え〜・・・なんとなく書き始めた外伝なんですが、なんとなくあと少し続いてしまいそうですf^_^;読んで頂ければ嬉しい限りです
第32話〜その2〜
ゼロは、ジョンの屋敷の広さに圧倒されていた。
今、目の前を歩いているルーシュを見失えば、確実に迷子になる。
そんなことを考えながら、階段を降りていく。
しばらく廊下を歩いていたが、急にルーシュが立ち止まった。
「うわぁ!」
ポスンと、ゼロはルーシュの背中にぶつかる。
「いきなりどうたの、おばちゃん?」
ゼロが尋ねると、ルーシュはニコニコしながら振り返った。
「ここよ、ここ」
そう言って、扉を指差す。
「ここに、今は着なくなったお洋服がいっぱいあるわ。って言っても、まだ新しいやつも沢山あるから安心して」
ルーシュはニコニコ顔のまま、扉を開いた。
・・・そこには、部屋いっぱいに服がぶら下がっていた。
見渡す限り、服、服、服・・・
洋服でできた迷路のようだった。
「ちょっと待っててね。今お洋服選んでくるから!」
ルーシュは、軽いステップで迷路の中に飛び込んで行った。
取り残されたゼロとジョンは、何も言わずにただ立ち尽くす。
・・・
しばしの沈黙。
気まずい空気が2人の間に流れる。
その空気に耐えきれなくなっのか、唐突にゼロが口を開いた。
「あのさ・・・1つ、聞きたいことがあるんだけど・・・」
「なに、ゼロ君?」
ジョンがくるりと振り返る。
「いや、“君”はいらないけど・・・お前、さっき屋敷から出ちゃいけないって言ってたけど・・・何で?」
ゼロが聞くと、ジョンは少し悲しそうにルーシュに目を向ける。
「・・・お母さん、病気なんだ・・・原因不明の・・・」
言われて、ゼロは首を傾げる。
「病気?あんなに元気なのに?」
「今日はたまたま調子がいいだけ・・・悪いときは、ベッドから起き上がることも出来なくなる・・・」
「ふぅん・・・」
ゼロも、ルーシュに視線を向けた。
「それでね、お父さんがいないときは、僕が看病するって決めたの・・・使用人の人もいるんだけど、なんとなく心配だから・・・」
「ジョンって、いい奴なんだな・・・」
「そんなことないよ・・・ただ、当たり前のことをしてるだけ・・・」
ジョンは、少し嬉しそうに目を細める。
そうしているうちに、ルーシュが洋服をもってやってきた。
「はい、これ。暑くない物を探したんだけど・・・これしか無かったわ・・・」
そう言って、半袖のシャツ、半ズボンをゼロに手渡す。
「サイズ、大丈夫かしら?」
「・・・大丈夫だと思う」
ゼロは、おもむろに上着を脱いだ。
『あ!』
ジョンとルーシュが、声を揃えて驚く。
「その傷・・・」
ルーシュが、ゼロの体に刻まれた無数の傷跡を指差す。
「・・・これ?この傷なら心配ないよ。もうとっくの昔に塞がってるし」
「そうじゃなくて、一体何があったの?」
そう聞かれて、ゼロは少し悲しそうな顔をした。
「・・・おばちゃん達も知ってると思うけど、俺は研究所を抜け出したとき、沢山の人間を殺した・・・その時、つけられた傷だよ・・・この傷の数だけの人間を、俺は・・・殺してしまった・・・」
・・・・・・
3人を沈黙が襲う。
「・・・でも・・・」
ゼロが口を開く。
「・・・この傷を見ると、安心する・・・多分、この傷跡を見る度に、嫌なことも沢山思い出す・・・それでも・・・痛い思いもしたけど、俺は確かにここにいる・・・この傷跡は、その証・・・」
へへっ・・・と、照れくさそうに笑い、ルーシュに手渡されたシャツを着る。
そのままズボンもはいて、ゼロは嬉しそうに笑った。
「大きさぴったりだ!ありがと!」
ルーシュは何も言わずに、ゼロの顔を見つめた。
・・・なんて真っ直ぐな子。
とても素直な、優しい子・・・
この子は、この年で自分の罪から目を背けず、しっかりと向き合っている。
この年で、すでにいろんな物を背負っている。
なんて、強い子だろう。
それに比べ、自分達大人は何をしているのか・・・
こんな子供に罪を押し付けて、自分達は見ないふり・・・
自分達では何も背負わない・・・背負えない・・・
背負えないから押しつける・・・
たとえ、それが子供であっても・・・
情けない人ばかり・・・自分を含めて・・・
「どうした、おばちゃん?」
その声で、我にかえる。
見れば、ゼロが心配そうにこちらを見つめていた。
「なんでもないわ・・・服、似合ってるわよ、ゼロちゃん」
「本当か!?」
嬉しそうに、ゼロは瞳を輝かせる。
「えぇ、本当よ。・・・さぁ、そろそろご飯にしましょう」
そう言って、ルーシュはゼロとジョンの手を握り、食堂へと歩き出した。
・・・
・・
・
「到着〜。ここが食堂よ」
案内されたのは、長いテーブルのおかれた大きな部屋。
こんなに広いスペースをどうやって使うんだろう?
果てしなく大家族なのだろうか?
ゼロがそんなことを考えていると、1人の使用人が近付いてきた。
そのまま、ルーシュに軽く頭を下げる。
「奥さま、如何なされ・・・」
頭を上げようとした時、視界にゼロが入り、言葉を無くす。
そして、視線がゼロに固定される。
「奥さま・・・まさか、この子は・・・?」
「えぇ、ゼロちゃんよ」
悪びれる様子もなく、平然とルーシュは答える。
「いけません!このような者を屋敷にいれては!」
使用人が声を上げると同時に、どこからかいかついスーツ姿のガードマンが2人、姿を現す。
そして、ゼロを捕まえる。
「え?ちょ?ぁぁぁ〜・・・」
ズルズルと、ゼロは2人のガードマンに引きずられる。
・・・その時
「やめなさい!!」
突然、怒りのこもった声が響き渡った。
声の主はルーシュ。
使用人やガードマンはもちろん、ゼロとジョンまでもが驚いた表情でルーシュを見る。
ルーシュは、さっきまでの優しい表情が、まるでなくなっていた。
心底怒っているといった目で、ガードマンを睨みつける。
「・・・もう一度言います・・・その手をはなしなさい・・・」
「し、しかし・・・!」
「あなたの言い分を聞く余地はありません!!」
ガードマンの言葉を遮り、ルーシュは声を上げる。
「聞こえませんか?その手をはなせと言ってるのです。・・・次はありませんよ?」
じろりと、ガードマンを睨む。
「し、失礼しました・・・」
ガードマンはゆっくりとゼロから手をはなした。
次にルーシュは、使用人を睨みつける。
「・・・何故この子がここにいてはいけないの?何がそんなに不満なの?」
「いえ、そのようなことは・・・」
使用人は頭を下げたまま、どうしていいか分からないという感じだ。
「じゃあ何がいけないというの?」
ルーシュは、厳しい視線で使用人を問いただす。
「そ、その子は危険なので、決して屋敷に近付けぬよう、旦那さまから命じられています・・・」
「この子が危険だなんて・・・そんなの大人の勝手な都合よ。自分達の罪を認めず、ただ一方的に悪いと決めつける。・・・人として恥ずかしいことだと思わない?」
「しかし、命令ですので・・・」
「責任なら私がとります。・・・それなら構わないでしょう?」
「それでは、奥さまが旦那さまに何を言われるか・・・」
使用人がそう言った所で、ルーシュはしびれを切らした。
「ああ、もう!あなた達使用人やガードマンとしては優秀だけど、人としては最低よ!?大体あなた達・・・」
言おうとして、止めた。
ゼロがルーシュの袖を指でつまみ、クイクイ引っ張っているから・・・。
「もう、いいよ・・・」
顔を伏せて、そう言った。
「俺が帰ればいいんでしょ?・・・なら、帰るよ、俺・・・俺のせいで人を困らせたくないよ・・・そんなのは、もう沢山だ・・・俺はもう帰るから、もう二度と来ないから、その人達を許してあげて・・・」
「駄目よ、ゼロちゃん・・・」
「でも、俺が悪いんだよ?・・・俺がこんな所に来ちゃったから・・・俺が身分をわきまえないから・・・俺が化け物だから・・・俺が・・・俺が・・・」
「駄目だって言ったでしょう、ゼロちゃん?」
そう言って、ルーシュはゼロの肩にてを添える。
「なんでもっと自分を大切にしてあげないの?・・・何故そんなに自分を犠牲にするの?」
ゼロは何も言わない。
ただ、悔しそうにうつむいている。
・・・心が痛んだ。
今目の前にいる子は、いろんな物を背負っている。
けれど、その小さい体は、“罪”という荷物に今にも潰されてしまいそう。
とても強く、故に脆く、儚く、愛おしい存在・・・
・・・ルーシュは、いつもの優しい表情に戻った。
「・・・そんなに自分を責めては駄目・・・もっと、自分を大切にしなければ駄目よ・・・確かに、あなたは罪を犯したかもしれない・・・でも、それとこれとは話が別よ・・・だからあなたは、もっと胸をはって、堂々とここにいなさい・・・“もういい”なんて、寂しいことは言わないで・・・」
「・・・」
ゼロは何も言わずに頷いた。
そんなゼロを、ルーシュはまたもや抱きしめる。
そしてゼロも、気が付けば涙を流していた。
・・・自分では泣くつもりはないのに、この人に抱きしめられると涙が止まらなくなる。
言葉の1つ1つが、自分を癒やして行くのが分かる。
涙が止まらない。
「・・・今は、泣きたいだけ泣けばいいわ・・・でも、男の子があんまりメソメソしてたら駄目よ?」
「・・・うん・・・うん・・・」
ゼロは何度も頷いた。
・・・しばらくはそうしていたが、やがてゼロは泣き止む。
「・・・もう、大丈夫・・・」
そう言って、ゆっくりとルーシュから離れた。
「・・・ありがと」
「いえいえ・・・お安いご用よ」
ルーシュは、嬉しそうに微笑む。
「・・・さてさて・・・遅くなってしまったけど、お昼ご飯にしましょう・・・料理、お願い出来るかしら?」
使用人に尋ねると、少し気まずそうに口を開く。
「それが・・・ケルビの肉が切れてしまい、何をお作りしていいか・・・」
それを聞いたゼロは
「だったら俺がとってくるよ!ちょっと待ってて!」
そう言って駆け出した。
「待って!僕も行く!」
ジョンも、ゼロにつられて駆け出す。
「あ!ゼロちゃん!?ジョンまで・・・行っちゃったわ・・・」
ハァ・・・と、ルーシュはため息をつく。
「・・・あなた達?」
ルーシュは、使用人とガードマンに目を向ける。
「今回はゼロちゃんに免じて許してあげるけど、次、同じようなことがあれば許さないわよ?」
『かしこまりました』
声をそろえて、深々と頭を下げた。
・・・
・・
・
ゼロとジョンは、屋敷の裏にある山に来ていた。
手には片手用の剣が握られている。
・・・と、言っても、ハンターが使う場合の片手用なので、ゼロとジョンには大きすぎるほどだった。
この剣は、路地裏にハンターが捨てていったものを、ゼロが護身用にコッソリ拾っていたものである。
「本当にここにケルビがいるの、ゼロ?」
ジョンが首を傾げる。
「間違いないよ・・・俺、この前見つけたもん」
「なら、信じるよ」
・・・2人は、さらに奥まで進んで行った。
そして、ケルビを見つける。
「あ、本当にいた・・・よぅし、だったら早く・・・」
「ちょっと待て」
ガシッと、走りだそうとしたジョンの襟を掴む。
「・・・何?」
「あれ見ろよ」
ゼロはケルビを指差す。
ジョンは、言われたとおり、ケルビを見つめた。
すると、ケルビの足元でもそもそ動く小さなケルビが視界に入る。
「あれは子供がいるから駄目・・・他のにしよう・・・」
「え?なんで?」
ジョンは首を傾げる。
「なんでって・・・かわいそうだろ?」
「どうして?親に逃げられても、子供は確実にとれるじゃない。一番効率的だと思うけど・・・」
そう言われて、ゼロは唸りながら頭を抱える。
「・・・やっぱり駄目・・・上手く言えないけど、とにかく駄目・・・」
「・・・わかったぁ・・・」
ジョンは、渋々納得する。
・・・2人は、別の獲物を探して歩きまわったが、全て子連れで、ゼロが決まって駄目だしをしたので、結局獲物は捕れなかった。
「・・・獲物、捕れなかったね・・・」
ジョンは、ガクリと肩を落とす。
「・・・このままじゃおばちゃんに悪いから、食べられる山菜を採って帰ろう!」
そう言って、嬉しそうにゼロは山菜を摘みだした。
・・・ジョンは、ゼロが何故子連れのケルビを狙わなかったのか、解らないでいた。
この時は、まだ・・・
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