第5話
三人が密林から街に帰り着いたとき、日はすっかり沈んでいた。 「うぅ〜。はらへったぁ〜」
ゼロは集会所の机に座りこんだ。「もぅ、しっかりしてよ」
とアルが言う。 「も〜無理だ。動けん。」「無理でも動く!」
「鬼かおまえは!?ジョン、助けてくれ・・・」ゼロはジョンに助けを求める。
「今日は付き合わせて悪かったな。飯でもおごらせてくれ」
「マジで!?よっしゃあ!そうこなくちゃな!」ゼロは椅子から立ち上がり、はしゃぎ始めた。 「動けないとか言って動けるじゃない!」
「バカ!タダ飯食えるってなったら別だ!」「なによそれ!?意味わかんない」
「貧乏生活を長く続けてりゃあわかる日がくるさ〜。で、どこ行くんだ?」
ゼロは目を光らせてジョンに聞く 「宿屋の近くに旨い店見つけたんだ。飯食ったら遅くなるから今日は宿屋に泊まっていけ」「ひょ〜。太っ腹〜。」
「言っとくが宿代まではださねぇぞ」
「ケチ!」ゼロは少しすねる。
「ケチじゃねぇ!お前らにも賞金出ただろうが!」
「あれは今後の生活費に残しとくんだ!」
「お前の方がケチじゃねぇか・・・」
ジョンは呆れている「まぁいいや。取りあえず早く行こうぜ。街中で餓死なんてしゃれにならん」
「わかったよ。こっちだ、ついてこい」
ジョンに連れられてゼロとアルは店に向かった。五分ほど歩いて、古い店の前にたどり着く。
「ここかぁ〜」
「なんか少し古いね・・・」
「まぁ、古いけど味は保証するぜ」そう言って、3人は中に入っていった。
注文を済ませ、料理が来るのを待っていると奥の席に座っていた女性が話しかけてきた「ゼロじゃない!それにジョンも!久しぶりぃ!元気してた?」
ゼロとジョンはその女性を見て硬直した 「さ、さて?一体誰の事やら・・・」「ひ、人違いでは?」
ゼロがとぼけ、ジョンが便乗する。
「あら?そんなこと言っていいのかしら?」
女性はニヤリと笑う「あなた達には貸しがいっぱいあるのよねぇ〜。そろそろかえ・・・」
「いゃ〜!久しぶりだなぁ。こんなとこで会うなんて奇遇だなぁ〜」女性が言いかけているところを皆まで言わせまいとゼロが割り込む。 「あの・・・この人誰?」
アルが質問する。その声に女性が気付く 「あら?後一人いたの?かわいいこね。どっちの連れ?」
女性がたずねるとジョンがゼロに視線を向ける。その視線を読み取って、女性は黙って冷や汗をかいているゼロを凝視する。耐えきれなくなったゼロが静かに手を挙げる 「ゼロの連れなのね・・・ひどいわ、私というものが有りながら・・・」
その瞬間、皆が驚きの表情を見せる
「まてまて!いつからそういう関係になった!違うだろ!お前等も信じてんじゃねぇ!」
ゼロが必死に否定する
「じゃああの愛の告白は嘘だったのね!?」
「ふざけんな!この暴走守銭奴女!お前に愛の告白なんざする口なんかもってねぇぞ!?んなことした瞬間即刻身投げだ!」
「そうだったのかゼロ・・・大変だな・・・」「ジョン!?お前は俺を裏切るのか!?頼むから見捨てないでくれ!」この後もしばらくこの騒ぎは続き、料理が運ばれてくるころ、ようやく収まった。「は〜・・・。これだからお前と関わりたくなかったんだよ・・・」
ゼロは食事を疲れ果てたように口へと運ぶ。
「あら?その言い方はひどいんじゃない?」「ひどくねぇ。お前の方がよっぽどひどいじゃねぇか・・・」
「まぁいいわ。で、あなた名前は?」
女性はアルに質問する。 「アル・アジフです。」
「アルちゃんね。私はミリア・マージョリー。長いからミリアって呼んでくれればいいわ」「はぁ・・・」
「で、アルちゃん?」
「はい?」
「ゼロとはどこまでいったの?」
「ぶふ!」
この唐突な質問に、隣で吹き出したのはゼロである。 「えっ、いや…どこまでもなにも、そんな関係じゃないんで・・・」「ふぅん?」
ミリアはニヤニヤ笑っている 「そういうミリアさんはどういうご関係なんですか?」
今度はアルが質問する
「私?大した仲じゃないのよ。まぁハンターやっとけばいろんな人と知り合うものよ」
「はぁ・・・」
アルは腑に落ちない表情を見せる。
「いきなり変なこと言うな。むせただろうが」
そう言うとゼロは立ち上がった。
「どこいくんだ?」
ジョンが聞く
「便所」
そう言ってゼロはトイレに行った「アルちゃん?」
「はい?」
ミリアは少し真剣な表情になる
「ゼロとこれからも関わりをもっていくなら相当の覚悟が必要よ」
「え?」アルは不思議そうにする
「おい…」
ジョンが止めようと口を開く 「いいじゃない。いずれ分かるときがくるんだから」
「今じゃなくてもいいだろう」「もぅ、しょうがないわね。でもね、アルちゃん。ゼロはあなたが思いもつかないような問題を抱えてる。ただ、人に心配させたくないから表にださないだけ。私達は理解してるけど、ゼロはとても敵が多いの。だからもしあなたが事実を知ったとき、ゼロのことは嫌わないでほしいの。」
「はい...わかりました・・・」
アルはわけが分からなかったが取りあえず頷いた。
「なにしんみりしてんだ?」
トイレから戻ったゼロが首を傾げる
「何でもないわ。さて、私はそろそろ帰るわ。」
ミリアが立ちあがる 「おう。そうしてくれ」
「何?その言い方?」
「何でもありません!さようなら!」
「まったく・・・いっとくけど貸したお金はちゃんとかえして貰うからねぇ〜。バイバーイ」
そう言ってミリアは去って行った。「ふぅ。嵐がさっていったみたいだな」
「全くだ」
ジョンがつぶやき、ゼロが頷く。
「飯も食ったし、俺もそろそろ帰るとするか。」
「おう。飯、奢ってくれてありがとよ。」
「気にすんな。宿屋の場所はわかるよな?」
「あぁ、まかせろ」
「それじゃあな。お前等も疲れただろうから早く休めよ。」
そう言ってジョンは店を出た。ジョンを見送った後、ゼロとアルも宿屋に向かった。宿屋についた2人は、部屋をとり、それぞれの部屋へ入っていった。
アルはすぐにベッドに横たわる。しかし、なかなか眠れないでいた。ミリアの言ったセリフが気になっていたのである。
「私じゃ思いもつかないような問題って何だろ?敵が多いってどういう事かな?」
アルは気になってしょうがなかった。「ゼロに直接聞いてみようかな?」
アルはしばらく考えたが、やはり気になるのでゼロの部屋に向かった。 部屋の前に立ちノックする。「ゼロ、起きてる?」
返事はない。もう寝たのだろうか?アルがそう思ってドアノブに手をやると・・・ガチャ・・・扉が開く
「鍵がかかってない・・・」
アルは不思議に思ったが、恐る恐るへやの中を覗き込む。
「あれ?いない・・・」
へやの中にゼロの姿はなかった。アルはしばらく宿屋の中を探しまわったが、ゼロの姿はなかった。
「どこにいったのかな?」
アルは辺りを見渡す。そして、屋根へと続くハシゴを見つけた「上かなぁ?」
アルは疑いながらもハシゴを登る。屋根の上にでると、寝転がる人影が見えた。 ゼロである。ゼロは空に浮かぶ月をみていた。
「こんなとこでなにしてんの?」
と、アルが声をかける。
突然声をかけられゼロは少し驚く。 「なんだ、アルか。おどろかせんなよ。どうした?眠れないのか?」
「そう言うゼロこそこんなとこにいるじゃん」「あぁ、俺は月を見てた」
「月?」
いわれてアルも空を見上げる。 「綺麗な満月だろ?」
「ほんとだ・・・」
空には冷たく、透き通った光を放つ満月が浮かんでいた。「満月を見てると・・・」
ゼロが口を開く。 「満月を見てると、色々と昔を思い出すんだよ。」
「ふぅん・・・」
アルは気の抜けた返事をしてゼロの横に腰掛ける。「ゼロは満月のよる、いつもこうして月を眺めてるの?」
アルが聞く 「まぁ、割とみてる。」
「そう・・・」
しばらく2人は黙って月を眺めていた。隣でゼロがあくびをかいた。
「ふぁぁ・・・。そろそろ寝るとすっかな。」
そう言ってゼロはその場から立ちあがる。 「アルもそろそろ寝ろよ。じゃ、お休みぃ。」
ゼロはハシゴを降りて、自分の部屋へと戻っていった。
アルも眠くなったので自室へと戻り、ベッドに横たわる。「あ、ゼロにミリアさんが言ってたこと聞くの忘れちゃった。・・・まぁいいか。」
そう言ってアルは目を閉じた。翌朝、下の階が騒がしくアルは目を覚ました。 「どうしたんだろ?こんな朝から」
そう言って、ベッドから身を起こし、部屋の外に出る。ちょうどゼロも目を覚まし、廊下でアルと鉢合わせになった。
「よぅ、おはよーさん」
ゼロが声をかける。 「おはよー。なんか下が騒がしいね」「何かあったんじゃねぇ?取りあえずいってみるか」
「そうだね」
2人は階段を降りていく。階段を降りると、そこには人だかりが出来ていた。「何かあったんですか?」
アルが声をかけたとたん、周囲の目がゼロへと集中した「な、何?」
アルは動揺する。すると人だかりの中から声があがる。 「お前がここの子供をさらったんだろう!見境なく人間を襲いやがって!この化け物!」
アルはそのセリフの意味が分からなかった。 「何言ってるんですか!ゼロはそんなことするような人じゃありません!それに化け物ってなんなんですか!?」アルの声を聞いて、さっきと同じ声があがる 「なんだ?お前一緒にいるくせにそんなこともしらねぇのか?」
「何のことよ!?」
アルはますます混乱する。 「本当に何も知らねーみたいだな。なら教えてやるよ!そいつは大量の人間を一晩のうちに殺した殺人鬼なんだよ!」
「え・・・?」
その声の主が放った驚愕のセリフにアルは驚きを隠せない。アルはゼロを見るが、ゼロは否定する様子をみせない。「そいつはなぁ、生まれたときから竜人族とも違う人間とも違う能力を持ってたんだよ。だから古龍観測所の地下で実験台として檻に入れられてたんだよ。だけど数年が経ったある満月の夜、そいつは自力で牢をこじ開け、恨みを晴らすために、研究施設にいた人間を一人のこらず殺したんだ!そんなこと人間はおろか竜人族にも出来やしねえ。わかるか?そいつは人間でもなけりゃ竜人族でもない。ただの化け物なんだよ!」
「そ・・・そんな・・・」
アルは愕然とする 街の人達の視線が冷たかった理由はこれである。街の人達は、ゼロを化け物として扱い、関わりを持たないようにしていた。ミリアが言っていた、深刻な問題もこのことである。「そいつの名前がゼロなんて言う短い名前であることを変だと思わなかったか?」
いわれてアルははっとする。確かにアルは、ゼロの名前を聞いたとき、少なからず疑いを持った。
「そいつの名前はなぁ、研究施設でつけられてたナンバーだ!実験ナンバー"00(ゼロ)"なんだよ!」
そう、ゼロの名前が短い理由はこれだった。アルは事の重大さをとらえきれずにいた。その目に涙を浮かべ、その場から走り去ってしまった。「さぁ、化け物!子供をどうした!?」
街の人達がゼロに詰め寄る。 ゼロは固く閉ざしていた口をひらいた。「おい、化け物である俺にこんなことしてただですむと思ってんのか?」
しゃべり始めたゼロの目に、いつもの優しさはなかった。
「なんならここにいるやつらを今すぐミンチにしてやるぞ・・・」「この人数をどうにかできると思ってんのか!?」
人だかりの中から声があがる。
「お前らが何人で群れようと、ゴミはゴミだ。俺には関係ねぇ。なんなら見せしめに一人殺してみるか?」ゼロのセリフに街の人達はおされる。
「大体、俺が子供をさらったっていう証拠はあんのか?あ?」
街の人達は黙り込む。「どうなんだって聞いてんだよ!!うんとかすんとか言いいやがれ!!」
街の人達は何も言えないでいた。すると後ろから自衛団(警察のようなもの)の声がする。 「お宅の子供を保護している。至急、引き取りに来い。」
そういって自衛団は去っていった「どうやら犯人は俺じゃなかったみたいだなぁ?」
ゼロは人だかりの前へ歩を進める。 「邪魔なんだよ!道あけろ!」
ゼロがそう言うと人々は道をあける。「けっ!しけた連中だぜ・・・」
ゼロはそういって店を後にした。 街の人達はゼロの姿が見えなくなるまで立ちすくんでいた。
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