者は高いのであまり食べません、悪しからず。)
私があまりにも怪訝そうな顔をしていたんだろうか、麗人は続けた。
「親は日本人ですが、ずっと外国育ちなんですよ」
その割には日本語が流暢だ。という普通のツッコミなんてしても意味無いだろうな、諦めよう。
ふうっ、と息を吐いて体を起こす。そして振り向いて麗人と向き合う。
よく見ればコイツの目は赤色をしてて、それは暗闇にあまり映えない色合いだった。
すこし暗い赤色。
人間がそれを見て連想できるのはただ一つだろう。
「警察呼びますよ」
ようやく私は正論を導き出せたらしい、と言ってもこんな人気の無いところで警察を呼ぼうとしたって何かが手遅れになる気がしないでもないが。
麗人はきょとんとした表情で帽子をくいっと少し上げてみせた。
ほお、と感嘆の声を小さく上げている。
「私は貴女と結婚するんですよ」
帽子に手をかけたまま、麗人はそう言った。
会話のキャッチボールくらいしてほしいとこんなにも願ったのは今日が初めてだ。
麗人が瞳を向ける先に映っている私は一体どんな顔をしてるだろうか。
誰にも知る術は無い。
『コッペルバーゲンの花は咲かない』
fin.
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