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第29話
痛い・・・
体中傷だらけ、おまけに火傷だらけだ。・・・
あばら骨も、何本かイカレてる。
しかも、肺を傷付けたみたいだ。
息をする度に胸に激痛がはしる。
“・・・ならば、殺すか?”
・・・だからお前はだれなんだ?
何でいちいち出しゃばるんだよ、お前は?
“あまりにも見ていられないからさ・・・ちんたら殺るんじゃねぇよ。・・・俺なら、もっとサクサク殺れる。もっと上手くバラしてみせる”
そんな事・・・!
・・・駄目だ・・・
意識が薄れていく・・・
“ほら・・・お前の体を明け渡せ”
させない
お前の存在は、モノの命を軽くしすぎる。
“それはお前も同じだろ?・・・と、言うより、お前は俺以上だろ・・・もう一度言う、俺に体を明け渡せ・・・”
そんな事はさせない。
・・・させたくないのに、意識はどんどん薄れていく。
・・・代わりに、自分とは別の人格が浮上する。
自分を侵食していくのがわかる。
虫が這い上がって来るような感覚・・・
最悪だ・・・気分が悪い
・・・駄目だ・・・意識が・・・!
ーーーーー
「〜〜っ!!」
たまらず、はね起きる。
「・・・夢・・・」
ゼー、ゼー・・・
耳障りな音が聞こえる。
「何の・・・音・・・」
口を開いて、ようやくその音が自分から発せられたもだと気が付いた。
体は、大量の汗でぐっしょり濡れている。
・・・とりあえず、呼吸を整えよう。
ゼロは、2回深呼吸をして、火照った体を落ち着かせる。
窓から流れ込んでくる風が気持ちいい・・・
「・・・ここはどこだ?」
落ち着いたところで、ゼロは辺りを見渡す。
・・・ここは、集会所にある医務室。
それに気付いたゼロは、はぁ・・・とため息をついた。
「ホント・・・ここにはよく世話になるな・・・」
言って、立ち上がろうする。
・・・ズキン・・・
「いっ!・・・ててて・・・」
突如、激痛がゼロを襲った。
「って〜・・・そう言えば傷めてたんだった・・・」
痛んだ箇所をさすりながらあることに気付く。
「・・・俺・・・何でここにいるんだ・・・?」
ゼロは首を傾げる。
そこへ・・・
「目が覚めたみたいだな」
ジョンがやってきた。
「よう、ジョン」
「よう、じゃないこの馬鹿!」
ゴツンと、ゼロの頭を小突いた。
「いって〜・・・怪我人になんてことしやがる!」
ズキン・・・
「あててて・・・。くそ・・・大声だすとイテェ・・・」
「自業自得だ。ざまみろ」
・・・ジョンの言葉にはどこか棘がある。
「もしかして・・・怒ってる?」
「もしかしなくとも怒ってるわ!」
ゴツンと、もう一発。
「いって〜・・・そんなにボコボコ殴るなよ!」
「やかましい!さんざん心配かけやがって!」
「なんだよ!約束通りちゃんと帰ってきたじゃねぇか!」
「これのどこが“ちゃんと”だ!・・・こんなズタボロで帰って来やがって!」
「むぅ・・・」
口負けして、ゼロは口を尖らせる。
「ったく・・・ん?」
ジョンは、部屋に置かれていた剣を見て目を丸くする。
「ば・・・ばかな・・・なんで、これがここに・・・?」
ジョンはあからさまに驚く。
「・・・その剣のこと知ってるのか?」
「知ってるって言うか、ついさっき・・・」
ジョンは少し顔を伏せる。
「さっき?」
「・・・いや、後で話す・・・」
そう言って、ジョンは顔をあげた。
「それより・・・お前は何かわかったのか?一体何があった?」
そう聞かれて、ゼロは少し顔を伏せる。
「・・・何もって訳じゃないんだが・・・大事なことは分からなかった・・・ただ、俺が昔の人間ってのは間違いない・・・」
「そうか・・・それで?」
「・・・テオ・テスカトルと戦って、なんとか倒して今に至るってわけ」
「お、お前・・・テオ・テスカトルと戦ったのか・・・?」
ジョンは驚愕する。
「ん?知ってんのか?」
「知ってるも何も、今現在知られてる古竜の中でも1・2を争う程の強さだってハンター達の間で騒がれてるぞ」
「そうなのか?知らなかった」
「知らなかったってお前・・・」
ジョンは呆れている。
「・・・なぁ、俺も1つ聞きたいことがあるんだけどよ・・・」
何だ?と、ジョンは首を傾げる。
「俺、どうやってここまで戻って来たんだ?」
「あぁ、そのことか・・・お前、本当に覚えてないのか?」
「?」
何でそんなことを聞くのだろう。
ゼロは首を傾げる。
「いや、覚えてないならそれでもかまわないんだ・・・」
「何があったんだよ?」
「・・・実はな・・・さっき、キリンがお前を背中に乗っけて来たんだよ」
「え?キリンが・・・?」
「あぁ・・・最初見たときは、正直驚いた。・・・お前がやられちまったのかなって思ったけど、お前は生きてたし、どう考えてもお前を助けたとしか考えられなかった」
「キリンが・・・俺を・・・?」
ゼロは考え込む。
「何か覚えてないのか?心当たりとか」
「悪いがそれもサッパリだ・・・」
何故キリンが自分を助けたのだろう?
・・・それに、これはキリンにとって過干渉なのではないか?
ゼロが考えていると、アルとミリアがやって来た。
「あ、ゼロ。目が覚めたんだ」
「あぁ・・・おかげさまでな」
「本当よ・・・こんなボロボロで帰って来るなんて・・・」
「それはさっき聞きました・・・そんなことより・・・」
ゼロはアルに視線を向ける。
「アル、もう体は大丈夫なのか?」
「うん!それこそ、おかげさまでね」
口にして、ニコッと笑った。
「そっか・・・よかった」
ゼロは安堵の表情を見せる。
「アルちゃんよりあんたよ、あ・ん・た!」
ミリアはズイッと、ゼロに詰め寄る。
「人にさんざん心配かけといて、帰って来たと思ったらこの有り様よ?・・・おまけにわけわかんない物がここにあるし・・・」
ミリアは部屋に置かれてある剣を見る。
「なんなの、あの剣?」
「・・・いや、剣じゃね?」
「それは分かってるわよ!」
スパン!と、ミリアもゼロの頭を叩く。
「って〜・・・お前ら・・・もっとこう、怪我人をいたわろうって気はねぇのかよ?」
「自分勝手に出て行って勝手に怪我して来た奴にいたわる価値なんてないわ!・・・って、そうじゃなくて、あの剣はどういった代物なのかって聞いてんの!」
「俺もよく知らん」
「よく知らんって・・・」
ミリアは呆れて頭を抱える。
「よく知らんって事は、少しは知ってるんだな?」
ジョンは、ニヤリと笑った。
「知ってる事を話してもらおうか」
「いや、それは構わねぇんだけど・・・」
「構わないけど・・・何だ?」
ゼロは、チラリと剣を見る。
「何であの剣にそこまでこだわるんだ?普通どうでもいいことだろ?」
そう言ったゼロを見て、ジョンは顔をしかめる。
「あぁ・・・普通ならどうでもいいことだ。・・・普通ならな・・・」
「・・・どういうことだよ?」
「・・・あの剣には、誰もさわれなかったの」
アルが口を開く。
「・・・今日、海の方で騒ぎがあったの。気になったからそっちに行って見ると、砂浜にこの剣が打ち上げられてた・・・」
「え?それは俺が持ってたんじゃねぇのか?」
違うよと、アルは首を横に振る。
「・・・とりあえず邪魔だからって、漁師の人がどかそうとしたら、剣に触れる前にふきとばされちゃったの・・・私達には・・・多分、漁師の人の目にも何も見えなかった・・・目には見えない何かに弾かれた・・・」
「俺とミリア、そしてアルも試してみたが、結果は同じだった・・・それでみんな諦めたとき、今度は集会所の方が騒がしくなって何かと思えば、お前がキリンに運ばれてきたっていうじゃねぇか・・・それで俺達は剣をほったらかしでここまで来たんだが・・・何故かこの剣はここにあった・・・って訳だ・・・」
「他の誰かが運んで来たとか?」
「それはない・・・俺達は誰よりも早くここに来た・・・だから誰かが持って来るにしても、俺達より早く来ることは不可能だ・・・」
「じゃあ何でここにあるんだよ?」
「だから俺達もそれを知りたいんだよ。・・・お前も知らないってことは・・・この剣が自らここに来たとか・・・」
「まっさか〜。大体、なんで俺の所に来るんだよ?」
「・・・お前はこの剣を握れるんじゃねぇのか?」
「え?・・・あ、あぁ。」
ジョンは、やはりな・・・と言って、ますます真剣な表情になる。
「・・・とにかく、お前とこの剣には何らかの繋がりがあるのは間違いなさそうだな・・・」
う〜ん・・・と、ジョンは考え込む。
「まぁいい・・・さっきの質問に戻ろう。・・・お前はこの剣について何を知ってるんだ?」
「知ってる、って訳じゃねぇんだ・・・ただ、何か不思議な物だってことは分かる・・・」
「不思議?」
ジョンは首を傾げる。
「あぁ・・・この剣は塔の頂上に突き刺さってた・・・そしてこの剣を握ったら、俺は過去の出来事を垣間見たんだ・・・そこには赤ん坊の俺がいて、タナトスって呼ばれてた・・・」
タナトス?と、ジョン達は顔を見合わせた。
「聞いたことないな・・・キリンは何か言わなかったのか?」
「・・・その単語の意味はわからなかったけど、俺は剣の記憶とやらに触れたらしい・・・それとこの剣は、神様が天地創造の時にイタズラにつくったとも言ってたな・・・」
『・・・』
沈黙。
4人共あまりの話しの大きさに、言葉を失っていた。
「あ、それと・・・」
ゼロが何かを思い出し、口を開く。
「この剣を俺が使ってるのを見て、テオ・テスカトルが相当驚いてたな・・・なんで貴様がその剣を使えるんだ?ってよ・・・」
「・・・どうやら、古竜達はこの剣がなんなのか、明確に知ってるらしいな・・・それに、テオ・テスカトルがそんな風に驚いたってことは恐らく・・・」
「あぁ・・・この剣は俺にしか扱えない・・・」
『・・・』
本日2度目の沈黙。
・・・その沈黙を破ったのは、集会所のロビーから聞こえた悲鳴だった・・・
ーーーーー
「何事だ!?」
ゼロ達は、悲鳴の原因を確かめるべく、医務室を飛び出して、集会所のロビーまで来ていた。
そこに集まっていたハンター達はパニックに陥っていた。
ゼロは、その中の1人の男を捕まえる。
「教えろ!何があった!?」
問い詰めると、その男は出口を指差して
「キ、キリンが・・・キリンが来た・・・」
ガクガク震えながらそう言った。
「キリンが!?」
「おい、ゼロ!」
「分かってる!確かめに行くぞ!」
言って、ゼロ達は外に出る。
・・・そこには、確かにキリンがいた。
人を襲っている様子はなく、ただ何かを待っているように見えた。
そして、ゼロに気付いたキリンは、ゼロに駆け寄って来る。
“やっと気が付いたみたいだな・・・”
「お前・・・俺を運んでくれたみたいだな・・・ありがとよ」
キリンは、フッ・・・と小さく笑う。
「でも・・・お前にとってこれは過干渉じゃねぇのか?」
“確かにな・・・我ながら不思議でならない・・・過干渉とわかりながら、何故汝を助けたのか・・・”
「ゼロ・・・?誰と話してるの?」
突然、アルが口を開いた。
「あ・・・そうか。アルはまだ知らなかったな・・・俺、古竜と話せるんだよ」
「・・・はい?」
アルは目を白黒させる。
「ま、細かいことは気にすんな。キリンは結構いい奴なんだぜ」
アハハと、ゼロは笑う。
「ところで・・・何でお前はここにいるんだ?」
"汝に、賢者の居場所を伝えようと思ってな"
それを聞いて、はっとする。
忘れていたが、今一番気になることだ。“ここより西に向かえ・・・そこに、もはや人が立ち入らなくなった、岩山が立ち並ぶ荒野がある。”
「・・・そこにいるんだな?・・・賢者とやらが」
“その通りだ・・・”
言って、キリンは背を向ける。
“用はそれだけだ・・・さらば”
「あ、おい!」
呼び止める声を無視して、キリンは走り去ってしまった。
「行っちゃったね」
横から、アルがひょっこり前に出てくる。
「それで、キリンは何て言ってたの?」
「・・・西に向かえとさ・・・そこに賢者ってのがいるらしい」
「よし、西だな」
後ろから、ジョンの声が聞こえてきた。
「よしってお前・・・まさかついて来る気じゃ・・・?」
「もちろんついて行く」
「だ・・・駄目だって!前にも言ったじゃねぇか!それに、何があるか分からねぇんだぞ!?」
「いーや。もうお前の言い分は聞かないぞ。・・・それに、何があるか分からないなら、尚更1人では行かせられないな。・・・またボロボロで帰って来られても困る」
「じゃあ私も・・・」
「お前は駄目だ、アル」
名乗り出ようとしたアルをゼロは止める。
「何で?体ならもう平気だよ?」
「いや、そうじゃないんだ。」
「じゃあどういうことよ?」
プ〜と、アルは子供のように頬を膨らませる。
「ほら・・・リリスをこれ以上ほっとくわけにはいかないだろ?」
「あ・・・そっか」
「な?・・・お前が入院してる時も、ちょっとしかかまってやれなかったし・・・」
「・・・分かった・・・」
アルは渋々引き下がる。
「しょうがないわね・・・私も残るわ」
と、ミリアが口を開く。
「本当はついて行きたいけど・・・アルちゃん1人じゃ大変でしょう・・・まだ街のことをよく知らないみたいだし・・・」
「はい・・・スミマセン・・・」
「別に謝ることじゃないわよ。それに・・・この2人なら、別に私は必要ないでしょ・・・剣神のゼロに、達人のジョン・・・大層な通り名ね・・・」
「また昔の話しをするなぁ、お前も・・・」
ゼロが呆れる横で、アルが首を傾げる。
「何の話しですか、ミリアさん?」
「ちょっと昔の話しよ・・・今度教えてあげるわ」
「そうですか・・・」
アルは少し残念そうにうつむく。
「さて・・・そろそろ行くか?」
ゼロが聞くと、ジョンは無言で頷く。
「じゃ、行ってくるぜ」
言って、ゼロとジョンは歩き出した。
「ちょっと!?あんた達食料とか準備しないの!?」
ゼロ達は振り向かずに、『現地調達〜』
と言って、パタパタと手を振り、2人並んで歩いていった・・・


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