FILE:10 決断
香に呼び出され、新一が席を空けた時、園子の顔が一瞬険しくなった。
「どしたの? 園子」
理由を知らない蘭は、不思議そうに首をかしげる。
去ってゆく2人の後ろ姿を睨みつけながら、園子は1人、頭の中をフル回転させていた。
(あの旦那、早速女に目ェ付けられたわね…ったく、しょーがない夫婦だこと)
呆れたように、時には怖い顔をする園子に、ただただ蘭は首を傾げるだけだった。
暫くして、2人は一緒に教室へ来た。
不信感を持たない蘭は、笑顔で新一に駆け寄る。
しかし、園子は気づいた。
2人のキョリが、確実に近付いていたことに。
ずっと見守ってきた彼と彼女の身の危険に。
「ねぇ、あなた、星野さん、だったわよね?」
「え、えぇ」
「何してたの?」
「えっ?」
「だから、屋上まで蘭の旦那連れてって、何してたか聞いてるの!!」
突然の剣幕に、クラスは静まり返る。
「え…っと…ごめんなさい、詳しくいえないの…」
作り笑顔で返す香は、ぎゅっと新一の袖を掴んだ。
それには蘭も、クラスも、眉を顰め始めた。
「悪ィな園子。言えねーんだ」
新一もすまなそうに頭を下げた。
「………あっそう。蘭、聞いた? あんたの旦那、正式な妻以外の女との約束、守るんですって」
「あ、いや…蘭、あのな」
「……大丈夫、別に気にしてないよ? 全、然…気にしてなんか……」
少し声が震えた。
「ごめ…新一、今日は1人で帰りたいの。先に帰っててくれるかな?」
すまなそうに微笑む蘭をみると、新一は断れなかった。
そして、この時、この決断を下さなかったら。
2人の絆は、もう少し、縮んでいたかもしれない。
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