久々の更新です!
遅れてしまってスミマセンでしたm(_ _)m
第39話
辺りの空気は張り詰めていた。
風船に空気が詰まるように、この空間には殺意が満ちている。
ミラボレアスは、すでに別の生き物と化していた。
・・・その姿は、ミラボレアスにキリンの皮を貼り付けたようだった。
しかし、キリンのような神々しい光を放ちながら、その姿は狂気に満ちていた。
一方ゼロは、何も言わずにただ立ち尽くしていた。
視線を落とし剣に目をやると、ブォン・・・と、怪しい光を放つ。
すると黒い刀身に、ドロリとした白が浮かび上がった。
透き通った黒い光と、全てを塗り潰す白い闇が、決して溶け合うことなく剣の中に混在する。
「・・・さぁ・・・」
剣を手に、獣のような前傾姿勢をとる。
「・・・始めるぜぇ!」
言葉と同時に地面を蹴り、その衝撃に耐えきれずゼロ足場が吹き飛ぶ。
前方に向かって跳び、地面に足をつけることなく高速で移動する。
それを確認したミラボレアスは、ゼロに向かって火球を吐き出した。
「くると思ったぜ!」
叫んで、ゼロは剣を前に構えて地面に突き刺す。
腕に力をこめて、体を浮かす。
その真下を、ミラボレアスの火球が通過する。
その熱気で皮膚がチリチリと音をたてるが、気にはしない。
ゼロはクルクルと回転し、弧を描きながら飛ぶ。
そして、ミラボレアスが直前に迫った。
「くらえぇ!」
ゼロは回転の勢いを活かして、ミラボレアスの頭にかかと落としを浴びせた。
ガツン!と、派手な音と共に、ミラボレアスの頭は地面に叩きつけられ高くバウンドする。
着地したゼロは、間髪入れずに上に跳び上がる。
「うおぉぉ!」
完全に頭が上がりきった所に、ゼロはもう一発ミラボレアスの顎に蹴りを放った。
ミラボレアスの体はのけぞり、そのまま後ろに倒れそうになる。
・・・が、ミラボレアスは翼を広げて後方に飛び上がり、それと同時に雄叫びをあげる。
ーーー瞬間
パッと、空が光り、爆音と同時に地面が抉れた。
雷が、ゼロを襲ったのである。
しかし、その場所にゼロはいなかった。
ゼロは後方へ跳ぶことで雷を回避し、地面に突き刺した剣を引き抜く。
すると、また空が光り、それと同時に爆音が響きわたる。
ゼロは幾度も襲い来る雷を、右に左に跳躍しながら回避する。
何度目かの雷を避けたゼロは、空中に跳び上がる。
それを見たミラボレアスは、ゼロに雷を放つ。
ゼロは自分の頭上に剣を構え、雷は剣に帯電された。
「そらよ!」
剣を思い切り投げつけ、剣はミラボレアスの胸に突き刺さる。
グオオオ!!と、悲鳴をあげるが、まだ致命傷ではない。
しかし、ミラボレアスの体は傾き、そのまま落下する。
ーーーーその時
ミラボレアスの邪眼がギラリと光り、雷がゼロに直撃した。
「ぐああぁぁ!!」
ゼロも、体に煙を纏いながら落下する。
ゼロとミラボレアスが地面に叩きつけられたのは同時だった。
「ぐ・・・」
体を起こそうと力を入れるが、体はいうことをきかない。
・・・そんなゼロに、巨大な影が被さる。
いち早く起き上がったミラボレアスが、ゼロに迫っていた。
ハッと、慌てて顔をあげる。
ーーーー刹那
ドン!!という音と共に、ゼロの体は後ろに弾け飛ぶ。
ミラボレアスが前足にありったけの力を込めて、ゼロを殴りつけた。
ゼロは、水面を跳ねる石のように4回ほど地面を跳ねて、5回目でようやく体は跳ねなくなる。
それでも勢いは殺しきれず、そのままガリガリと地面の上を滑る。
「・・・ゲホ・・・」
咳き込むように吐血して、ゼロは仰向けに寝転がる。
そして、夕日に染まる空を眺めた。
・・・アカイ空・・・
血のようにアカイ・・・
下手をシたら、のみコまれテしまウとさえ思えてクる。
そのイロはひトつじゃなく、サマザマな“アカ”が折り重なって出来ている。
何よりモ広く、ドこまでモ深い・・・
・・・アカイソラ・・・
「・・・は、はハは・・・」
自然と、笑いが込み上げてきた。
「アははハ!」
どんな笑いなのか、自分でも検討がつかない声をあげて、ゼロはのそりと起きあがる。
「・・・もう、後戻りハ出来なイ・・・」
ダラリと下げられた手を地面に当て、四つ足になる。
その姿は、まさに獣そのもの。
「・・・渇くゼ・・・
オレを殺ルには、まだ足りナイ・・・」
ゼロはゆっくりと顔をあげる。
・・・ゼロの顔は、先程とは違っていた。
右目の下から、一本の赤い線のような模様が浮き出ている。
それはまるで、血の涙。
だが、一番の変化はそんな事ではない。
・・・ゼロの纏う雰囲気が、激しくかわった。
顔自体は、いつものゼロである。
しかしその表情は、ミラボレアスのそれに酷く近いものを思わせる。
「モっと・・・もッとダ・・・」
ビキビキと音をたて、ゼロの爪が研ぎすまされていく。
「・・・さァ・・・
オマエの狂気ヲ・・・オレに見セろ!」
ググッ・・・と身を屈めて、ゼロは高く跳躍し、その拍子に地面は盛大に砕ける。
それを視認したミラボレアスは、ゼロに向かって火球を放つ。
「芸のナイ奴だナ」
そう呟いて、ゼロは自らの爪でその火球を切り裂いた。
裂かれた火球は二つに分裂し、ゼロの後方で爆発する。
着地したゼロは、ミラボレアスに向かって猛スピードで直進する。
ミラボレアスは、ゼロを近付けまいと雷を放った。
「フン・・・」
つまらなそうに吐き捨て、ゼロは横に跳ねる。
その直後、雷が地面を焦がした。
しかし、ゼロには当たらない。
ゼロは外壁に張り付き、雷が迫ると、今度は対面の外壁に跳ぶ。
その距離は10メートル以上はある。
けれど、ゼロは悠々と跳んで移動する。
雷は、ほんの一瞬の差でゼロには当たらない。
ミラボレアスとの距離が縮まり、ゼロは横から襲いかかった。
「ハアアァァ!!」
手を突き出し、その爪はミラボレアスの眼球に深々と突き刺さる。
ギュオオォ!!と、悲鳴を漏らし、ゼロを振り払おうと頭を激しく振るがゼロは離れない。
「ソラソラァ!!
そンなハンパじゃア殺されちマうぜェ!!」
ゼロは、心底愉快そうに笑みを浮かべる。
それが頭にきたのか、ミラボレアスは首を曲げて力をためる。
そして・・・
ギュオアァァァ!!と、形容しがたい叫びをあげて、思い切り首を振る。
ブチブチ!という音と共に、ゼロは地面に叩きつけられる。
その手には、串に刺さった団子のようにミラボレアスの目玉が刺さっていた。
ブチブチという音は、ミラボレアスの眼球が根元から引きちぎれる音だった。
地面に叩きつけられ、高くバウンドしたゼロの体を、ミラボレアスは頭で叩き飛ばす。
トゴン!と、派手な音と共にゼロは外壁に深くめり込む。
しかし、ミラボレアスの猛攻はまだ続く。
ミラボレアスは外壁にめり込んだゼロの体に体当たりし、さらに火球をぶつけた。
そこまでした所で、ミラボレアスは後ろに下がった。
そして、赤く焼けた壁を凝視する。
・・・ゆらりと、何かが動く。
赤い海の中から、ゼロが姿を現した。
体にまとわり付く溶けた土を、邪魔そうに取り除く。
その熱で焼けただれた皮膚は、みるみるうちに修復されていく。
フラフラ揺れながら歩いくゼロ。
「・・・ぐ・・・!?」
急に、咳き込むように口元に手を当てる。
「ゲフ・・・!ゲホ・・・!
・・・ガハ・・・」
ベシャリと、大量の血液が地に落ちる。
「ハァ・・・」
落ち着いたゼロは、口元についた血を拭った。
「・・・どウやら・・・
内臓ノ方は直ぐニは治らネーみたいダな・・・」
フゥ・・・と、軽くため息をついて、ミラボレアスに目を向けた。
・・・そこには、先程とは比べものにならないほど狂気に満ちたミラボレアスがいた。
それを見たゼロは、クク・・・と笑みを浮かべる。
「それダ・・・
そのくらイじゃナいと、オレは殺れないゼ・・・」
そう口にして、ゼロの体から更に殺意がこぼれはじめる。
・・・もはやこの空間では、ゼロとミラボレアス以外はまともに生きてはいけないだろう。
辺りは静寂に包まれている。
虫一匹なかず、鳥は一羽とてさえずらない。
地面には、鳥が数羽地に落ちていた。
死んではいないが、動くことは許されず、ピクピクと小刻みに痙攣している。
それ程までに、この空間には殺意が溢れている。
そんな中、ゼロはミラボレアスに襲いかかった。
「マだ終わっテネぇよ!!」
叫んで、ミラボレアスを殴りつける。
ミラボレアスも負けじと、ゼロに攻撃を仕掛けた。
互いに、近付いては離れ、離れては近付く。
そんな戦いを、一時間程繰り返した。
・・・
・・
・
一時間後、ゼロとミラボレアスは睨み合っていた。
もう互いに、力は残っていない。
ハァ、ハァ・・・と、息をするのも苦しそうである。
そんな中、ゼロがミラボレアスに向かってゆっくりと歩きだす。
「・・・モう、時間があまりナい・・・
・・・名残惜しいが、そろそロ終わらせヨうか・・・」
一歩、また一歩と、ゼロは歩を進める。
警戒したミラボレアスは、空高く舞い上がった。
それを見たゼロは、近くにあった巨大な瓦礫をミラボレアスに向かって投げつけた。
ヒュゴウ!!と空を切り、凄まじいスピードで飛来する瓦礫。
そのスピードに対応しきれなかったミラボレアスの顔に、瓦礫は直撃した。
ミラボレアスは一瞬のけぞり、直ぐに視線を戻す。
・・・しかし、既にゼロはそこにいない。
ゼロは、ミラボレアスの胸に深々と突き刺さった剣に手をかけていた。
「・・・オマエの敗因、教えてやろうか・・・?」
ぼそりと、ゼロが呟く。
ミラボレアスは振り払おうとするが、体は動かなかった。
何かに縛られたように、体は動かない。
・・・原因は、キリンだった。
よく分からないが、それはキリンが内側から抑えつけているのだと、ゼロは確信した。
「・・・お前ノ敗因ハただ一つ・・・
それハ・・・」
ぐっ・・・と、剣を握る手に力を込める。
「・・・オレを・・・
敵にまわした事だ!!!」
ザシュン・・・!と、ゼロは剣を振り、地面に着地する。
ミラボレアスは、その場に制止したままである。
「・・・残念だったな」
そう呟いて、剣を背中におさめた。
ーーーー途端
ミラボレアスの首が、ズルズルとズレる。
首だけではなく、体中が細切れにされている。
・・・さっき、聞こえた斬撃音は一回。
しかしそれは、一回しか“聞こえなかった”だけ。
ゼロはその一瞬で、ミラボレアスの体を切り刻んでいた。
ミラボレアスは大量の血液と臓物と共に、バラバラになった体を地に撒き散らした。
グチャリと響きわたるその音が、ミラボレアスとの戦争の終わりを告げる音だった。
・・・しかし
「俺の戦いはまだ・・・
終わってねぇ・・・」
いつの間にかゼロは、普段のゼロに戻っていた。
「・・・行かなきゃな・・・
次の戦場へ・・・!」
そう呟いて、ゼロは街に向かって歩きだした・・・
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