第24話
・・・私は一体、誰なんだろう?
幼いころから、人を殺す事だけを教えられた私。
何一つ、自由を許されなかった私。
・・・きっと、私が死んでも、誰も悲しまない。
私を含めて・・・
・・・死んだら終わり。
先がないだけ。
たった、それだけ・・・
・・・なのに、何でだろう?
何故、あなたは泣いてるの?
何故、そんなに悲しい顔をしているの?
いつも他人に拒絶され、いつも1人だけ傷付いて・・・
なのに、いつも誰かのために戦ってるあなた。
優しい瞳の裏にある悲しみを、決して表にだすことはない。
その体は、もうぼろぼろなのに、それでも戦いをやめようとしない。
その翼は、傷付いているのに、それでも羽ばたくことを諦めない。
あなたは、いつも1人で傷付いてる。
だけど、あなたは独りじゃない。
私も、あなたに出会って、独りではなくなった。
・・・あぁ、忘れていた。
私は、あなたに出会ってようやく、私を見つけられたのだった。
もし、また私が私を見失ったとしても、きっとあなたは“お前はお前だ”って言って、優しく笑ってくれるだろう
・・・誰かが私の手を握っている。
そろそろ、目覚めよう・・・
ーーーーー
「・・・・・・」
・・・目を覚ますと、最初に天井が視界に広がった。
アルは、ゆっくりと顔を横に向ける。
そこには、ゼロの姿があった。
頭だけベッドにのせて、スースーと、寝息をたてている。
その手は、しっかりとアルの手を握っていた。
「あれ?・・・私・・・生きて、る・・・?」
不思議に思って、辺りを見渡す。
・・・ここは、どうやら病院らしい。
「ん・・・」
息苦しさを覚えて、自分の胸に手をあてる。
そして、自分の胸が包帯でぐるぐる巻きにされていることに気付いた。
「むぐ・・・」
変な声を出して、ゼロが起きる。
「あ・・・アル・・・おはよう・・・」
なんて、間の抜けたことを口にする。
「お・・・おはよう・・・あの・・・まさか、寝ぼけてる?」
「寝ぼけてねぇよ・・・俺はいつも通り・・・」
言いかけて、はっとする。
「アル!よかった!目が覚めたんだな!」
「おかげさまでね」
「いや〜、よかった!・・・で、一体いつ起きたんだ?」
「今さっき・・・ゼロ、それより・・・」
アルは恥ずかしそうに顔を伏せる。
「なに?」
「そろそろ、手を・・・」
「え?」
す〜・・・と、視線を下に落とす。
「うぉ!」
ゼロは、慌てて握りっぱなしだった手をはなす。
「あ、いや、その・・・わざとじゃないぞ・・・」
「あ・・・うん・・・」
ゼロは、アルが気を失う前に言ったセリフを思い出して、顔が赤くなる。
気まずい雰囲気が2人を包む。
「あらあら・・・アツアツねぇ、お2人さん。」
扉が開いて、ミリアとジョンが入ってきた。
「バ・・・バカなこと言うなよ!」
「あら?顔が真っ赤よ?熱でもあるのかしら?」
「お前・・・ろくな死に方しないぞ・・・」
ミリアは楽しそうにゼロをからかう。
「青い春と書いて青春。昔の人はうまいことをいったものだな。」
「ジョン・・・いきなり年寄り臭い発言は止めろ。」
「あ〜あ・・・このアツアツの空気は、お姉さんにはキツいわ。」
パタパタと、わざとらしく手で顔を仰ぐ。
「年取った証拠だろ?オバサン」
「オバ・・・オバサン!?」
ぴし!と、ミリアが固まる。
「あ〜、なんか疲れた。俺はもう帰るぞ・・・」
ふらふらと、ゼロは病室から出ていった。
「こら〜!逃げるなゼロ〜!戻ってこ〜い!」
「落ち着けミリア。ここ・・・一応病院だぞ?」
う〜・・・と、唸るミリアをジョンがなだめる。
「あの・・・ジョン?」
「何だ?アル」
「なんかゼロ、物凄く疲れてたみたいだけど・・・」
「あぁ、それは仕方ないだろ。一週間もお前に付きっきりだったんだから。」
「一週間!?私、そんなに寝てたの!?」
「あぁ。死んだみたいに眠るもんだから、もう起きてこないんじゃないかと心配したぜ・・・」
「あ、うん・・・その、ありがとう」
「礼なら俺達じゃなくてゼロにしろよ。俺達は何もしてないしな」
「うん。わかっ・・・」
た、と言おうとしたとき突然、街中に低い笛の音が響き渡った。
「な!?・・・まさか!?」
バタン!と、勢いよく病室の扉が開く。
「おい!警報だ!古竜がきたらしいぞ!」
扉を開いたのはゼロだった。
急いで戻ってきたのだろう。
ハァハァと、肩で息をする。
「あぁ!どこに現れたのか分かるか!?」
「よく分からん!ただ、ここに戻る途中で、他のハンター達が雪山がどうとか言ってたぞ!」
「雪山か・・・この街からはまだ離れてるな・・・」
「くそ!・・・なんでこう次から次へと・・・!古竜ってのはそんなにヒョイヒョイ出てくるもんなのか?」
「それはないだろう・・・明らかに異常事態だ・・・」
「で・・・どうする気なの、ゼロ?」
「決まってるじゃねぇかミリア!・・・雪山に直行だ!」
「だと思ったわ・・・」
はぁ・・・と、ため息をはく。
「よし!俺は一回戻って自分の装備を持ってくる!その間にジョンとミリアは集会所で手続きを済ませといてくれ!」
「ゼロ、私は?」
アルがたずねる。
「お前はまだ寝とけ。・・・安心しろ。古竜は絶対追い返してやるから」
「うん・・・わかった。・・・無理、しないでね。」
「あぁ。・・・じゃ、後で集会所に集合な!」
言って、ゼロは走り去った。
ーーーーー
30分後、3人はフル装備で集会所に集まった。
「よぅ。準備は整ったか?」
「私は大丈夫。手続きも完璧よ。それにしても・・・」
ぐるっと、辺りを見渡す。
しかし、見渡したところで、ここにはゼロ達しかいない。
「本当にこの街のハンターは腰抜けばっかりね・・・」
「いつか潰れちまいそうだなぁ、この街・・・。まぁ、それはさておき・・・ジョン、何か情報はつかめたか?」
「あぁ。場所は雪山で間違いない・・・だが・・・」
ジョンは顔をしかめる。
「どうした?」
「・・・出現した古竜だけどな・・・聞いたことない名前だった・・・」
「何だよ?」
「キリンって名前らしいぞ。・・・しかも、出現率が圧倒的に低いから、どんな奴なのか検討もつかん。」
「きりん・・・?本当に聞いたことない名前ね・・・」
「・・・だが、古竜って呼ばれてる以上、気を抜くわけにはいかないだろう」
「あぁ、そうだな・・・」
3人を重い空気が包む。
「・・・ま!ここで悩んでても仕方ないだろ!とりあえず、雪山に行ってみようぜ。」
「それもそうね。・・・そうと決まれば、早速行動に移るわよ。」
3人は、船に乗り込む。
「・・・忘れ物とかないな?」
ゼロが聞くと、2人は無言で頷く。
「・・・んじゃ、雪山で古竜狩りとしゃれこみますか!」
そう言って、ゼロは船を出す。
船は、雪山に向けて、ゆっくりと動き出した・・・
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