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第25話
「寒い・・・暑いのも嫌いだけど、寒いのはもっと嫌いだ・・・」
ここは雪山。
ゼロは、到着した途端に凍えだした。
「文句いうな。・・・ほら、これ飲め」
言って、ジョンはホットドリンクを差し出す。
「おお!ありがたい!」
ジョンの手からホットドリンクを取り上げて、グビグビと飲み干す。
「ぷはぁ・・・ふっかぁ〜つ!」
「あんた緊張感が無さ過ぎよ!少しは緊張しなさいよ!」
「分かってるって。お前こそ、緊張し過ぎるなよ」
「余計なお世話よ」
ふん!と、ミリアは鼻を鳴らし、わざとらしく胸を張る。
「・・・そうみたいだな。んじゃ、行きますか」
そう言って、ゼロ達は雪山を登りだした。
ーーーーー
3人はしばらく雪山を登っていたが、これといった異常は見当たらなかった。
天候は、雪がちらついてはいるが、これはいつものことである。
モンスターも、数は減ってはいるが、それなりの数のモンスターはうろついている。
「う〜ん・・・ものの見事に異常なしだな・・・」
「そうねぇ・・・本当にいるのかしら?・・・ゼロ、何か分かる?」
ミリアがゼロに顔を向けると、ゼロは真剣な顔をしていた。
「あぁ・・・ここで間違い無さそうだ・・・この辺りに来てから、圧倒的な存在感を感じる・・・」
言って、冷や汗が流れる。
「と、いうことは・・・」
「あぁ・・・近いな・・・。」
「どこらへんにいるか分からないの?」
「それは分からないが・・・見つけるのは簡単だと思う・・・多分、あっちだ・・・」
そう言って、山頂へ続く一本道を指差す。
「根拠は?」
「よく見ろ・・・他のモンスターはあそこに近付かない・・・正直俺も、近寄りたくない・・・」
「でも、行くしかない・・・だろ?」
「あぁ、そうだな・・・」
そうして、慎重に進んでいくと、それはいた。
青く、冷たい光を放つ体は馬に角が生えたような姿で、それほど大きくはない。
しかし、光輝くその姿は、どこか神のようなものを連想させる。
「あ・・・あれが・・・キリン、か・・・?」
ジョンは驚きを隠せない。
「確かに・・・こうして対峙すると凄い存在感ね・・・」
「・・・」
「あ・・・おい、ゼロ!」
ゼロは無言でキリンに歩み寄る。
ゼロに気付いて、キリンがゆっくりと振り向く。
“ほう・・・力の波を辿ってみれば・・・珍しいものに出会ったな”
「な!?お前しゃべれるのか!?」
ゼロは驚く。
“・・・いや、これは言語ではない。私の意志を、お前の脳が都合よく受け取っているにすぎない"
「まじか・・・古竜ってのはそんな芸等もできるのかよ・・・」
"できる者は限られている。例えば、先日汝に倒された鋼の子は、まだ若いが故にこうした技を持ち合わせていなかった"
「お前・・・何故それを知っている!?」
「おい、ゼロ?」
唐突に、後ろからジョンが声をかける。
「何だ、ジョン?」
「いや・・・お前・・・さっきから誰としゃべってるんだ?」
「え・・・?」
ゼロは驚いて、キリンの方を向き直る。
“・・・その者達には聞こえまい。人間の脳に、それ程の潜在能力はない・・・故に、我が声が聞こえる汝は人間ではない、ということだ”
「お前・・・俺が何なのか知ってんのか!?」
ゼロは、思わず熱くなる。
“・・・知っている・・・と、言うより覚えているというほうが正しいか・・・”
「何・・・?」
“言った通りだ。我は一度、汝に会った事がある。・・・汝はまだ赤子だった故、覚えてはおらぬだろうがな・・・”
「いったい、いつ・・・?」
“・・・あれは・・・随分昔の事だ・・・気の遠くなる程昔の話・・・まだ我が生を受けて100年しか経っていないとき・・・今から500年前の話だ・・・”
キリンは、昔を思い出すように語りだす。
“汝は、生まれ落ちた時から異常な力を有していた。・・・まわりの者は、汝を目にした瞬間に、汝の強さを確信したという。・・・いにしえの血を色濃く受け継いだ者として、汝は崇められた。そして、我は汝の祝詞の儀を、神の代行者として執り行った”
「ちょっとまて」
話の途中で、ゼロが割り込む。
「お前・・・いや、お前等にとって、人間や、それに準ずる何かは敵じゃ無いのか?」
ゼロが聞く。
“確かに人間や、人間が竜人族と呼称している者達とは敵対していた。しかし、汝等は我々を敵として捉えず、また我々も汝等とは友好的であった。汝等は戦闘種族でありながら、むやみな破壊はしなかった。我々は、汝等のそういう所を、ある意味で敬愛していた。”
「戦闘種族・・・?」
ゼロは首を傾げる。
“・・・生物はみな、それぞれに適した能力を身に付け、そして進化する。
人間は、その種をより多く残そうとしたため、繁殖能力が高い。
竜人族とは、物事に対する追求、研究などをより自分のものにするために、人間に比べると遥かに長命である・・・”
「・・・じゃあ、俺は何なんだ?」
“・・・汝等は、人間や竜人族と似通ってはいるが、種として全く別の系統から進化したものだ。汝等は、もともとがヒトではない。汝等は、太古の昔・・・我々が存在するより昔に、竜がより強い力を求めて進化した姿だ”
「竜が・・・進化したもの・・・?」
“そう・・・我々は汝等の事を、ドラゴノイドと呼称した”
「ドラゴ・・・ノイド・・・」
初めて聞く名に、ゼロは戸惑う。
“・・・寿命は、人間とさほど変わりはない。たかだか50年程長命なだけだ。・・・だが、戦闘能力は計り知れない。人間はもちろん、並みの竜でさえその比ではない。中には、その姿を変貌させる者もいたと言う。定かではないが、竜の血を色濃く受け継いだ汝ならあるいは・・・”
「なるほどな・・・それで色々なことに納得がいく。」
“これ以上の事が知りたいならば、いにしえの塔に赴くがよい。”
「古の塔・・・?」
“その昔、神々が地上と天界を行き来するために建てた、天空に向かってそびえ立つ巨塔だ。そこに汝等の全てが記されているはずだ”
「ちょっとまて。」
立ち去ろうとしたキリンを呼び止める。
「最後に、2つ質問がある」
“・・・何だ?”
「・・・俺とお前が出会ったのは500年前だろ?・・・なら、なんで俺は今ここにいるんだ?」
“・・・それも、古の塔に記されているだろう”
「そうか。・・・じゃあ2つ目。・・・お前、これからどうするんだ?街を襲うって言うなら・・・」
スラリ・・・と、ゼロは剣をかまえる。
“安心しろ。我は確認するために立ち寄っただけだ・・・。襲うこも考えたが、汝がいるなら話は別だ・・・。ドラゴノイドと敵対したところで、百害あって一利無しだ・・・”
「それを聞いて安心したぜ・・・」
ゼロは剣をしまう。
“しかし、解せんな・・・何故、汝が人間などの味方をするのだ?”
「守りたいものがあるからだ。」
迷わずに、まっすぐな目で答える
“そうか・・・では・・・さらばだ・・・”
そう言って、キリンは駆け出して行った。
ゼロは、見えなくなるまで、その姿を見届けていた・・・


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