誰が家のお金を払ってると思ってるの?
誰があなたの携帯料金を払ってると思うの?
誰があなたを此処まで育てあげたと思ってるの?
誰が……
誰が……
誰が……
私です。すべて私が悪いんです。
『母親と私』
産まれてきてごめんなさい。
生きていてごめんなさい。
死ねなくてごめんなさい。
お金を払えなくてごめんなさい。
可愛く無くてごめんなさい。
娘でごめんなさい。
役立たずでごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
それが私の口癖だった。
――ごめんなさい。
それしか口答えは許されなかった。だから私はずっとおまじないのようにその言葉を口にした。
そうすれば母さんは許してくれるとずっと思ってた。
でも母さんは許してなんてくれなくていつも私を殴る。それはきっと私が悪いからであって、私がもっといい子になれば母はきっと優しくしてくれると思っていた。
母は木ノ下商店街のスナックのママで毎晩毎晩夜になると、お酒の匂いを体全体に漂わせながら家に帰ってくる。
その度に私はいつも寝たフリをするんだけれど、母さんは毎日私の部屋に来て私を殴る。
それは多分、きっと私が悪い子だからであって、それはきっと母さんが私の為に働いているのに私はのうのうと眠ろうとしているからだろう。
だから私は母さんの気が収まるまで殴り続けられる。
それを耐えなきゃならないのはしんどい事なのだけれど母さんは無理をして学校に入れてくれてるし、母さんは無理をして私に携帯を持たせてくれてるし、母さんは無理をして私を生かしてくれているのだ。
だから、これくらいは平気。
これは私が産まれてきた罰。
何度も私の腹を蹴り飛ばし、気が収まったのか母さんは荒い息を吐き出して、私の髪の毛を離した。
ぶちぶちと何本かの毛が母さんの手に絡まって抜けた。
「なんであんたは毎日毎日私の苦労も知らないで我が物顔で眠っているのよ!」
やっぱりそうだ私が悪いのだ。
私が母さんより先に眠ってしまったから母さんは怒ってるんだ。
「ごめんなさい」
謝ったけれど右頬を強く殴られた。
熱を帯びたその頬は、熱いのと痛いのと自分の身勝手さに私の目から涙が出てきた。
「……ごめんなさい」
「それ以外あんたは言う事が無いの!」
また殴られる。
「毎日、毎日、働いている母さんの気持ちも知らないで!」
また殴られる。
「……ごめんなさい」
また。
「……ごめんなさい」
また。また。また。また。また。
「……母さん、ごめんなさい」
口内を歯で少し切ったようだった。
口の中に鉄の味がする。
「――あんたなんか産むんじゃなかったよ」
母さんはそう言って私の部屋の扉を強く閉めた。
「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
切れた口内から血が口いっぱいに広がる。
でも私は謝る事をやめない。
これはおまじないなのだ。
私は産まれてきた事に謝罪しなきゃならい。
だとしたら……
私は後、何回謝ればいいのだろうか?
―完―
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