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赤い満月の昇る空
作:菊太間郎



4 隠されし亡国者らが村


4 「隠されし亡国者らが村」



フィリアさんとしばらく歩いているうちにいくつかのことに気づいた。

一つはどうやらこの世界の重力は元の世界よりも小さいようだ。

そのおかげで僕の身体能力は異常なまでに高くなったようだ。

もう一つは、この世界の人間と僕たちの世界の人間の外見上の大きな違いがないこと。

フィリアさんも、髪は薄い栗色で肩まで届くくらいで、身長は160くらい、目は青色で顔は整っている。

エルさんといいフィリアさんといい、こちらの世界の人はみんな美形なのだろうか。

「着きましたよ。ここがわたしたちの村です。」




フィリアさんの家まで案内された僕は、フィリアさんが両親に事情を説明するのを待ち、中に入った。

「あなたが、フィリアの命を救ってくれた方でですか。ありがとうございます。」

中に入ると、フィリアさんの両親がいきなり頭を下げてきた。

「いや、僕は偶然通りかかっただけですし・・・」

僕がそういうと

フィリアさんの父親が顔を上げて

「・・・・・・!!!セ・・・・イ・・・様・・!?いや、そんなはずは・・・しかし・・・」

突然父の名前が出たことに驚いた僕は、身を乗り出して声を荒げて言った。

「父さんのことを知っているんですか!」

僕がそういうと、フィリアさんの父親はさらに驚いたような顔をし、フィリアさんも、フィリアさんの母も驚いていた。

「失礼ですが。あなたの名前は・・・・」

「ダイスケです。」

「王子・・・・生きておられたのですか。私は聖クリス王国騎士団長をしておりましたカーネルといいます。よくぞ、よくぞご無事で・・・」

カーネルさんは、涙を流し始めた。

「王子、私は王宮の料理長をしていたサラといいます。」

フィリアさんの母のサラさんも何か感激して今にも涙を流しそうだ。

「王子、今までどうしておられたのですか?王と王妃は・・・」




僕は今まであったことを全て説明した。


「そうですか・・・そういうことでしたか。狭間の神殿のエルにも会ったのですか。それで王子、これからどうするおつもりですか?実はここは聖クリス王国の生き残りの造った村です。ですから、王子がヴァンガ王国を倒しに行くおつもりなら我等も力となりましょう。」

「それは、まだわかりません。確かにヴァンガ王国のしたことは許せません。しかし、僕が聖クリス王国の名前を使い戦争をすれば、いたずらに多くの命を奪うことになるかもしれません・・・それに、僕には待たせている人たちがいるんです。彼らのためにも僕は帰る手段を手に入れなくてはいけません。」

「そうですか・・・・なら、どうするのか決めるまでこの村に滞在してはいかがです?皆も喜びます。それに、この村にいる間に私の教えられることなら何でも教えましょう。泊まる場所ならウチに泊まってくださればいいですし。」

僕は突然の申し出に正直感謝した。

この世界のことも何も知らない状態でまたあの森の中に帰るのは正直つらい。

寝る場所のことも心配しなくていいのなら言うことは無い。



そして、聖クリス王国の王子が来たという話は瞬く間に村中に広がった。

家には村中の人が押しかけてきた。

みんな歓迎してくれて、中には泣き出す人も大勢いた。

みんな盛り上がって村を上げての祭りとなった。

僕はみんなに囲まれてお酒を大量に飲まされた。

そして、なんとか僕はみんなから逃げ出して村の外れにある川に来た。

僕は、川のほとりに腰掛けて、靴を脱いで川に足を入れた。

水がひんやりとして気持ちよかった。

「王子、主役がこんなところにいていいんですか?」

フィリアさんが隣に座った。

「いや〜もうへろへろで。フィリアさんも抜けてきたの?」

「私は・・・王子が川に行くのを見たからなんとなく。」

「そっか・・・。ねえ、なんでみんなは僕をこんなに歓迎してくれるのかな。もう聖クリス王国はないのに・・・僕は王子じゃないのに・・・」

フィリアさんはいまさら何をというような感じで

「それは、みんなが今でも聖クリス王国が大好きだからですよ。だから王子、あなたが生きていてくれてみんな嬉しいし、歓迎もします。だから、いつまでもこの村に居てください。」

と言った。

温かい言葉だった。

「ありがとう・・・・。ねえ、一つお願いがあるんだけど。」

「なんですか、王子。」

「その王子って呼ぶのやめてもらえないかな、カーネルさんたちみたいな大人の人が呼ぶのはきっと今でも残る父さんたちへの忠誠心からくるものだと思ってるんだけど、やっぱりフィリアさんみたいな同じくらいの歳の人に呼ばれるのは何だか恥ずかしくて・・・」

フィリアさんはポカンとして僕の話を聞くと

プッと笑って言った。

「わかりました、ダイスケさん。でも、それなら私のことはフィリアって呼んでください。」

「わかったよ、フィリア。」

僕たちは、顔を見合わせるとお互いに少し照れているのか顔が赤いのに気づいて、どちらからともなく笑い出した。




「さ、ダイスケさん。そろそろ戻りましょう。きっとみんな、あなたのことを探してますよ。」

フィリアは立ち上がると僕に手を差し出した。

僕がフィリアの手を取って立ち上がって

「もうお酒はこりごりだよ。」

と言うと、フィリアと僕はまた笑い出してしまった。

そして、僕たちは、また祭りの広場に戻っていった。








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