第23話
ここはジョンの部屋。
ゼロは全てを話して、3人を重い空気が包んでいた。
「まさかな・・・」
「アルちゃんにそんな過去があったなんて・・・」
「・・・」
ゼロは何も言わない。
「だが・・・それと、アルが連れていかれた事になんの関係があるんだ?」
「・・・俺も確証は無いんだ・・・けどあの夜、あいつは、俺を殺せないなら消えるしかないって言ってた・・・自分はここにいていい理由がないと・・・急がないと、どんな処分が下されるかわからねぇ・・・」
ゼロは少し目を伏せる。
「・・・それで心配だから助けにいくって訳?」
「あぁ・・・」
「・・・お前はそれでいいのか?」
「え・・・?」
予想外な質問に、ゼロは驚いた。
「アルはお前を殺すためにお前に近付いたんだろ?・・・なら、またお前を殺そうとするかもしれない。・・・お前はそれでも助けに行くのか?」
「あぁ・・・!」
ゼロは顔をあげて、考えるまでもない、といった様子で、ゼロは頷いた。
「あいつも・・・アルも被害者なんだ・・・。」
ゼロは唇を噛む。
「アルも・・・俺っていう存在が生み出した、数多くの被害者の1人なんだ・・・!・・・本気で俺を殺そうとすれば、そのチャンスはいくらでもあったはずだ・・・なのに・・・!」
ダン!と、悔しそうに壁を叩く。
「なのにあいつは、結局俺を殺さなかった・・・!今の生活が夢のようだと言って、涙まで流して・・・!」
ギリ・・・と、周りに聞こえるくらいに歯がきしむ。
「・・・あいつは・・・普通を普通と考えられないほどの生活をしてきたんだと思う・・・その普通を、何よりも、誰よりも望んでたのはあいつなんだ・・・なら俺は、俺が存在する責任として、せめてあいつの普通を守ってやりたい・・・」
言って、ゼロは窓まで歩きだす。
「・・・夜中にすまなかった・・・お前らまで巻き込むつもりはない・・・じゃあな。」
ゼロは窓から身を乗り出す。
「まてよ」
後ろから声をかけられ、振り向かずに、何だ?・・・と、こたえる。
「お前・・・また1人で抱え込む気か?」
「・・・」
ゼロは何も言わない。
「・・・また1人で行く気かって聞いてるんだ。・・・俺はそんなの許さねぇなから。」
「・・・」
「・・・そうね。それに、アルちゃんのピンチなら、私達も動かない訳にはいかないわ。・・・まさかここまできて付いてくるな、なんて言わないわよね?ゼロ」
「・・・」
「そういう事だ。何もかも1人で抱えるな・・・少しは俺達も頼れよな・・・」
ポン・・・と、ゼロの肩を叩く。
「・・・へっ・・・お前ら・・・遅れんなよ!」
『おう!』
そして、ゼロ達は自衛団の本拠地へと向かった。
ーーーーー
自衛団本拠地前にたどり着いたゼロ達は、入り口で足止めを余儀なくされていた。
「・・・あの見張りの量はなんなんだ?おい・・・」
口にして、がっくりと肩を落とす。
無理もない。
普段、この入り口には2人ほどしか見張りはいない。
しかし、今日は何かを警戒するように、見張りは2人に加えて、3人が辺りをうろうろと巡回している。
ゼロ達は茂みに隠れていたが、見つかるのは時間の問題である。
「どうする?このまま隠れてたら、見つかって追い返されるのがおちよ」
ひそひそと、小声で話す。
「よし・・・ゼロ、お前行け」
「なんでだよ・・・!?」
「いいから行けっつの・・・!」
ドン!と、ゼロの背中を押す。
ガサガサ
『あ・・・』
茂みから追い出されたゼロを見て、見張り一同、目を点にする。
「ゼ・・・ゼロが来たぞ!」
見張りの1人が声をあげる。
すると、辺りを巡回していた見張りも一斉に戻ってくる
「何をしに来た貴様!?」
「え・・・え〜と・・・トイレを探してた・・・って、駄目?」
「当たり前だ!そんな理由で・・・」
ボク!
ドサ・・・
『な!?』
これにはゼロも驚いた。
話していた男がいきなり崩れ落ちたのである。
その後ろにはミリアがいた。
「おのれ・・・!」
別の見張りがミリアに近付く。
ボク!
ドサ・・・
『え!?』
全く同じパターンで倒れる。
やったのは言うまでもなくジョンだ。
「お前ら!?・・・クソ!捕らえろ!逃がすな!」
一斉に襲いかかる見張り達。
「ゼロ!時間はあまりかけられない!ノルマは1人だ!」
「・・・結局これかよ・・・」
言って、乱闘が始まった。
相手は鎧をフル装備である。
ゼロ達は、唯一隙がある顔面を確実に捉え、あっという間に倒した。
しかし、さっき気絶させたはずの見張りが笛を取り出して、ピィー!と、吹いた。
「あ!このやろ!」
バコ!と、ゼロは蹴りを入れる。
その一撃で、完全に気絶した。
「ち!もうコソコソしてられない!突っ込むぞ!」
「そういう分かりやすいのを待ってたぜ!」
言って、3人は中に突入した。
ーーーーー
ゼロ達は道に迷っていた。
施設の中は迷路のように入り組んでいて、どこに行けばいいかわからずに走っていた。
「ちょっとジョン!いつになったらアルちゃんの所にたどり着くのよ!?」
「俺に聞いたって分かるか!俺だってこんな所初めてだ!」
「ゴチャゴチャ言うな!立ち止まってる時間がねぇんだから進むしかねぇだろ!」
「あんたにそんな事言われなくても分かってるわよ!」
などと、軽い口喧嘩をしていると、前から人影が見えてきた。
「いたぞ!侵入者だ!」
そう叫んで、人影はこちらに向かって走りだした。
「またかよ・・・」
「ホント・・・ここに入ってからもう5回目よ?」
ぶつぶつ言いながらも、ゼロ達は目の前の敵を蹴散らす。
全員が気絶したのを確認し、再び走りだそうとしたその時
「侵入者だ!逃がすな!追い詰めろ!」
その声に、ゼロ達は後ろに振り向く。
・・・そこには、大量の自衛団が駆けつけていた。
「ちぃ!時間がないってのに・・・」
「まて」
向かって行こうとしたゼロを、ジョンが止める。
「お前は先に行け・・・ここはミリアと俺で食い止める。」
「な!?」
ゼロは驚きを隠せない。
「何言ってんだよ!俺も一緒に・・・」
「時間が無いんだろう!?だったら早く行け!・・・ここで逃げても、後で挟み撃ちに合うだけだ。だからお前は先に行け。」
「だったら俺が残る!だからお前らが先に行け!」
「・・・」
目を伏せて、はぁ・・・と、ジョンはため息をはく。
「・・・お前、さっき自分で言ったじゃねぇか。・・・アルの普通を守りたいってよ・・・それに、アルは被害者でお前がその責任をとるんだろ?・・・なら、お前が助けに行かないでどうするんだよ・・・」
「・・・」
何も言い返せない。
「・・・ゼロ、さっさと行きなさい・・・それとも、私達のこと心配してるの?・・・だったら余計なお世話よ。・・・私を誰だと思ってんの?伊達に鬼のミリアって呼ばれてないわ・・・分かったらさっさと行きなさい」
「・・・分かったよ・・・死ぬなよ2人共!」
「お前もな!」
そう言って、ゼロは走り出した。
「・・・行ったか・・・」
「ホント・・・世話の焼けるやつね・・・」
「ミリア・・・」
ジョンは視線を自衛団に向ける。
「えぇ・・・分かってるわ」
ジョンとミリアは、まっすぐに敵を見つめる。
覚悟は決まった。
「よっしゃあ!行くぜ!」
言って、ジョンとミリアは向かって行った。
ーーーーー
ジョン達と別れて、結構時間が経った。
けど、未だにアルの所にたどり着けない。
ゼロは、焦りながらも、慎重にアルを探していた。
そんなゼロの前に、巨大な扉が姿をあらわす。
「ここか・・・?」
見たところ、扉は複数の人数で開けるようになっている。
しかし、ここまで来て、泣き言は言ってられない。
ゼロは扉に手をあて
「んっ・・・ぉぉぉぉぉ・・・!」
力任せに扉をこじ開けた。
ギギィ・・・と、重い音をたてて扉が開く。
・・・ゼロは、そこにあった光景に絶望した。
「誰だ!?」
誰かが叫んでいる。
けど、それも遠くて聞こえない。
・・・そこには、貼り付けにされたアルと1人の男が立っていた。
そして、アルの体に、あってはならないものが目に入った。
・・・一本、アルの胸元から何か出ている。
いや・・・“刺さっている”
よく見れば、それは矢だった。
男の手には弓が握られている。
・・・間に合わなかった。
そう思いながらも、ゼロは駆けだしていた。
「アル!!」
急いでアルを解放し、抱きかかえる。
「アル!しっかりしろ!アル!」
ゼロが必死に呼びかける。
すると、アルはゆっくりと目を開いた。
「・・・あれ?・・・幻かな?・・・ゼロが、見える・・・」
アルはたどたどしい声でそう言った。
「幻なんかじゃない!俺はちゃんとここにいるぞ!」
「・・・ゼロ・・・?」
確かめるように、アルの手がゼロの顔に触れてくる。
ゼロは、その手をぎゅっと握り返す。
「あ・・・ゼロ・・・幻じゃなかった・・・」
ふふ・・・と、弱々しく笑顔を作る。
「来て・・・くれたんだ・・・私・・・なんかのために・・・」
「あぁ・・・!当たり前だろ・・・!」
「ふふ・・・やっぱり優しいね・・・ゼロ・・・」
・・・消えそうなその笑顔を見ていて、自然と涙がこぼれた。
「・・・ゼロ?・・・泣いてるの・・・?」
「馬鹿やろう・・・!お前が泣かせたんだよ・・・!」
「そう、なんだ・・・でも、泣かないで・・・ゼロには、笑ってて、欲しいな・・・」
声がだんだんと弱くなる。
「・・・ゼロは優しすぎるよ・・・でも、私、そんなゼロのことが・・・好きだよ・・・」
「分かった・・・!分かったから・・・!続きは帰ってから聞くから・・・だから、一緒に帰ろうぜ・・・!」
アルは、アハハ・・・と、小さく笑う。
「それは多分無理かな・・・。」
アルの手から力が抜けていく。
「アル・・・?アル!?」
「・・・もし、生まれ変われるなら・・・もし、次があるなら・・・次は、普通の女の子として、ゼロに出会いたいなぁ・・・」
「アル・・・!」
「・・・今まで、ありがとう、ゼロ。・・・少しの間、だったけど、あなたと出会えて、よかった・・・。あなたを、殺さな、くて、よか・・・た・・・」
・・・ガクンと、アルの体から力が抜ける。
「アル・・・?・・・お前だけいっぱい話すなよ・・・俺の話も聞けよ・・・なぁ・・・」
・・・反応はない。
「・・・アルゥ〜〜〜〜!!!」
・・・ゼロは、アルの体を抱きしめる。
「・・・俺はまた・・・!また大切なものを守れなかった・・・!守ると誓ったのに・・・守れなかった・・・!」
・・・ゼロはゆっくりと、アルの体を寝かせる。
「なんだ?お前、そのガラクタを助けにきたのか?」
後ろから声がする。
その言動、憎くてたまらない。
ゼロは、ゆっくりと後ろを振り向く。
「全く・・・こんな男1人殺せんとは・・・とんだ役立たずだったな。・・・愚かな奴だ」
フン・・・と、男は鼻で笑う。
「・・・何故だ・・・?」
「何だ?よく聞こえんぞ?」
「何故アルを殺した!?」
ゼロは、怒りをぶつけるように叫ぶ。
「何故?だと・・・?」
クッ・・・と、男は笑いをこらえる。
「そいつにはお前を殺すように命じた!そのために私がそいつを鍛えてきた!なのにそいつは、くだらない情に流され、結果としてお前を殺せなかった!だから殺したのだよ!使えない道具はゴミでしかないからな!」
「テメェ・・・一体何様のつもりだぁぁ〜〜!?」
カチッ・・・と、頭の中で何かが外れた。
もう十分だ。
これ以上あいつのコトバを聞くヒツヨウはない。
あいつのカオ、声、シグサ、全てがニクイ。
反吐がでそうだ。
ゼロは、臨戦態勢をとる。
「ほう・・・やる気か?この人数相手に・・・」
気が付けば、周りには大量のニンゲンがそこにいた。
カンケイない。エモノが増えるだけダ。
「・・・ウォオオオオオオオオ!!!」
ゼロは吠えた。
獣のような砲喉。
そして、最も近くにいた1人の男に飛びかかり、頭を鷲掴みにする。
「が!?ぐあ!」
男は何が起こったのか分からずに、苦しみだした。
ミシミシと音がする。
「ぐっ・・・ぐわぁ!」
ブチブチと、ゼロは男の頭をもぎ取った。
鮮血が飛び散り、ゼロは頭から赤色に染まる。
男の体は、ビクビク震えながら、その場に倒れた。
ゼロはもぎ取った頭を邪魔そうに捨てる。
「このバケモノが・・・!」
もう1人の男が、剣を片手に突っ込んで来る。
ゼロは、その男の剣を避け、男の腕を掴む。
その腕を、普通では曲がらない方向へ折り曲げる。
「うゎ・・・うわぁぁぁ!」
ウルサイ・・・
・・・次の瞬間、男の叫び声はなくなった。
ゼロが、その男の頭を握り潰したからである。
そして、何も言わなくなった体から、ブチブチと腕を引きちぎる。
その後、一斉に襲いかかった男達は、ゼロによって悲惨な最期をとげた。
ある者は、顔を潰され、また、ある者は、胸を貫かれ、そして、またある者は、壁に叩きつけられて、そのまま押しつぶされた。
・・・10分後、そこにはすでに、人と呼ばれていた者の姿はなかった。
むせかえる血の匂い。
辺りには、どうみても出来の悪いスパゲティのような物体が、ミートソースと一緒にぶちまけられていた。
誰一人、何一つ原型を留めているものはなかった。
ゼロとアルを除いて・・・
「アル・・・」
ゼロは、アルの下へ歩み寄る。
ドクン・・・
「!?」
わずかに聞こえたこの音に、ゼロは驚く。
自分のものとは別の音。
「まさか!?」
ゼロはアルの胸に耳を当てる。
・・・ドクン・・・ドクン・・・
動いている。
つまり生きている。
よく見ると、矢は、僅かに心臓から外れていた。
つまり、アルはあの時気絶しただけである。
だが、このままだと命が危ないのも事実。
「待ってろよ、アル!・・・必ず助けてやるからな・・・!」
そう言って、ゼロはアルをおぶる。
そして、出口に向かって、全力で走り出した・・・
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